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□聞き手・橘慶一郎新聞出版局次長
橘慶一郎新聞出版局次長 昨年の総選挙はわが党にとって大変厳しい結果でした。石原伸晃幹事長はどのように分析していますか。
石原伸晃幹事長 「自民党とは違う政党に一度政権を任せてみよう」という国民の思いがありました。さらに小泉政権のあと、３年間で総理大臣が３人も代わったことは選挙に大きな影響がありました。そこはわが党が反省しなければならない点です。
◆政権に統治能力欠如
橘 ところが、そのあとの鳩山政権も短命でした。菅政権も今、難しい局面にあります。民主党政権に欠けているものは何ですか。
石原 まず、ガバナンスが正常に機能していません。尖閣（せんかく）諸島沖での中国漁船衝突事件のビデオがネット上に流出しました。しかも、政府から国会に提出されたものは、わずか約７分なのに、ネット上では約４４分も流れています。これは、現政権が統治能力を欠いている証拠です。しかし、国会答弁を聞いていると、彼らは今回の事態の深刻さに気づいていないようです。
橘 今の政権は「日本人としての誇り」をもって政治をやっているように感じませんし、「国家」に対する考え方も見えてこない。幹事長は、国務大臣を経験していますが、いろんな厳しい局面を通過されたと思います。国を担っていくには、何が大切だと思いますか。
石原 責任感です。私はストレスは感じないほうだと思っていましたが、大臣だったときは、ものすごいプレッシャーを感じました。しかし、国会を見てわかると思いますが、今の内閣は、昨日と今日で言うことが違っても、全く責任を感じていません。あれだけいい加減な答弁で済むのなら、楽だと思いますよ。
橘 最近、民主党政権に対し「ちょっと違うな」「このままじゃまずいぞ」という声がずいぶん聞かれるようになりました。尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件などを契機として、国民は外交の大切さを感じるようになりましたし、内政で言えば、錬金術みたいにおカネが出てくることはあり得ないこともわかってきたのだと思います。政権奪還へ向けての幹事長の考えを聞かせてください。
石原 今回のビデオの流出事件ひとつとっても、明らかに政治のコントロールが行き届いていません。外からの圧力からというよりも、内から国家が崩壊していく危機にわが国は直面しています。一日も早く菅内閣を解散総選挙に追い込まなければなりません。
政治とカネの問題でも、民主党はほおかむりし続けています。小沢一郎元代表、鳩山由紀夫前総理など「政治とカネ」の問題を抱えている人が何人もいます。政治とカネといえば、最近では民主党の専売特許です。でも、民主党は何一つ解決しようとしない。
そういうことが国民にもよくわかるように、一つ一つ国会でしっかり政府を追及していきます。これだけ、国をめちゃくちゃにした政権を、解散総選挙に追い込むために、私は多少思いきったことをしてもいいと思うんです。
◆都市部で「違い」訴え
橘 政権奪還のためには、前回の総選挙で特に厳しかった都市部を中心に支持を集めることがポイントだと思います。どのようなアプローチを考えていますか
石原 東京、愛知、大阪の３大都市圏は悲惨な結果に終わっていますし、その近郊部、たとえば千葉、埼玉、神奈川などもかなりひどい負け方をしました。都市部に住んでいる人たちは、時の政治状況に敏感に反応します。そういう人たちに、わが党と民主党との違いを一つ一つ丁寧に説明していくことが大切です。国家の主権を守るというのはわが党の基本中の基本。しかし、民主党はどうも「主権」という概念が希薄です。「地域主権」とか変な造語もつくったりしています。
また、供給サイドには冷たい政策スタンスです。さらに、わが党には政党の憲法ともいえる綱領がありますが、民主党にはありません。民主党との違いを発信し続けることで、都市部の人たちの考えを変えることができると思っています。
橘 だいぶ堅い話を続けたので、やわらかい質問をします。わが党のキャッチフレーズが「いちばん」なので、それに関連した質問です。まず、幹事長の「いちばん大切なもの」を聞かせてください。
石原 国会議員としては国家、父親としては家族です。
橘 「いちばんの好物」は何ですか。
石原 子供のころは、コメと卵のアレルギーでした。今では両方とも食べられるようになりましたが、子供のころは結構苦労しました。でもアレルギーを克服した今では、嫌いなものはなくて、何でも好きです。
橘 幹事長として、心がけていることや何か研鑽（けんさん）していることはありますか。
石原 私は学生時代、武道をやっていました。本当はサッカーが好きで、小学校のころはサッカー少年でした。ポジションはディフェンダーでキック力には自信があったのですが、足があまり速くなかったんです。それで、サッカーはあきらめました。
でも、それが一つの心残りで、サッカーの後に「何をやろうか」と真剣に考えて、ちょっと時間がかかったんですけれども、高校生のときに少林寺拳法を始めました。それを大学までやり続け、今でも少林寺拳法部の総監督をしていますが、そこで学んだことは「成せば成る」ということです。単純なんですけどね。
慶應義塾塾長だった小泉信三先生の「練習は不可能を可能にす」という有名な言葉がありますが、これも「成せば成る」という意味です。自分で見つけ出した少林寺拳法を通して、「成せば成る」ということを身をもって体験できたことが人生の中での大きな宝でもあるし、一つの心棒になっています。
橘 今の私たち自民党にとっても大事な言葉ですね。すごく自信が持てるというか、頑張れる言葉です。ファミリーの話で申し訳ありませんが、おじさんの石原裕次郎さんがとても有名な方でした。
石原 おじさんが生きていれば選挙がもっと楽だったでしょうね（笑）。でも、楽な選挙してたら、ろくな政治家にはなっていなかったかもしれません。選挙は厳しいほうがいいんです。選挙の厳しさが政治家を鍛えますから。その経験は将来、かけがいのない財産になるはずです。
落選し、それぞれの選挙区で苦労されているわれわれの同志も、そういう思いで捲土重来（けんどちょうらい）を期してほしいと思います。
◇
【プロフィル】石原伸晃
いしはら・のぶてる 東京都第８選挙区（杉並区）選出。１９５７年生まれ。８１年慶應義塾大学を卒業後、日本テレビに入社。政治部記者として大蔵省（現財務省）・外務省・総理官邸などを担当した。９０年衆院議員に初当選。行政改革・規制改革担当相、国土交通相、党幹事長代理、政務調査会長などを歴任。２００５年東京都連会長、１０年幹事長に就任。
【プロフィル】橘慶一郎
たちばな・けいいちろう 富山県第３選挙区（高岡市、氷見市、砺波市、小矢部市、南砺市、射水市）選出。１９６１年生まれ。８４年東京大学卒業後、北海道開発庁に入庁。２００４年高岡市長に就任。現在は、衆院経済産業・総務・議運の各委員、党シャドウ・キャビネット経済産業副大臣、国対委員、女性局長代理、新聞出版局次長などを務める。
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