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投稿者 ヤマボウシ 日時 2010 年 3 月 02 日 18:07:34: WlgZY.vL1Urv.
 

転載元:法と常識の狭間で考えよう by ビートニクス http://beatniks.cocolog-nifty.com/cruising/2010/03/post-c115.html

東京都の二つの条例案について考える

 東京都知事である石原慎太郎は、東京都知事に対して、「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例案」(以下「青少年健全育成条例改正案」という)と「インターネット端末利用営業の規制に関する条例案」(以下「ネットカフェ等規制条例案」という)を提出し、東京都議会において審議が始まっている。

 青少年健全育成条例改正案は、フィルタリングの利用と児童ポルノ関係の規制の拡大強化を図る点に特徴があり、ネットカフェ等規制条例案は、いわゆるネットカフェについて、利用者の本人確認等を求めて規制を強化する内容であるが、いずれも全国の都道府県にはない規制を新たに導入しようとするものであり、問題が多い条例案である。

 青少年健全育成条例改正案は、青少年がインターネットを利用して被害に遭うことを防止するために、フィルタリングサービスを利用することを求める内容となっている。しかしながら、現在のフィルタリング技術についてはまだまだ不完全であり、大切なサイトを遮断したり、本当に有害とされるサイトを素通しするなど多くの問題があり、こうしたフィルタリング技術の不完全さによって、子どもたちの知る権利を侵害するおそれがある。
 また、(1)「児童ポルノの根絶に向けた機運の醸成及び環境の整備」として、都知事がフィルタリング機能を有する携帯電話等を推奨することを定めるほか、(2)図書類等の販売の自主規制の範囲に、「年齢又は服装、所持品、学年、背景その他人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から18歳未満として表現されているものと認識されるもの(非実在青少年)」による性交・性交類似行為について、性的対象として肯定的に描写することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるものを追加して拡張し、(3)不健全な図書類に、「強姦等著しく社会規範に反する行為を肯定的に描写したもので、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害するものとして、東京都規則に定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの」を追加し、(4)「何人も、児童ポルノをみだりに所持しない責務を有する」との単純所持禁止規定を新設し、(5)13歳未満の者で、未満の者で、水着若しくは下着のみを着けた状態にあるものの扇情的な姿態を視覚により認識することができる方法でみだりに性的対象として描写した図書類又は映画等について保護者等に適切な保護監督及び教育に努める努力義務を規定するなど多岐にわたっている。

 特に問題となるのは、「非実在青少年」なる概念を新設して、漫画やアニメーション、テレビゲームなどの二次元の表現物についてまで規制を拡張しようとしたり、「青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれ」という曖昧な概念を導入したり、「肯定的に描写し」たかどうかという表現物の内容・思想に対する評価を求めたり、水着を着た13歳未満の青少年も保護対象として保護者等の監督責任を定める点である。
 これは、表現物に対する規制としては、規定ぶりがあまりに稚拙である上、あまりにも漠然・不明確な規定により広汎な規制をしようとしている点で、表現の自由に対する脅威ともいうべき規制を、他の地方自治体に先駆けて行おうとしている点で問題である。

 次に、ネットカフェ等規制条例案は、東京都内で営業するネットカフェ等の「インターネット端末利用営業」の施設に対して、利用者についての本人確認を行うとともに、その記録を保存し、防犯カメラの設置その他のインターネットの利用営業が犯罪に利用することを防止する等の環境を整備するために必要な措置を講じる努力義務を課し、公安委員会に、施設に対して報告・書類提出を求め、立入り・検査を求める権限を与えるとする等の内容である。
 ネットカフェにおいて、インターネットを利用した犯罪が多発しているなどの立法事実もない中で、これも全国に先駆けて提出されたものであるが、無職であるとか、住民登録をしていないなどの事情から本人確認手段を持たない者の利用が許否されて、ネットカフェが利用できない「難民」が出ることが予想されるし、ネットカフェの中においても監視カメラによって行動が監視されたり、何か事件が起きた場合に、利用者全員に警察が聞き込みに回ったり、指紋採取を求めることなどが予想されるものであり、過度の規制と言わざるを得ない。

 今回の2つの条例案は、警視庁が、全国に先駆けて、新たな利権を獲得し、都民に対する規制を強化しようとするものである。

 

昨年の都議会選挙により、現在、民主党が多数派を占める東京都議会において、警視庁による上記のような野望に対して、毅然とした態度を示すことができるのかが問われている。その際、条例案の内容について、広く都民の声を聴く機会を設けるなどして、徹底的な審議を行うべきであり、短期間で採決するような愚を避けるべきであり、このような問題の多い条例案を容認することはできないと言わなければならない。

 

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