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風呂の残り湯を使い、長男と手洗いで洗濯する東さん=東京都あきる野市で(河口貞史撮影)
わが家は電気代500円
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012070102000078.html
2012年7月1日 東京新聞 朝刊
「節電で月の電気代は五百円程度」という主婦の投稿が、五月末の本紙発言欄に載った。どうすればそんな生活ができるのか。東京郊外に住む読者を訪ね、さまざまな工夫を重ねた暮らしぶりを見せてもらった。 (竹上順子)
東京駅から電車を乗り継いで約一時間半の東京都あきる野市。JR武蔵五日市駅から徒歩十分の住宅地に「発想変え無理せず節電」の投稿を寄せた主婦、東奏子(あずまかなこ)さん(32)の一家が暮らす築五十年の木造二階建てがあった。近くには秋川が流れ、河原でバーベキューや川遊びが楽しめる。
見せてもらった今年四月の領収金額は、基本料金二百七十三円込みで五百十二円とあった。東京電力との契約アンペアは、最も少ない十アンペアだ。
会社員の夫(37)と長女(5つ)、長男(2つ)の四人暮らし。以前から節電に取り組み、東日本大震災後の昨年五月には、読者の工夫を紹介する本紙暮らし面にも登場してくれた。長男が布おむつを使わなくなった昨春から、洗濯機を使っていない。当時から電気代は月約二千円と少なかったが、さらにパワーアップした。
「冷蔵庫を使わなくなったのが大きい」と東さん。昨年十月に冷蔵庫を被災地支援で送って以来、月五百円台に落ちている。冷蔵庫と洗濯機なしの生活は、何やら特殊な感じもするが、「ちょっと昔の暮らし方と同じ。慣れれば大丈夫。夫もそう言っています」。
東さんは「冬は家の中も寒く、お肉もお魚も傷みませんでした」と笑う。暑い日には、野菜を水に漬けて冷やして置いたりもする。肉や魚は買ったらすぐに調理するか、塩こうじなどに漬け、夕方には調理している。
食材は、近所の商店やスーパーで二〜三日に一回程度買うほか、近くに借りた約六十坪の家庭菜園で旬の野菜が取れる。敷地面積約六十坪の自宅の庭で二羽のウコッケイを飼っていて、その卵や近所の人のおすそ分けの野菜も食卓を彩る。「最近は使い切れる量が分かり、買い過ぎや、忘れて傷ませることもなくなりました」
ご飯は毎晩、翌日の昼の分まで鍋で炊き、おひつで保存。暑いときは酢を入れて炊く。心配なときは、チャーハンにするなど火を通す。野菜が残ったら、漬物や天日干しに。
洗濯は、風呂の残り湯をたらいに入れて手洗い。固形せっけんを使っている。
掃除は、ほうきと雑巾。テレビは箱に入れて押し入れにしまい、夫が見るときだけ出す。パソコンは使うときだけコンセントにつなぎ、電話も夜はコンセントから抜く。夜間の電力使用はゼロだ。
照明は、食事をする部屋と台所、風呂にLED電球と蛍光灯があるだけ。家事は日があるうちに済ませ、子どもたちは午後七時には就寝。夜は、太陽光で充電したソーラーランタンを使う。
昨冬は炭火の掘りごたつで家族だんらん。夏は毎年、部屋のふすまを外して風通しを良くし、ヘチマなどの「緑のカーテン」で遮熱。暑い夜、夫は扇風機を一時間ほど使うが、東さんたちは「布団にござを敷き、水枕を使えば快適です」。
東さんのお手本は大田区の一軒家で暮らす九十二歳の祖母。子どものころに、ものを大切に使い切るコツを学んだ。その影響もあって、東京農業大に進学して環境保護などについて学んだ。登山サークルで一年に一週間を山小屋で過ごし、電気、ガス、水道のない生活の経験が節電にも生きている。
節電を「実験みたい」と楽しむ東さん。ブログでも取り組みを紹介しており「お役に立てばうれしい」。ブログ名は「エコを意識しながら丁寧に暮らす」。
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