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http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33466?page=3
**** 〈毒ガス発生。扉を開くな〉
'10年6月7日午後2時頃、川崎市麻生区の自宅1階トイレのドアに、赤いボールペンで大きく書いた張り紙を残し、中学3年の篠原真矢君(当時14)は自ら命を絶った。トイレの便座の上にはA4判の紙1枚に鉛筆で綴られた『遺書』が置かれており、いじめに遭っている友人を救えなかった苦悩と、その友人を庇ううちに自身もいじめられた辛さを、死という最後の手段をもって訴えていた。
**** 怨念の遺書
〈俺は、「困っている人を助ける・人の役に立ち優しくする」それだけを目標に生きてきました。でも、(中略)E(友だちの名前)のことも護れなかった・・・〉
さらに、いじめた加害者4人の実名を挙げてこう続けている。
〈俺はEをいじめた、A、B、C、Dを決して許すつもりはありません。奴等は、例え死人となっても必ず復讐します〉(引用原文ママ)
真矢君は、県外に単身赴任している父親の宏明さん(48)と母親の真紀さん(46)、3つ違いの兄と祖母の5人家族。事件のあった6月7日、真矢君は前日まで2泊3日で関西への修学旅行に参加しており、学校は代休日だった。真紀さんが、自殺している真矢君を発見したのは夕方5時少し前。真紀さんが、その時の様子を声を震わせて振り返る。
「トイレのドアに鍵がかかり、目張りもしてありました。真矢の姿はなく、一瞬不安が過ぎり、ドライバーを持ってきてドアをこじ開けたんです」
便座の左側には頭を奥に、身体を横に向けて倒れている真矢君の姿があった。救急車を呼び車で病院へ搬送するが、ほぼ即死状態。除草剤と除菌剤を混ぜて発生する猛毒の硫化水素ガスを吸い込んだ自殺だった。真紀さんの電話で駆けつけた宏明さんも驚きを隠せなかった。
「普段の真矢に変わった様子はなく、いくら考えても(自殺の)原因などまったく思い当たりませんでした」
ところが、その日の夜11時頃、自殺現場を調べた警察から便座の上にあったという遺書を渡され、真矢君の自殺はいじめが原因だったことが分かった。また、勉強机からは遺書とは別に、多くの友だちへ宛てた『遺言』も見つかっている。
真矢君は小さい時から野球が好きで少年野球チームに入り、中学2年では生徒会で活躍するなどクラスの人気者だった。将来の夢は警察官になることで、正義感が強いタイプだったと同級生は証言する。遺書にあったE君とは小学校から同級で、同じ野球チームに所属し、家族ぐるみの付き合いをする間柄だった。そんな真矢君がいじめられているE君を庇っているうちに、いじめの矛先が徐々に真矢君に向かっていったのだ。いじめていたのは遺書に名前のあった4人。同級生から聞き出したいじめの実態を、母が苦しそうにこう話す。
「4対1で一方的にやられるプロレスごっこや、4人に羽交い締めにされて下着まで脱がされていました。殴ったり蹴ったりの暴力は、日常的だったようです」
無念のまま死んでいった真矢君は、遺言の中で、いじめを受けていたE君に対してはこう書き残していた。
〈Bとかクラブチームの奴にやられたら、親や友達に相談しな。お前は優しいから、誰にも迷惑かけたくないと思っているのかもしれないけど、それは違うぞ。人は支え合って生きてくもんだからな〉
子供たちの助けを求める声は、とても小さい。周囲の大人たちが、子供たちの声に耳を澄まさなければならないのだ。
しかし、真矢君たちの声を受け止めるはずの学校の対応は、ひどいものだった。「遊びだと思った」「把握していない」として、いじめを認識しようとしなかったのだ。ようやくいじめの事実が認定されたのは、真矢君の自殺後に調査委員会が学内に設けられてから、約3ヵ月も経った後のことだった。結果、遺書に実名が挙げられた4名のうち、3名は'10年8月24日に暴力行為法違反で横浜地検川崎支部に書類送検され、横浜家庭裁判所に送致。その後'11年3月3日の少年審判で保護観察処分が下された。当時13歳だった残り1名は、児童相談所に通告された。
しかし、中学を卒業した加害者たちは、その後順調に高校に進学。加害者とその家族は、今現在、事件とどう向き合っているのか。自宅を訪ねた。
同級生のAの母親とは自宅前で会った。呼びかけると、驚いて足を止め怒ったようにこう捲し立てる。
「何ですか突然。何でそんなことを聞くんですか。そんなことノーコメントです。何度来ていただいてもお話しすることは一切ありません」
野球チームで副キャプテンだったBの自宅を訪ねると、インターホンに母親らしい女性が出た。篠原君の件でと言うと、声を詰まらせながら「私は留守番で分かりません。家族は皆病院へ行き、いつ帰るか分かりません・・・・・・」と苦しそうな声が聞こえてきた。その後CとDの自宅も訪ねたが留守。電話も応答がなかった。
〈必ず復讐します〉との憎しみを露に死んでいった真矢君。たとえ学校と市がいじめを認め、司法が加害者を裁いたとしても、遺族の悲しみと怒りは癒えることはない。いじめをなくすには、教育現場が気付きその事実を認め、悲惨さを子供たちに伝えていくことしかないのだ。
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