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http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cadetto/igakusei/sasatta/201107/520944.html
2011. 7. 28
医学生の学力が低下・・・それがどーしたの?
著者プロフィール
医師のキャリアパスを考える医学生の会●医学生が自らのキャリアについて学び、考え、発信していくことを目的として発足したネットワーク。20人ほどのスタッフが、見学ツアーなどのイベント企画や、MLによる情報発信を行っている。
コラムの紹介
「医師のキャリアパスを考える医学生の会」の運営スタッフによるリレーコラム。Uovo一人ひとりが、「心に刺さった」記事をネットからひろいあげ、なぜ刺さったのか、どう感じたのかを語ります。文末の()内は筆者のペンネームです。
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9割の医学部で「学生の学力低下を危惧」
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201106/520358.html
これは「全国医学部長病院長会議」が行ったアンケートの結果を報じた記事です。医療系サイトのm3.comやキャリアブレインなどでも報じていました。これらを読むと、約9割の大学で、医学部の教員が学生の学力低下を危惧しているほか、この2年間で医学部の留年者や休学者、退学者が増えていることなどが、明らかになったそうです。
このアンケートは、全国医学部長病院長会議の「学生の学力低下問題に対するワーキンググループ」が、昨年12月から今年1月にかけて、全国80大学の医学部長もしくは教育責任者を対象に実施したものです。この調査結果を受けて同会議は、医学部の新設や定員増に改めて反対するという立場を表明しています。
しかし私は当事者である医学生として、この発表内容に強い違和感を覚えました。まず、学力低下について。
調査結果では、学力低下を示す事柄として「1年生の生物、物理、化学の成績低下」「授業中の態度(私語や教員の指示への対応)の変化」などが挙げられましたが、これらはゆとり教育や社会の教育(いわゆるしつけ)レベルの低下の結果でしょう。今の時代に生まれ、ゆとり教育を受けてきた身としては、「学生のせいじゃない」と言いたい。こうした流れを容認してきたのは、日本の社会全体です。子どもは生まれる環境や時代を選べないのです。
調査では、2008年以降、留年者や休学者、退学者の数が増加しているほか、医学部の最終合格者におけるセンター試験の平均点と最低点が低下しているという結果も出ています。2008年といえば、国の施策で医学部の定員が増員された年です。定員が増えれば、“成績ピラミッド”の裾野が広がるのは当然のことで、今さら驚くには当たらないのではないでしょうか。
それよりも、「医学生の学力の低下」の背景にある時代の流れが問題だと思うのならば、その問題を医学部としてどう解決していくかに力を注ぐべきです。今回の発表のように、学力低下だけをことさらに取り上げて問題だと騒ぐだけでは、責任逃れにしか見えません。
記事では各大学が講じているという「学力低下対策」にも触れていました。例えば「1年生に不足分野の補習を行っている」「講義・実習の出席を厳しくチェックしている」などです。しかし、これにも疑問があります。補習はともかく、出席を厳しくチェックすることが実際に功を奏しているのでしょうか。
筆者の実感としては、学生は「この先生の話を聞きたい。この講義は出る価値がある」と判断すれば、何もしなくても出席するものです。授業内容が変わらないのに、締め付けばかり厳しくしても良い医師の育成にはつながらないどころか、かえって学生のモチベーションが下がる原因を作っているように思えます。また、先生方には、レジュメを読み上げるだけ、ぼそぼそ喋るだけ、といった講義になっていないか、学生がどう受け取っているのか、今一度振り返ってみてほしいと思います。
学力低下を示す事柄として、このほか「進級試験不合格者の増加」も挙がっています。しかしこの裏には、大学側の「試験を難しくして学生を締め付ければ、国試合格率が上がる。ひいては大学の評価が上がる」という意図が見え隠れします。これは様々な大学の学生から耳にする話です。試験を難しくすれば留年者が増えるのは当然の話であり、それを「学力低下」のせいと断定するのはいかがなものでしょうか。
さらに言えば、極論ではありますが、医学生の学力が落ちて何の問題があるのでしょう?患者さんが求めているのはどんな医師なのか?現場が必要としているのはどんな医師なのか?そこが一番重要なのではないでしょうか。それらを見定めた上で、学力の問題にとどまらず、きちんと医学部が教育していこう、というような前向きな議論に持っていくことはできないのでしょうか。
イマドキの学生は、一方通行の講義では身に付かない知識や経験を得ようと、能動的に学びにいっています。例えば、学生たちの交流(勉強会など)は昔よりも活発になっているはずです。メーリングリストやTwitterで大学や地域の壁を越えて交流したり学んだり、という学生達も大勢います。困ったときにすぐ「あれなんだっけ?」と聞ける仲間が全国にいる。少し前だったら考えられない状況ではないでしょうか。
大学には、国試合格率を上げなければ、大学の入学希望者が減ってしまう、という苦しい事情があることも確かで、同情の余地はあります。しかし、国試合格率を上げるために大学自ら留年者を増やしたり、国の施策に乗っかって定員を増やしたりしておいて、一方では「学生の学力が低下した」と嘆いてみせるのはおかしな話です。
大変多忙と思われる医学部長がわざわざ集まって会議をするなら、「医学生の学力低下を理由に医学部新設・定員増に反対する」という後ろ向きな議論を展開するのではなく、「各大学が、時代の要請を反映しながら、いかにして質の高い臨床医、研究医を育成し、社会的責任を果たしていくか」という前向きな議論をしていただきたいと切に望みます。
その上で、「教育者が足りない」「教育施設が足りない」といった問題が顕在化してくれば、そのことは国や国民に積極的にアピールしていくべきですし、今まで通りの教育体制で良いのか?代替手段はないのか?と自らを省みることも必要だと思います。工夫のしどころ、色々あると思うんですけどねえ・・・。(水)
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