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新聞を読んで 防犯カメラの危うさ 小俣一平 東京新聞
東京新聞2012年9月2日(書き起こし)
ジャーナリズムの機能には,事実を知らせる情報伝達をはじめ、世論の形成や歴史の記録などがあるが、中でも権力監視は極めて重要な要素である。
そういう意味でも14日1面トップの「街角の顔画像 容疑者と照合昨春から非公開運用 警視庁」は、権力監視の機能を発揮した記事だった。
率直に「嫌な時代になったなあ」と思いながら読み進んだ。これは、警視庁が所有するテロリストらの画像を、民間の事業者が街頭に設置している防犯カメラと、機械的に照合するシステムを昨年三月から試験運用しているという内容だ。「カメラの所有者や設置場所、具体的な運用方法は明らかにされておらず、いつ、どこで、どのような画像が使われているのか、都民に知らされないままの運用が続いている」とある。
この記事は、「警視庁への取材や情報公開請求で開示された文書」で明らかになった調査報道である。東京新聞が書かなければ、世の中の人たちは、自分の生活領域の中でこんなことがまかり通っているのかを知らないまま過ごすことになる。ぜひ、ほかのマスメディアも報じてほしいと思うのだが、日本のマスメディアは、他社の特ダネを後追いすることを避けたがる傾向かある。しかし、この記事をよく読めば、「今日は人の身、明日はわが身」であることが分かる。
昨今、防犯カメラが活躍して、犯罪者を特定するケースが多く、治安維持の上で大いに役にたっていると評価する向きが多い。
しかし、時代が変われば、どのように利用されるのか分からないとの思いを強くしたのが、28日の特報面「秘密保全法制の有識者会議報告書 『秘密裁判』を削除」の記事だった。「秘密保全法制」については、東京新聞が率先してその動きを報じてきたし、かつて「共謀罪」のときも警鐘を鳴らし続けてきた実績がある。
幸い秘密保全法案の今国会提出は見送られたが、消費税増税の時と同じように、今後、民主・自民・公明の三党合意によって成立する恐れもある。
くだんの防犯カメラを駆使すれば`新聞記者が機密情報を持つ公務員宅を夜回りし、朝駆け取材するたびに、その姿を写し出すこともできるだろう。うがった見方をすれば、毎週金曜日に国会周辺で原発廃止運動を進めているリーダーたちや、国会で政府に反対する議員たちの私生活を追跡することも可能だ。
防犯カメラが政治的に利用され、政府中枢や警察官僚たちの情報収集のための「公安調査カメラ」に変容するおそれも十分ある。
特報面のデスクメモにあった「ナショナリズムと排外主義が充満した社会では、ちょっとした弾みで社会は暗転する」は、極めて的を射た指摘だった。(東京都市大教授) ※この批評は最終版を基にしています。
小俣 一平 東京都市大学環境情報学部教授
http://kouensupport.jiji.com/society/2305.html
NHKで17年間司法記者という社会部での豊富な取材経験を誇る。講演では、著名事件取材での各種のエピソードを交えつつ、最近、信頼低下が著しい検察が抱える問題点や、その改革の行方についてズバリ解説。事件に登場した政治家、またこれに対する検察首脳陣の名前などが満載の講演となるため大いに聴衆の関心を引く。
1952年生まれ、大分県杵築市出身。1976年4月NHK入局。鹿児島局、社会部記者、司法キャップ、社会部担当部長、NHKスペシャル・エグゼクティブ・プロデューサーなどを経て2010年4月から現職(ジャーナリズム論)。
著書に「新聞・テレビは信頼を取り戻せるか」(平凡社新書)、またノンフィクション作家(ペンネーム坂上遼)としても活躍し、主な著作に「消えた警官 ドキュメント菅生事件」「ロッキード秘録 吉永祐介と四十七人の特捜検事たち」(いずれも講談社)などがある。
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