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「靴、どうしたの」と、白い上履きのまま何度も帰宅する中学1年の娘を見て母が尋ねるが、「破れたから捨ててきた」と娘は笑う。
通学用の黒い革靴は盗まれたり、焼却炉で体操服と一緒に燃やされたり。靴の中に画鋲やカッターの刃が入っていることもあった。心の中では「不甲斐ない娘でごめん」と申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、何もなかったように毎日振る舞う。
自分が惨めで情けなくて恥ずかしい。親に心配かけたくない。先生にバレたら報復される。いじめられているなんて、親にも先生にも絶対に言えない――。いじめを受けていた大津市の中学2年生が自殺した事件が連日報じられ、否応なしに自らの中学時代も蘇る。私の経験は大津のケースにとても及ばないが、それでも自殺が頭をよぎった。
自殺した生徒の父親が18日、暴行、窃盗、恐喝など6つの容疑でいじめの加害者とされる同級生3人を大津署に刑事告訴した。自殺の練習、万引きの強要──。全校生徒アンケートや生徒たちの証言などから浮き彫りになった大津のいじめの実態は、それが事実であれば、あまりにも非道だ。
いじめと自殺の因果関係の判断はすでに司直の手に委ねられているが、こんな仕打ちを毎日受け続け一人で耐えていたら、自殺して現実から逃げたいという精神状態に追い込まれてしまうのも当然なのではないか。
加害者の行動が徹底的に追及されるべきなのはいうまでもない。陰惨ないじめ以上に問われるべきは、学校や市教育委員会の態度だ。そもそも学校は子どもたちのためにあり、子どもたちを守るのが使命である。校長と市教育長の発言や対応には教育者として当然持つべき責任感が見えてこない。
一連の報道によると、アンケートで具体的ないじめの実態が明るみになったにも関わらず、市教委は早々に調査を打ち切り、調査結果を隠蔽。自殺直後から校長は「家庭の問題」が一因と保護者に説明し、自殺した生徒の両親が大津市や学校側に損害賠償を求めた裁判での口頭弁論では、市教育長も自殺した要因が「家庭にもあった」と発言し直接の因果関係を否定。国内メディアからは「責任逃れ」と強い批判を浴びている。
いじめは教師の目を盗んで行われることが多く、見抜くのが難しい。いじめられた本人も正直に言えない。表面化しないのは常識だ。しかし、なんらかのSOSが出ているはずで、今回は周りの生徒たちから目撃情報も寄せられていた。学校側がすぐに真摯な対応をとっていればと思うと残念でならない。過去にもいじめ自殺は幾度となくあったのに、教訓がまったく生かされていない。
いじめの理由は本人には分からず、「なんとなくムカつく」といった理不尽なものが多い。残念ながら、いじめは大小問わず常にある、という前提で考えるのが現実的だ。現場でこれからどんな対策を講じなければならないか、根本的な解決策を今度こそ探っていかなければならない。
★自己保身や責任逃れは教育現場に限らない。オリンパスの損失隠し問題、東京電力による福島第一原発事故の最終報告書や電気料金値上げ、社会保障と税の一体改革で流動化している政治情勢──。今の世の中、至る所に溢れ返っている。何年もの間あらゆる問題で根本的な解決策を先送りにしてきてはいないか。大津のいじめ自殺問題は、無責任な大人たちに重い課題を突きつけているのかもしれない
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