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いま就活生の皆さんが日々、努力している「就活」は、どうして始まったのでしょうか。海外では余り見られないというこの仕組みを、フェミニストで社会学者、東大教授の上野千鶴子さんが、鋭く語ってくれました。
――いまの就活の問題点は、何にあるとお考えですか?
はっきり言って、新卒一括採用という企業の慣行が諸悪の根源です。背後にあるのは終身雇用・年功序列給与制で、この場合、採用リスクが高いので、うかつな採用はできません。企業が学生を厳選しようとして就活は前倒しになり、長期化。学生が専門教育に入るところで就活が始まり、大学教育は非常に悪影響を受けています。いまや、かつての就職協定は反古と化し、学歴偏重とか指定校制度の批判すら聞かれない。大学進学率5割の時代、大学間隔差は拡がり、大学の銘柄による選別が公然と横行しています。
――書類に大学名を書かせない有名企業もありますが
そんなの真っ赤なウソ。採用実績を見れば一目瞭然です。個性尊重というのもウソ。就活にベージュ色のスーツを着て行ったらアウトだし、茶髪もピアスもアウト。学生は3年生になるとルックスが変わります。いったん就活という場の空気を読んで没個性になり、画一主義に適応できることを証明する。個性も才能も、標準化の上のプラスアルファにすぎません。民主党は卒後3年間、新卒扱いにするとか言っていますがナンセンス。新卒一括採用の原則は変わりません。男女雇用機会均等法が制定されたとき、それまで門前払いにした女子にも確かに応募の門戸は開かれた。でも多くの企業で女子枠は実質上決まっています。制度と運用にはギャップがあるのです
――そもそも新卒一括採用は、どうして始まったのですか
先ほど新卒一括採用の背後にあるのは終身雇用・年功序列給与制と言いましたが、実は、この日本型雇用制度は1920年代のアメリカ企業で生まれたのです。それが1950年代の日本企業に導入され、1960年代に、あっという間に定着。高度経済成長期に労使協調のもと利害が一致、80年代のバブルまでを支えたので「成功体験」があるのです。人手不足の時代に効率よく人材を集めるにはいい仕組みでしたが、バブル崩壊から20年もたち、終身雇用は実質崩壊しているのに、あの成功体験が忘れられず、旧体制が崩れない。このままでは日本は滅びますよ。実際、そごう、山一證券、長銀…巨大企業が次々沈没しました。うちの学生は大手企業に入る子が多いんですが「内定が出ました」と言って来ると、「おめでとう」の次に私は言うの。「その会社、キミの定年までもつかしら?」。
――新卒一括採用をやめ、通年採用にすれば、学生は専門の勉強に打ち込み、留学したり社会貢献に視野を広げたり個性を磨いたりできるのに
それが難しい。なぜなら日本は中途採用市場が活性化しないからです。中途採用市場を活性化する唯一の道は、年齢給をやめ、職能給に変えることですが、その条件は、査定評価を能力と実績に応じて個人ベースにすること。すると、例えば50代の男性が中途採用で30代の上司の部下になることも受け入れなければならないし、無能な人は、すぐにクビを切られる。そういうことが日本の企業にはなじみにくい。日本の企業の秩序は男集団がつくり上げたもので、女や外国人を排除し、男の「同期」と「年齢」で固められていますから。だから有能な女は外資へ行くし、国費で育てた外国人留学生が日本を出る。日本では、転職はリスクですが、査定評価が個人ベースの海外では、転職しない人は、どこからも声がかからない無能な人と見られます。
――現代のアメリカは、転職でキャリアアップする社会ですね
大学教育を見ても、人種・国籍・性別を問わず、優秀な学生を世界中からリクルートし、生活費込みの奨学金を保証して切磋琢磨させる。アメリカの企業は終身雇用なんて約束しません。その代わり、能力さえあれば、人種・国籍・性別を問わず採用して、チャンスを与えます。いまアメリカのIT産業を支えるコンピュータサイエンスの博士号取得者のうち、非アメリカ人の中でいちばん多いのがインド人、その次が中国人。アメリカは、どこで生まれた才能も受け入れるシステムを、グローバルマーケットを相手にした高等教育産業と連携して完成させましたから、成長しないわけがないです。
――日本の未来は相変わらず厳しそうで…最後に、就活生に生き残るヒントを
閉塞感の中で、学生は安定志向に走り、旧態依然とした大組織に行きたがっていますが、目先だけ見て選ぶ、就活生にも問題があります。企業が一人の採用に何百万円もかけて新卒一括採用をするのは、実は運命共同体のメンバーの選別をやっているから。運命共同体に入るには忠誠心が要請されますから、忠誠心のない女は歓迎されません。しかし、古い体質を引きずる組織は、もはや泥舟かも知れません。あなたたちは、所属する組織と決して心中してはいけない。これは「基本のキ」。会社の延命より自分の延命を図れる、したたかで自立した社会人を目指すことです。
うえの・ちづこ 1948年富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了。平安女学院短大助教授、国際日本文化研究センター客員助教授、コロンビア大学客員教授等を経て、1993年東京大学文学部助教授(社会学)、1995年東京大学大学院人文社会系研究科教授。専門は女性学、ジェンダー研究。1994年『近代家族の成立と終焉』(岩波書店)でサントリー学芸賞を受賞。『おひとりさまの老後』(法研)など著書多数。近年は高齢者の介護問題研究でも知られる。新刊に『女ぎらい』(紀伊國屋書店)。
上野さんたちが主宰する女性をつなぐ総合情報サイト
「ウィメンズ アクション ネットワーク」
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