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大人の発達障害、増える相談者 広がる支援の場
就労困難で会話訓練大人の発達障害の相談が増えている。病院の専門外来に受診希望者があふれ、自治体の支援センターにも相談が相次ぐ。症状が多様なため見過ごされがちで、他人とのコミュニケーションが苦手なことから、社会人になって人間関係の悩みを抱え障害に気付くケースが多い。治療や支援で解決できる問題もあり、国の就労支援や、当事者同士が集まって会話を訓練する場といった支援も広がっている。
「言葉を額面通りに受け止めてしまい、相手が何を考えているかよく分からない」
今年9月に発達障害と診断された横浜市の大学院生の男性(29)が、障害に気付くきっかけになったのは就職活動だった。うまく活動できず自宅に引きこもり、インターネットで見つけたアスペルガー症候群の記述が自分のことに思えた。
男性が受診した昭和大付属烏山病院(東京・世田谷)は、2008年6月に大人の発達障害の専門外来とデイケアを開設した全国でも珍しい病院。初診の予約件数は09年度が390件で、10年度は643件に増えた。今年度も12月までに441件とほぼ昨年度並みで、月初めに受け付ける初診予約がすぐに埋まる状態が続いている。
5年で6.5倍に
05年4月施行の発達障害者支援法は、アスペルガー症候群や自閉症、注意欠陥・多動性障害(ADHD)などを発達障害と規定。脳の機能障害が原因で、人によって症状は様々で程度にも差があるが、よく見られる特徴がコミュニケーションが苦手なことだ。
子どもの発達障害は広く知られているが、10代は接する人が限られているので障害が本人の「性格」と見過ごされ、対人関係が複雑化する大学生や社会人になってから悩みやトラブルを抱えて障害が顕在化するケースが少なくない。患者数の統計はないが、烏山病院の加藤進昌院長(64)は「発達障害が認知され、診断できる医療機関も増えた」と相談が増えている背景を指摘する。
都道府県の発達障害者支援センターにも大人の相談が増えている。厚生労働省によると、全国のセンターが相談や支援を実施した19歳以上の件数は、センター開設当初の05年度に約3100件だったのが、10年度は6.5倍の約2万件。「仕事や対人関係などの悩みの相談が多い」という。
大人の発達障害への支援も広がっている。国は34歳以下の発達障害者を対象に、07年度から就職を支援する相談員をハローワークに配置。相談員は精神科医らと連携し、カウンセリングや面接の訓練などを行っている。
関西に住む発達障害の30代の女性は支援を受け、今年9月に企業の事務職に採用された。女性は「自分に合う仕事を根気強く前向きに考えてくれたことが自信につながった。自閉症の症状があったが、仕事を始めて人とつながって生きていると感じられた」と話す。
厚労省によると、全国のハローワークで新規求職を申し込んだ発達障害者は、06年度は284人だったが、10年度は3倍超の914人に増加。10年度に就職した人も06年度の2.6倍にあたる282人となった。同省は「一定の効果があった」とみて、現在34都道府県で相談員59人が対応する体制を、さらに全国に拡大・増員する考えだ。
とはいえ、ハローワークの支援で就職したのは3割にとどまる。ある就労支援者は「発達障害者のコミュニケーション能力には個人差が大きく、国の支援制度自体について行けない人も多い」と指摘する。仕事や対人関係がうまくいかずに離職し、自信をなくす人も少なくないという。
そこでコミュニケーション能力の向上を目指す取り組みも進む。
「話のテンポがいい」
「会話の切り口を変え話題を膨らませていた」
12月上旬、札幌市で開かれた東京都成人発達障害当事者会「イイトコサガシ」のワークショップ。発達障害者ら7〜8人でグループをつくり、2人が決められたテーマで5分間会話するのを残りのメンバーが聞いて良かったところを褒める。批判しないのがルールだ。
気付かぬ人多く
イイトコサガシは09年11月から活動。これまでに全国22都道府県で160回超のワークショップを開き、発達障害者の「居場所」にもなっている。自身も発達障害者で代表の冠地情さん(39)は「発達障害者は褒められた経験が少ない。今の自分を肯定的に受け入れ、コミュニケーションと向き合うことが社会とつながる第一歩だ」と話す。
烏山病院のデイケアでも発達障害者同士による会話などのプログラムを組む。
発達障害では自分の症状や苦手なことを理解し、場合によって周囲の支援を受けることが必要だ。日本発達障害者ネットワーク(東京・港)の市川宏伸理事長(66)は「自分の障害に気付かない人も多く、どのくらい発達障害者がいるのか分かっていない。企業や社会が偏見を持たず発達障害の理解を深め、能力を生かすよう受け入れ方法を考えるべきだ」と話している。
(今井孝芳)
うつ病併発多く
製薬会社、日本イーライリリー(神戸市)が今年7月、18歳以上の注意欠陥や多動性障害を持つ発達障害者100人をインターネット調査したところ、半数がうつ病とも診断されていた。転職を繰り返したり低収入だったりする人も多かった。
障害の合併症(複数回答)があったのは72人。うつ病が50人と最も多く、アスペルガー症候群が32人、不安障害が30人と、精神障害を併発する人が目立った。発達障害と診断された年が「18歳以上」は63人だった。
就労経験があったのは91人。うち回答が最も多かった「転職の回数」は「5回以上」で30人(33.0%)。「0回」は13人(14.3%)で、転職回数の平均は3.19回に上った。収入では「100万円以下」と答えたのが38人で最も多く、「101万円以上200万円以下」が13人で、200万円以下が全体の過半数を占めた。
[日経新聞12月15日夕刊P.9]
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