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低米価政策へ転換する本当の理由
政府は米価の下落を放置している。農業者は余剰米の買い上げなどの緊急対策を要求している。多くの野党も要求している。だが、政府は応えようとしない。いくつかの理由をつけて米価の下落を放置している。
政府はいろいろと理由をつけているが、隠された本当の理由がある。それは、今後、米価を低く抑える低米価政策へ、ひそかに転換しようと目論んでいるからである。
かつての低米価政策は、生活費を安く抑え、賃金の上昇を抑えるための政策だった。だが、こんどはそうではない。FTAなど、貿易をいっそう自由化するための低米価政策である。
だが、それでは食糧自給率は、ますます下がるし、食糧安保は危うくなるうだろう。それは決して国益に沿う政策ではない。
農業補助金が農業所得に占める割合と農産物の内外価格比
政府は緊急対策をとらない理由として、需給調整のための政府買い上げはしないことになっている、とか、来年は需給が引き締まり、米価は反転して上がる、とか、戸別所得補償制度に加入しなかった人もトクになり、加入したケチな根性の人から不満がでる、とか、いろいろ言っている。
これらの理由には事実の誤認や矛盾がある。しかし、ここで指摘したいのは、そのことではない。本当の理由が別にあって、それを隠していることである。
◇
本当の理由は、FTAなどの貿易自由化の促進である。そのための障害になる農業政策を転換して、米を含む貿易の自由化を促進するというのである。
米の輸入をさらに自由にすると、米価が下がる。米価が下がっても、生産が続けられるように、として戸別所得補償制度を創った。だから、この制度を充実すれば、安心してFTAなどを推進できる、という訳である。
はたして、そうだろうか。
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表は主要国の農政の基本を示したもので、農業所得の中に占める補助金の割合と、農産物の国内価格が国際価格の何倍になっているか、つまり、内外価格比を示したものである。
日本と韓国は内外価格比が大きく、補助金が少ない。それとは逆で、EUは内外価格比が小さく、補助金が多い。一方、アメリカとオーストラリアは内外価格比も小さいし、補助金も少ない。
日本はアメリカやオーストラリアと同じ農政にしたいが、日本とは風土的条件と歴史的条件が全く違う。同じ農政にするには、風土と歴史を変えねばならない。つまり、不可能である。
そこで、EUと同じ農政に転換する、というのである。
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EUの農政は、輸入の自由化を大目的に掲げる。自由化すると国内価格が下がるので、農家は生産を続けられなくなる。そこで、農家に生産を続けてもらうために、農家の所得を補償するための直接所得補償制度を採っている。そうすれば、農家は安心して生産を続けられる。
日本もEUを参考にして農政を転換し、直接所得補償制度を創れば、輸入を自由化しても農家は生産を続けられる、と考える。そうすれば、農業側も反対しないからFTAを促進できる、と考える。
戸別所得補償制度は直接所得補償制度の一種だし、低米価政策は、農政転換のための地ならしであり、第1歩なのである。
だが、それでよいか。
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2つのことを言いたい。1つは、そのためには、膨大な財政負担が必要になることである。いまの日本の補助金割合は、表で示したように8%で、EUは41%だから、補助金を5倍に増やさねばEC並みにならない。いまの財政状況では、それは不可能だろう。
そうなると、途中でこの政策は破綻することになる。つまり、戸別所得補償制度は、やがて崩壊する。
もしも、仮に膨大な財政負担をして、この制度を続けられたとしても、もう1つ重大な問題がある。それはカネの問題ではない。農業者の心の問題である。
特に米の場合、所得の大部分が補助金になるような、この政策を、農業者の誇りが許さないだろう。その結果、米作りをやめてしまうだろう。
そうした事態になることを、食糧安保を願う多くの国民はのぞんでいない。
◇
自民党をはじめ、多くの野党も直接所得補償制度を、農政の基本に据えようとしている。しかし、そこには日本農業の未来はない。このことを、銘記しなければならない。
そうではなくて、直接所得補償制度によって生産費を補償しながら、米価の回復を計らねばならない。そのためには、需給の弛緩を改めることである。そうすれば、米価は回復する。そのためには、米の緊急買い上げを速やかに実施するしかない。
買い上げた米は、棚上備蓄し、あるいは、米粉米や飼料米として活用すればよい。そうすれば、日本農業の明るい未来が見えてくる。
(前回 米粉パンをもっと安く)
(2010.09.06)
米粉がもっと安くなって、みんなでgopanでパンを食べれば、米の需要は増えるのでは?
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