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「命の値段」、非正規労働者は低い? 裁判官論文が波紋
http://www.asyura2.com/10/social8/msg/103.html
投稿者 gikou89 日時 2010 年 9 月 19 日 11:57:25: xbuVR8gI6Txyk
 

http://www.asahi.com/national/update/0917/OSK201009170090.html

パートや派遣として働く若い非正規労働者が交通事故で亡くなったり、障害を負ったりした場合、将来得られたはずの収入「逸失利益」は正社員より少なくするべきではないか――。こう提案した裁判官の論文が波紋を広げている。損害賠償額の算定に使われる逸失利益は「命の値段」とも呼ばれ、将来に可能性を秘めた若者についてはできる限り格差を設けないことが望ましいとされてきた。背景には、不況から抜け出せない日本の雇用情勢もあるようだ。

     ◇

 論文をまとめたのは、交通事故にからむ民事訴訟を主に担当する名古屋地裁の徳永幸蔵裁判官(58)。田端理恵子裁判官(30)=現・名古屋家裁=と共同執筆し、1月発行の法律専門誌「法曹時報」に掲載された。

 テーマは「逸失利益と過失相殺をめぐる諸問題」。若い非正規労働者が増える現状について「自分の都合の良い時間に働けるなどの理由で就業形態を選ぶ者が少なくない」「長期の職業キャリアを十分に展望することなく、安易に職業を選択している」とする国の労働経済白書を引用。こうした状況を踏まえ、正社員の若者と非正規労働者の若者の逸失利益には差を設けるべきだとの考えを示した。

 具体的には、非正規労働者として働き続けても収入増が期待できるとはいえず、雇用情勢が好転しない限り、正社員化が進むともいえないと指摘。(1)実収入が相当低い(2)正社員として働く意思がない(3)専門技術もない――などの場合、若い層でも逸失利益を低く見積もるべきだとした。

 そのうえで、逸失利益を計算する際に用いられる「全年齢平均賃金」から一定の割合を差し引いて金額を算出する方法を提案した。朝日新聞は徳永裁判官に取材を申し込んだが、名古屋地裁を通じて「お断りしたい」との回答があった。

この論文に対し、非正規労働者側は反発している。

 「派遣労働ネットワーク・関西」(大阪市)の代表を務める脇田滋・龍谷大教授(労働法)は12日に仙台市で開かれた「差別をなくし均等待遇実現を目指す仙台市民集会」(仙台弁護士会など主催)で論文を取り上げ、「企業の経費削減や人減らしで非正規労働者が増えた側面に目を向けていない」と指摘した。

 脇田教授は朝日新聞の取材に「論文は若者が自ら進んで非正規労働者という立場を選んでいるとの前提に立っているが、若者の多くは正社員として働きたいと思っている。逸失利益が安易に切り下げられるようなことになれば、非正規労働者は『死後』まで差別的な扱いを受けることになる」と話す。

 裁判官の間にも異なる意見がある。大阪地裁の田中敦裁判官(55)らは同じ法曹時報に掲載された論文で「逸失利益については、若者の将来の可能性を考慮すべきだ」と指摘。若い世代の逸失利益を算出する際、正社員と非正規労働者に大きな格差を設けるべきではないとの考え方を示した。

     ◇

 なぜ、1本の裁判官の論文が波紋を広げているのか。

 逸失利益をめぐっては、東京、大阪、名古屋3地裁のベテラン裁判官が1999年、将来に可能性を秘めた若い世代に対しては手厚く配慮することをうたった「共同提言」を発表。おおむね30歳未満の人が交通事故で亡くなったり重い後遺症が残ったりした場合、事故前の実収入が同年代の平均より相当低くても、将来性を考慮したうえで全年齢平均賃金などに基づき原則算出する統一基準を示した。

2000年1月以降、この基準が全国の裁判所に浸透したが、長引く不況による非正規労働者の増加に伴い、事故の加害者側が「平均賃金まで稼げる見込みはない」として訴訟で争うケースが増えている。交通事故訴訟に携わる弁護士らによると、実際に非正規労働者の逸失利益が正社員より低く認定される司法判断も出てきているという。

 こうした中で発表された徳永裁判官らの論文。非正規労働者側は、交通事故訴訟に精通した裁判官の考えが他の裁判官にも影響を与え、こうした動きを後押しする可能性があると不安視する。(阪本輝昭)

     ◇

 〈逸失利益〉 交通事故などで亡くなったり、重度の障害を負ったりした人が将来的に得られたとして算定される収入。以前は男女別全年齢平均賃金などを基準とする「東京方式」と平均初任給を基準とする「大阪方式」で未就労者の逸失利益を算定する方法があり、地域格差があった。2000年1月以降は東京方式に沿った基準に統一され、不況で急増した若い非正規労働者にも適用されている。25歳の男性が交通事故で死亡した場合、67歳まで働けたとして、09年の男性の全年齢平均賃金(約530万円)をもとに生活費を半分差し引いて試算すると約4600万円になる。
 

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コメント
 
01. 2011年6月29日 11:10:45: Pj82T22SRI
逸失利益の計算は昔から、職業や性別の影響を受けてきた
時代や社会状況に応じて変わっていくのだから、
こうした考えが出てくるのは当然だ
http://www5d.biglobe.ne.jp/Jusl/IssituRieki/index.html
http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Stock/4102/hanr/other/other5.html
【逸失利益―損害賠償額の男女差】

1.京都地判2000(平12)年3月23日 判例時報1758号108頁
 神戸大医学部3回生の女子学生が、交通事故で即死した事案で、逸失利益について、賃金センサス医師(男)経験年数計の平均賃金を使って計算し、9586万0582円と算定した例

[コメント]
 小中学生と違って、具体的に職業が決まっていると、高額の認定になりうる例。
 01年の司法研修所の損害賠償実務研究会の要旨には、年少者(中学生まで)についてだが、女子が男女平均賃金、男子が男子平均をとっていると、やはり男女間格差は残るので、女子について男子の基準を採用することも考えられるとしている(判例タイムズ1070号11頁の要旨は実践的にも示唆に富みます。弁護士におすすめ)。

2.東京高判01(平成13)年8月20日 原審東京地判平成13年3月も同旨
 死亡の場合の逸失利益の算定について、男女別の平均賃金を使用する従来の方法を合理的理由のない差別であるとした例

 交通事故で小学6年の娘を亡くした父親から加害者に対する損害賠償請求がなされた事案で、「本来、労働能力には性別による差は存在せず、少年や少女には多様な就職の可能性がある。少女の交通事故に際して女子労働者の平均賃金を採用するのは理由のない差別で合理性を欠く」「女児の逸失利益に全労働者の平均賃金を用いても、少年に男子労働者の平均賃金を用いると、なお男女差が残る。今後は、男女とも全労働者の平均賃金を用いるのがわかりやすく適当と考える」として、全労働者の平均賃金を基準にして逸失利益を算定した一審判決を支持した。

[コメント]
 従来、未就労の女子の逸失利益について、判例は女性の平均賃金を基準にしてきたが、男女の賃金格差が反映し、命の値段にも男女差が生じていた。こうした計算方法をあらためた最初の高裁判例。
 同様の判例 として、奈良地裁葛城支判平成12年7月(交通事故)がある。医療事故訴訟でも同様の計算方法が用いられはじめている。損害額の算定では他に、顔に傷を残した場合、女性の損害額が男性のそれより高いなど、ジェンダーフリーとはいえない問題が残されている。

3.最高裁二小判2002(平成14)年5月31日判例集未登載
 未就労女子の逸失利益につき、「今日、被控訴人の主張するように、雇用機会均等法の制定により広い就業領域で女性労働者の進出確保が図られ、これを支援する形で、労働基準法上、女性の勤務時間等に関する規制が緩和されると共に、男女共同参画社会基本法が制定され、女性の労働環境をめぐる法制度、社会環境はそれなりに大きく変化しつつある。その結果として、今日の上記賃金格差の原因ともいうべき従来型の就労形態にも変化が生じ、女性がこれまでの女性固有の職域だけでなく、男性の占めていた職域にまで進出する状況が現実のものとなりつつあることは否定できない。そうすると、男女の賃金格差が完全に解消される蓋然性はないとしても、女性も男性並みに働き、かつ、男性と同等に扱われる社会的基盤が形成されつつあることは確かな事実であり、このような社会状況等の変化を踏まえるならば、逸失利益の算定においても、女性が将来において選択し得る職域の多様さを反映する方法が選択されて然るべきである。かかる観点からいうと、特段の事情のない限り、労働者全体の就労を基礎とする全労働者の平均賃金の方が、未就労年少女子にとって、可能な限り蓋然性のある額を算出しうる、より合理的な算定方法であると考えられる。」とした大阪高裁2001(平成13)年9月26日判決(判例時報1768号95頁、一審は奈良地裁葛城支判2000(平成12)年7月4日)に対する上告を棄却し、女性年少者の逸失利益について全労働者の平均賃金を基礎として算定することが確定した事例。

[コメント]
 この論点について、地裁、高裁レベルでの最近の判例を最高裁がはじめて認めて確定したもの。
 かつて1986(昭和61)年には、最高裁は「男女の平均賃金格差を前提として逸失利益を算定しても不合理とは言えない」(最高裁三小判86年11月4日)と言っていたのですから、変わりましたね。


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