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(回答先: AKB総選挙 一人で1770票入れるファン登場 投稿者 MR 日時 2012 年 6 月 06 日 00:06:42)
日経ビジネス オンライントップ>$global_theme_name>記者の眼
中古CDに見る AKBの“実力”
発売当日の買い取り価格は10円
2012年7月2日 月曜日 中川 雅之
6月24日、日曜日。さいたまスーパーアリーナで開かれたAKB48の「握手会」イベントには黒山の人だかりができていた。
会場を訪れた大西良典さん(28歳)はイベント参加券付きの最新シングル「真夏のSounds good!」を計8枚購入した。うち4枚は、特典として握手会の参加券が付いた「劇場盤」。残りは、メンバーの人気投票の参加券が付いた「数量限定生産盤」だ。中身のほぼ変わらない商品をいくつも購入するのは当然、特典の「握手券」や「投票券」を手に入れるためだ。
大西さんによれば「自分はライトなファンで、よりコアなファンは数十枚、100枚単位で買う人もいる」という。どんな分野でもお金に糸目をつけないコアなファンはいるものだが、AKB48のCDが特異な商品になっているのは、握手券といった特典の価値が、売り物であるはずのCD本体の価値を明らかに上回っていることだ。それは中古品の価格を見ればすぐ分かる。
予約開始当日にあっと言う間に売り切れとなった「劇場盤」の定価は1000円。これが、ある大手の中古CD業者では、発売当日から買い取り価格を10円に設定していた。定価1600円でDVDが付いている「数量限定生産盤」「通常版」は100円。販売価格はそれぞれ100円、300円だった。
この業者によれば、「中古品の多くは特典チケットが抜き取られているため、一気に価値が下がる。市場に出回る中古品の数もすさまじく、まともな価格は付けられない」という。
販売ランキングに登場するような大物アーティストの新譜であれば、定価が1000円とすれば発売直後の買い取り価格は数百円で、販売価格もそれほど下がらないケースが多いという。AKB48はランキング1位の常連にも関わらず、ネットオークションなどで特典なしの商品は「2枚で400円」などで売られている。
一方、各種特典の人気は高い。メンバーの生写真や、握手券の複数枚セットなどは多くがオークションサイトで1000円以上の値が付けられている。特典の転売目的で大量購入する業者の存在も指摘されている。
「聴かれないヒット曲」
「真夏のSounds good!」は出荷枚数が200万枚を超え、シングル曲として9年ぶりの「ダブルミリオン」と日本レコード協会が認定している。だが、記事を書いていながら恐縮だが、私はこの曲のメロディーが思い浮かんでこない。耳にしたことはあるのかもしれないが、少なくとも曲名と一致はしていない。
SMAPの「世界に一つだけの花」、サザンオールスターズの「TSUNAMI」など、ファンを超えて幅広い層に支持されたダブルミリオン曲のほとんどは、多くの人が口ずさむことができる。AKB48のヒット曲は、こうした従来のヒット曲とは明らかに違うものになっていると感じてしまう。
AKB48のCD販売を底上げしているのは、特典だけではない。「真夏のSounds good!」では、劇場盤と数量限定生産盤のほかに通常盤もあり、後ろの2つにはさらに「Type-A」と「Type-B」がある。それぞれ、ジャケットの写真や収録曲、歌うメンバーが少しずつ異なるため、全てを揃えたいというファンが少なくとも5枚購入するよう仕向けている。この仕掛けが、販売実績の実質的な“水増し”に一役買っている。
AKB48を貶めるつもりはさらさらない。それどころか、音楽界の革新とも言える。楽曲のダウンロードが普及し、CDが売れにくくなっている時代に、ミリオンセラーを連発するAKB48の商業的な成功と、その実力は相当に評価されていい。特典が強い購入動機になっているということは、その特典が高い価値を持っている証である。彼女たちにアイドルとしての魅力がなければ成り立たない。だが、AKB48のコアコンピタンスが、楽曲と違う所にあることは明らかだ。
CDの販売枚数は、長らく「その曲がどのくらい流行ったか」を表す指標だった。だがAKB48の例に象徴されるように、販売枚数は楽曲を計る指標としては機能不全に陥っている。彼女たちに限らず、上位にアイドルグループばかりが多く名を連ねるCD販売ランキング。それを見ても、「今の若い子たちは、みんなこういう曲を聴いているのか」とは思えなくなっている。
中古CDの買い取り業者の大手には、同一商品の大量買い取りを拒否している企業もある。このため、「AKBのCDを大量購入したファンが処分に困り、ゴミに出している」ということを示す画像もネットで流れている。200万枚のうち、1度も再生されないディスクが、どれほどあるのだろうか。「聴かれないヒット曲」とでも言おうか。
新刊書籍に付録が付く日
音楽業界では、かつて収益の柱だったCD販売が振るわなくなり、新人アーティストの育成が難しくなっているという話は耳にする。例えどんな形であれ、販売を計算できるAKB48の存在は、音楽関係者には輝いて見えるだろう。一定のお金が手に入らなければ大掛かりな販促策は打てないし、その分ヒットの芽も少なくなるからだ。
コンテンツの電子化が進み、CDなどの実物商品をリアル店舗で買ってもらうこと自体が難しい時代になった。それは、我が業界も同じである。
私の妻は、最近めっきり女性誌を買わなくなった。「情報がほしい時は、ネットで調べればいいから」と。その女性誌には、バッグなどの付録が付いている…。実物商品の作り手や小売店は、付加価値をいかに付けるかという課題に頭を痛めており、何らかの特典を付けるという手法は広がっている。
コンテンツの電子化といえば、今後急速に進むとみられるのが書籍分野。
「初版限定、本革特別装丁」
「作家対談イベント招待券付き」
「コミック原画オークション参加券付き」
電子書籍の普及とともに、そんな本が売られることになるのだろうか。それはそれで構わないが、新刊本が大量にゴミ捨て場に捨てられる光景だけは目にしたくないなぁ、と思う。
記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
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中川 雅之(なかがわ・まさゆき)
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日経ビジネス記者
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