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2010年10月25日(月)「しんぶん赤旗」
ゆうPRESS/「研修」の名で奴隷労働/告発 中国人女性の思い
「日本に働きに行って、お金を稼いで家族に喜んでほしい」―。期待を胸に「研修」の名目で働きに来た場所は、「中国人はバカだから給料が安い」などの暴言を浴びせ、奴隷的に酷使される人権無視の環境でした。「研修」とは名ばかりの実態を勇気をもって告発し、裁判で勝利した劉君(リュウ・チュイン)さん(25)と谷美娟(グ・メイチェエン)さん(23)、杜甜甜(トゥ・ティエンティエン)さん(24)。女性実習生たちが異国の地で歩んだ足跡を追いました。(岡素晴)
3人は中国山東省青島市の出身で、日本に来るまで地元の縫製工場で働いていました。給料は日本円にして月1万5千円ほど。劉さんは「日本はとてもいいところで、お金も稼げるし、みんな優しく、語学やいろんなことを身につけられる」と、村の人に勧められて外国人研修・技能実習に応募したといいます。
休み月1日
3人は、渡航費や保証料などの名目で、約60万円を親類などに借りて、中国の送り出し機関に支払いました。契約に違反すれば、さらに多額の違約金が科せられる条件がついていました。
「途中で帰国すれば、契約違反となり、身内に迷惑をかけてしまう」。最初から重いリスクを負って、来日したのが2006年。熊本県天草市の縫製工場での「研修」が始まりました。
就業は通常、午前8時から午後10時、ひどいときは午前3時まで。休日はひと月に1〜2日で、体調を崩しても病院に行かせてもらえません。賃金は基本給の6万円に、残業代として1時間あたりわずか300円。パスポートや印鑑を取り上げられ、口答えも許されない事実上の、強制労働でした。
支えたもの
転機は07年9月に訪れます。
工場が倒産し、帰国の危機に直面。借金もあり帰ることができなかった彼女たちは、知人を通して、ローカルユニオン熊本に加入。熊本県労連が身元を引き受けました。
現代の「女工哀史」にたとえられた身の上は、共感を呼び支援組織が結成されます。同年12月、工場側に未払い賃金の支払いと、日本の1次受け入れ機関に慰謝料を求めて、裁判に立ち上がりました。
カンパや支援を募りますが、当初は1人あたり1万5千円ほどしか集まらなかったといいます。それでも米や野菜の差し入れを頼りに、工面し合い、裁判と同時に申請した未払い賃金の仮払いの仮処分決定を待ちました。
ところが、まさかの申請却下。「もう日本にいたくない。中国に帰りたい。その時は本当にそう思った」と口をそろえます。
しかし3人は、とどまって裁判の継続を決意します。「私たちが帰ってしまったら、同じように、つらい目に遭う人がでるから」との思いからでした。
09年1〜2月、裁判のヤマ場となった3人の本人尋問が行われました。被告側の尋問にも堂々と渡り合った彼女たち。尋問を振り返って劉さんは、「まったく緊張しなかった。私たちは何も間違ったことはしていないから」と話します。
今年1月の熊本地裁、9月の福岡高裁の両判決とも、未払い賃金の支払いに加え、1次受け入れ機関の管理・監督責任を問い、慰謝料を科すという内容で、勝利を勝ち取りました。
きずな深め
支援してきた熊本県労連の楳本光男議長は「彼女たちが在留期限いっぱい日本にとどまり、連帯してたたかったことが、勝利につながりました。3人の頑張りに、私たちも元気をもらいました」と語ります。
支援者と親子のようなきずなが生まれ、同世代との交友も広がりました。中国に帰ってからも彼女たちの故郷を訪ねる関係が続いているといいます。
現在、中国で高校に通っている谷さんは「日本の大学に留学したい」という希望をもっています。劉さんと杜さんも「日本語を勉強して、いつか日中友好のために何か日本とかかわることをしたい」と話します。
誰もが人間らしく働いて生活できる、多文化共生社会を実現したい―。この運動に参加したすべての人の願いです。
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外国人研修・技能実習制度
開発途上国に技術貢献の名目で1993年に導入されました。18歳以上の成年に3年間の滞在が許され、「研修」や「実習」を行うもの。この制度を利用し、8万人以上(2009年、法務省統計)が日本を訪れており、そのうち6割以上が中国からの研修生です。
これまで研修生は労働者として扱われず、最低賃金を大幅に下回る給与で、長時間の過重労働を強いられてきました。全国各地で裁判や運動が起こり、09年7月、「入管法」の改定により、実習生の労働者性を認め、労働基準法などが適用されるようになりました。
(以下略)
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