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児童虐待を受けた子どもたちはその後、どのように育ち、社会に出ていくのか。ノンフィクションライター・橘由歩氏は児童養護施設や里親などを訪ね、取材を続けている。
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虐待などで親と暮らせない子どもたちの約9割は児童養護施設など施設で暮らすが、国は十数年かけて従来の施設と里親・ファミリーホーム、小規模のグループホームの入所者を3分の1ずつにすることを目指している。
なぜ施設から家庭へのシフトを目指すのか。厚生労働省家庭福祉課の担当者は「虐待の連鎖を断ち切るという意味合いもあります」と話す。なぜ虐待の連鎖が断ち切られるのか。現場で教えを請おうと訪ねたのが、6人の子どもを養育するカワカミ家だ。
施設から来た当初、タクミはクリームパンに強く怯え、みんなを制してこう叫んだ。
「これは食っちゃダメなんだ。前にいたところで食ったやつはみんな、いつも腹を壊して大変な目にあってたんだそ」
タクミがいた施設では、「クリームパン」とは腐っているものだったのだ。
タクミは1年半前にカワカミ家にやってきたとき、1週間は眠ることができなかったという。
「夜中の1時をすぎて職員の見回りが終わると、怖い時間が来るから眠っちゃダメなんだって。大きな子たちの暴力が始まるから」
ずっと背中をさするクミさん(子どもたちの「ママ」)に、タクミはこう泣きじゃくった。
「お母さん、生きていくってつらいことだろー。大人になるって大変なことだろー。俺はもう死んだ方がいい」
小学校中学年の子にこう言わせる経験とはどのようなものなのか。タクミはどんな現実を"生き延びて"きたのだろう。
クミさんはタクミの自己評価の低さにも気がついた。
「みんながココアを飲んでいて、『それは何だ? 俺も飲む』ってなったとき、彼は猫舌で飲めなかった。すると『熱いよー、無理だー、飲みたいのに無理だー』って2歳児みたいに泣きだすの。息を吹きかけて冷ますといった解決法が何も思い浮かばず、すぐに自分は『ダメだー』になってしまう」
これまで自分の将来に何の希望も持てず、成功体験も極端に少なかったのだろう。タクミはできるように努力するのではなく、いつも「無理だー」と嘆く。ゲームでも宿題でも同じだった。だが、クミさんや補助員がどんな小さなことでも一つひとつ評価し、「頑張ったね」と受け止めていく中、1年半経った今、タクミから「無理だー」はすっかり消えた。
※週刊朝日 2012年2月24日号
http://www.wa-dan.com/article/2012/02/post-309.php
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<投稿者コメント>
日本のシステムはどうなっているか、よく知りませんが
多分どこも似たようなものではないかと思う。
私のいる豪州では、この件に限りませんが
様々な場所で「ボランティアを募集!!」という、いってみれば"叫び声"が
あがっているのに、なかなか必要なだけ集まらないという状況があります。
何らかの問題のある家庭の子供を預かるフォスター・ケアもそのひとつ。
本来だったら=政府、役所がまともだったら、戦争その他の悪事に税金を使わずに
それ用の人材を育成して、きちんとした受け入れ態勢をしっかり整えるべきだと思います。
このタクミ君は、本当のケアを心からやっていると思われるクミさんの元へ行けたから
きっと立ち直って生きていくだろうけど、そうならずに、もっとダメにされる子供たちが
いるだろうと思うと、なんともやり切れない思いがするばかりです。
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