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<新連載> 食事は15分、睡眠は2時間、40人の看護に奔走――。 “平成の姥捨て山”で燃え尽きる看護師の異常な日々
http://www.asyura2.com/10/social8/msg/679.html
投稿者 千早@オーストラリア 日時 2012 年 5 月 25 日 17:01:27: PzFaFdozock6I
 

ダイヤモンド・オンライン
http://diamond.jp/articles/-/19043

「高齢者が次々に入院し、まるで姥捨て山のように置いていかれる」――。

 看護師らがため息をつく。これは地方や過疎地で、医療機関や介護施設などが少ない地域に住む“医療難民”や“介護難民”の話ではない。病院などがひしめく東京で起こっている現実なのだ。

 筆者が取材した看護師によれば、彼女が勤める病院には、高齢者が寝たきりになり、肺炎などを患って繰り返し入院してくるという。しかし入院中、家族は見舞いにも来ない。止むなく退院間際に看護師が家族に電話をかけても、「もうしばらく入院できないか」と、迎えにも来ないケースが目立っている。

 都内のある民間病院では、「退院しても、状態が悪化して再入院すると家族がホッとしているようなフシがある」と明かす。同じく、都内のある自治体病院でも、「退院が決まっても、家で看られない家族から、患者の入院引き伸ばし作戦に遭う」と話す。

 70〜80代夫婦による老々介護・看護で止むを得えない場合もあれば、子どもがいても働いているため世話をできないケースもある。転院や施設への入所が必要な場合でも、家族は「あの病院は家から遠い」「あの施設は汚い」など難癖をつけ、なかなか患者を引き取らないというのだ。「この病院にもっと置いてくれないか」という相談が後を絶たず、なかには、連絡がつかなくなった家族もいるという。

 団塊世代が一斉に後期高齢者になり、人口全体の5人に1人が75歳以上となる、いわゆる「2025年問題」が迫っており、高齢世代をどうやって支えるかが火急の課題となっている。戦後1947〜49年生まれの団塊世代のボリュームは、約660万人と膨大だ。彼らが後期高齢者となれば、当然、医療を頼りにするケースも増えるだろう。

 しかし、その子ども世代となる団塊ジュニアやそれ以降の層は、就職氷河期のなかで社会人のスタートを切り、自身の生計を立てるだけで精一杯の生活。一方で頼みの病院では、急増する高齢患者に対して人手が不足していることから“医療崩壊”が始まり、病床削減も起こっている。

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http://diamond.jp/articles/-/19043?page=2

 高齢者が激増するのに、人手不足の上、病床数は減少傾向にあるというサバイバル状態のなかで、すでに「パイの奪い合い」が始まっている。行き場をなくした高齢者が「平成の姥捨て山」に捨てられる時代が、すぐそこまで忍び寄っているのだ。

もう、心身ともに燃え尽きた――。
寝不足で医療ミス寸前の看護師たち

 こうした混沌の医療現場で、急増する高齢患者を相手に過酷な労働を強いられている医師たちの疲弊ぶりが社会的問題化し、国民的な議論となっているのは、ご存知の通りだ。最近では、医師不足による医療崩壊も社会問題化しており、地方や過疎地に医師が集まらずに診療所や病院が閉院するなど、その影響は住民の目にはっきりと見える形で表れている。

 その一方で、医師と共に働く看護師たちの労働実態については、これまであまり報道されてこなかった感がある。実は、看護師たちもまた、医師たちの陰に隠れるようにして、負けず劣らずひどい激務に喘いでいるのだ。まさに「二重の医療崩壊」が始まっている。

 そもそも全国の就労看護職(保健師、助産師、看護師、准看護師)は、2010年で約147万人。実は、働く女性の20人に1人、全国民の100人に1人が看護職という身近な存在だ。看護職数は毎年、わずかながらも増加しているが、過酷な職場に「もう限界だ」と音を上げ、毎年12万人以上が辞めている。

 そのため、免許を持ちながら看護職として働いていない「潜在看護職」が約60万人にも上っており、高齢化や医療技術の高度化に伴う業務の増加に追いつかない。実際、看護師が働く現場はどのような状況なのか。関係者の日常を追ってみよう。

 都内にある某病院の内科系病棟で働く看護師の木下葉子さん(仮名、36歳)は、「夜勤と残業が多く、心身ともに燃え尽きた」と、退職を考えている。24時間365日、患者の命を守る病院では、交代制勤務がとられており、葉子さんの病院では3交代で夜勤が組まれている。

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http://diamond.jp/articles/-/19043?page=3

 日勤は朝8時30分から夕方17時30分、準夜勤は夕方16時30分から翌日深夜1時30分、そして深夜勤は深夜0時30分から朝8時30分までとなり、その組み合わせで月のシフトがつくられる。日勤の翌日に深夜勤が組まれる「日勤―深夜」や、準夜勤の直後に日勤が組まれる「準夜―日勤」というシフトは、看護師にとって辛い。

 葉子さんもそうしたシフトが月に何度も組まれる。日勤では受け持つ患者の状態や検査、処置の準備について「情報収集」するために始業前から無賃出勤し、朝から患者の検温、状態観察、入退院の手続きなどに追われ、昼食は15分程度で弁当やおにぎりをかき込むのが常。トイレに行く暇も水を飲む余裕もなく、あっという間に時間は過ぎ、19〜20時まで残業が続く。それから一旦帰宅し、家に着いて2時間も経たないうちに、深夜勤のためにまた出勤する。

 ほとんど寝ずの状態で夜勤に入り、たった2人で40人の患者を担当する。患者は夜だからといって眠ってばかりはいない。ナースコールは鳴りやまず、認知症の患者が暴れ回る、徘徊してしまうなど危険も多い。

 寝たきりの患者は2〜3時間おきに体位交換をして褥瘡(床ずれ)ができないようにケア。病棟を走り回るため、夜勤で万歩計が1万5000歩を指すこともしばしば。徹夜のような状況でふらふらになりながら、眠い目をこすって点滴の調整をしていると、点滴を落とすスピードを間違いそうになる。「あまりの激務で毎日が医療ミスと隣り合わせ」と危機を感じる葉子さんは、まさしくバーン・アウト寸前だ。

高齢化の「2025年問題」が訪れるとき
60万人もの看護職人員が足りなくなる

 過労から離職する看護師は多い。日本医療労働組合連合会の「看護職員の労働実態調査」(10年、回答数は約2万7500)では、看護師の約8割が「仕事を辞めたいと思っている」と回答している。

 その理由のトップが「人手不足で仕事がきつい」(46.1%)だ。医療事故の原因(上位2択)でも、約9割が「慢性的な人手不足による医療現場の忙しさ」を挙げている。また、約9割が「この3年間にミスやニアミスを起こしたことがある」と答えている状況だ。

次のページ>> 激務に耐えられず退職する看護師続出。背景に医療報酬問題も
http://diamond.jp/articles/-/19043?page=4

 ところが前述したように、高齢化社会のなかで看護師の役割は増していく一方だ。国の試算によると、「2025年問題」が訪れるとき、必要な看護職の人員は約200万人とされている。しかし、今のままでは約60万人が足りず、必要人員を達成するには高校生の10人に1人が看護師にならなければならない計算となる。いかに看護師不足が深刻であるかが、わかるだろう。

激務に耐えられず退職する看護師が続出
高齢患者急増の背景には診療報酬問題も

 看護師不足による「姥捨て山」現象も深刻だが、国がつくる制度が高齢者を「姥捨て山」に追い込む側面もある。原因は、「診療報酬」という制度的な問題だ。

 病院の収入は、国が決める診療報酬のなかで医師による治療や検査、入院などの保険点数が定められ、それによって企業で言うところの「売上」が立っている。看護師が保険点数と関係するのは、内科や外科病棟など一般病棟の入院基本料についている看護師の配置基準となる。

 具体的には、患者7人に対して看護師1人となる「7対1」の看護配置基準の入院基本料が最高で、1万5600円、「10対1」で1万3110円、「13対1」で1万1030円、「15対1」で9450円――。たとえば、300床規模の病院で「7対1」と「10対1」を比べると、1日当たり76万5000円もの収入差が生じる。病院経営にとっては、「7対1」は、喉から手が出るほど欲しい水準であり、「7対1」が導入された2006年から、有名病院や大病院を中心に看護師確保に躍起になってきた。

 ところが、看護師数が十分でないため、看護師争奪戦が起こり、「7対1」をとりたい病院の全てが看護師を確保できるわけではなかった。この争奪戦の余波は今なお続いており、中小病院も「7対1」をとるために必死になっている。

 すると病院は、患者、つまり病床数の分母と看護師数の分子を調整してでも、できるだけ保険点数が高い配置基準を維持しようとするため、看護師が不足すれば分母の病床数を削減することになる。となれば、受け入れられる患者数が減るため、患者の行き場がなくなり、締め出されてしまうというわけだ。

 こうした状況もあり、看護師不足によって病棟閉鎖や病床削減に追い込まれる病院が相次ぎ、地域によっては病院が閉院される深刻な事態に陥っている。

次のページ>> 医療費削減を目指して高齢者を追い出す国、ワリを食う病院
http://diamond.jp/articles/-/19043?page=5

 看護師不足を原因とした病床削減や病棟閉鎖を示す公の統計データはないが、日本自治体労働組合総連合(自治労連)が08年4月に行なった「全国自治体病院アンケート」(組合傘下の約1000病院に配布)によると、「看護師不足による影響」について「病床削減」が11.8%、「病棟閉鎖」が7.5%、「救急中止・休止」が3.7%となっている。

医療費削減で高齢者を追い出す国
ワリを食うのは受け入れ病院の看護師

 また、全日本自治団体労働組合(自治労)が2010年12月〜11年1月に行った全国736の自治体病院を調査でも、回答した250病院のうち33病院が病棟を閉鎖していた。

 国は膨れ上がる医療費を削減するため、少しでも入院期間を減らそうと、診療報酬で患者の在院日数が短いほど保険点数を高くしている。そのため、利益を上げたい病院は、患者が治りきらないうちにでも退院・転院させる傾向があり、“採算が合わない”患者の追い出し・たらい回しが起こっている。

[写真] 白衣をまとった看護師らによる、横浜中華街近くでの署名活動。過剰労働によって妊娠異常を起こす看護師も多く、早急な対策が求められている。

 ワリを食うのは、そうした患者を引き受ける良心的な病院で働く、前出の葉子さんのような看護師だ。このような構造問題が存在するなかで、白衣の天使たちは患者のためにと必死に闘っているのだが、あまりの激務にその羽は折れる寸前だ。看護師の労働問題は、患者の命を危険に晒すことをも意味する。

 5月12日は、フローレンス・ナイチンゲールの生誕にちなんだ「看護の日」ということもあり、毎年、看護の日を中心に、全国各地で看護や介護に関する集会が開かれている。

 たとえば、今年、日本看護協会は「忘れられない看護エピソード」を募集し、表彰式が行なわれた。日本医療労働組合連合会では、同組織が中心となって関係他団体と一緒に労働環境の整備や増員を求める「ナースウエーブ」と称するイベントを、1989年から開催しており、現在では47都道府県で看護や介護についてのシンポジウムや街頭での署名活動、健康チェックなどを行なっている。

次のページ>> 仮眠中に死亡した24歳の女性も。看護師を悲惨な職場から救え
http://diamond.jp/articles/-/19043?page=6

仮眠中に帰らぬ人となった24歳の女性
看護師を「悲惨な職場」から救え!

 筆者は今年、看護の日に神奈川県のナースウエーブで『新たな「いのち」希望の光』をテーマに、看護師に過酷な労働による流産などの妊娠異常が多い実態などについて講演した。講演後、白衣をまとった看護師らによる横浜中華街近くでの署名活動では、1時間で159筆が集まった。母の日を前に娘と連れだっていた親子は、「おばあちゃんがいるので、身近な問題」と署名用紙に名を連ねた。

 また初老の男性は、「病院に行けば看護師が忙しそうで、なかなか声をかけられず、看護師不足を感じる」と筆をとりながら話した。制服姿の高校生や20代の介護福祉士、赤ちゃんを連れた若い夫婦など、多くの年代の関心が寄せられた。

 同日、連合や自治労などの共催で「安心と信頼の医療と介護」2012中央集会が実施された。同集会には全国から組合員が集まり、東京・有楽町の駅前で街宣活動が行なわれた。自治労も看護職200万人体制に向けた署名活動に今年初めて取り組み始め、医療の労働現場から職場環境の改善や看護師の増員を求める声が多く挙がっている。

 看護師の過労問題は深刻だ。2007年5月には、東京都済生会中央病院(東京都港区)のオペ室に勤務していた当直明けの看護師・高橋愛依さん(当時24歳)が、患者の移動に使うストレッチャー(車輪付きの簡易ベッド)で仮眠中に意識不明となり、帰らぬ人となった。

 月80時間近くの残業をしていたことから、東京・三田労働基準監督署は2008年9月に彼女を過労死と認めた。亡くなってから1年での労災認定は異例であり、当時大きな話題となった。

 これを受け、日本看護協会は2008年に「時間外勤務、夜勤・交代制勤務等緊急実態調査」を実施。すると、交代制勤務で働いている約23人に1人が月60時間を超える時間外勤務を行なっており、過労死危険レベルの看護職員が全国で約2万人に上ると推計された。1病棟に1人は過労死の危険のある看護師がいることになる。

 そろそろ、看護師の働き方そのものが見直されるべき時期にさしかかっているのではないか。患者の立場からしても、果たして疲れ切っている看護師に看てもらいたいだろうか。

 そして、一般人が改めて看護師の労働実態を知ることこそが、国民の命を守るより良い医療の実現につながるのではないだろうか。以降4回にわたり、看護師の「悲惨な職場」をルポルタージュすることで、問題を提起していく。


世論調査

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