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昨日日経夕刊を読んでいたら、宗教学者山折哲雄氏のコラム(正確にはインタビュー)が載っていた。「東北は早くも忘れられている」というタイトルが興味深かったので読んでみたのだが、ひどい記事だった。
少し長くなるが、冒頭を引用しよう。
今回の大地震は、はじめ、「東北地方太平洋沖地震」と命名されていた。ところが、いつの間にか「東北」がそぎ落とされ、「太平洋」も使われなくなった。
メディアでも「東日本大震災」という呼称に統一されていった。やがて、閣議によって、この名称が正式に決まったという報道が流れた。
これは、東北切り捨て、東北差別の象徴的な意識の表れではないか、と思っているんです。東北を見下してきた長年の歴史認識が、無意識に息を吹き返したように思える。(日本経済新聞 2012/1/18夕刊)
なんだこれ。
地震を「ダシ」にして自分の厨二妄想を広げただけじゃん。
第一、「東北地方太平洋沖地震」の名称が「東日本大震災」に変わった事実がない。論拠の基本が重大な事実誤認から始まっているグダグダ論考だ。
というのも、地震の名称は、今も「東北地方太平洋沖地震」のままだし。
東北地方太平洋沖地震の結果起こった「災害」について、メディアや赤十字、国の各組織などの呼称がバラバラで混乱していたのを、4/1に閣議決定で「東日本大震災」に統一した。つまり「東北地方太平洋沖地震」という物理現象で、「東日本大震災」という災害が起こったというのが事実だ。
そもそも「東日本大震災」という名称自体、災害発生直後から朝日新聞をはじめ主要メディアの多数で使われており、「東北切り捨て」意識でないのは火を見るよりも明らか。
加えて、「東北という名称が抜け」でなくことさら「東北がそぎ落とされ」などと恣意的に「東北を切り捨てた」かのような語彙を用いて描写しているところに、偏見に満ちた山折氏の妄想が見えている。
第一地震名称では今でも「東北」入ってるし。「じゃあ東北は切り捨ててません」と言わないと、主張の整合性取れませんよ〜。
いくらインタビューとはいえ掲載前にはインタビューイーとして原稿チェックしたはずで、いやしくも「差別問題」に言及するデリケートな原稿なのだから、事実関係は最悪そのとき調べるべき。
もちろん山折氏はやってないわけだ。そんなお手軽な考えで差別の痛みに鈍感な山折氏のほうが、よっぽど「差別意識」にまみれた態度だと思うけど。
ちなみに当初見られた震災表記は、「東日本大震災」「東北関東大震災」「3.11大震災」など。
震災表記が「東日本大震災」に統一されたのは、その名称を用いたメディア・団体がいちばん多かったこと、災害としての被害は東北に限らず関東など他の地方にも発生していたことなどが理由だろう常識的に考えて。
どうしてそこに「東北差別」を見出すのか、その発想のほうが不思議だ。
それに災害名に「東北」と入れるのを、むしろ嫌がる東北人だっているだろう。世界的な規模で風評被害が広がるとかを懸念して。
私達がルーマニアの地方名を知らないのと同様、外国人の多くは日本の地方名など知りもしない。それが震災名で有名になれば、たとえば日本観光旅行を考えたときに、マイナスの影響が生じうる。原発事故でFukushimaブランドに風評被害が発生したのと同様に。
議論の論拠で事実誤認しただけでなく、こうした点まで考えもせずに「これは東北切り捨て」「東北差別だ」というのは、あまりに思索のレベルが低すぎるし、思慮も足りていない。
またこれ「太平洋が名称から消えた」(と山折氏は思い込んでる)ことに対してもトンチンカンな弾劾をしてるんだけど。
記事のオチは、「近代化の陰に埋もれてしまった死者との魂の関係を回復しなければ、復興はありません」という我田引水。要するに宗教学者としての自らの主張を「震災をダシに」言いたいだけで、ほとんど震災と無関係のうわごとみたいになってる。
震災で家も家族も失った被災者、復興を心待ちにしている現地の職業人に対し、あなた「死者との魂の関係を回復しなければ、復興はありません」などと説教するのですか。妄想上の「東北差別」より、よっぽどそのほうが東北に冷たい態度では。
それにしても、山折氏もアレだけど、聞き手の「編集委員」にも問題がある。私のような場末の編集者だって、インタビュー原稿を編集するとき著者の話も100%は信ぜず、事実関係や数字は裏を取る。
私は新聞記事の作成過程はさほど詳しくないが、普通調べるんじゃないの、編集担当した人間は。まして今回「背景に東北差別」と「差別問題」に言及している記事だし。無知で無邪気なインタビュー相手に恥かかせてりゃ世話ないというか。
久々に「なんだかなあ」というクソ記事を読んだ。嫌な気分だ。
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