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「中国人船長釈放」と「海上保安官逮捕」とのバランスを考えたというのは、一言で言えば「大岡裁き」であろう。圧倒的な擁護論の中で海上保安官は不起訴の方向が確定的となった。この捜査当局の方針決定は、菅直人内閣、とりわけ官房長官・仙谷由人主導の政治判断に「ノー」の結論を突きつけたことになり、またしても判断能力が問われる結果となった。またマスコミの判断では朝日新聞のミスリードが目立った。
逮捕せずの方針決定は公式的には海上保安官の行為に悪質性が乏しいことと、ビデオ映像に機密性が薄いの2点に尽きる。最高裁が1977年に「実質秘」重視の判断を下しているのも影響したのだろう。加えて捜査当局が「船長」を超法規的に釈放した問題とのバランスを考えたという判断は正しい。大局を見ている。逆に首相官邸は菅自身が「逮捕論」であったのに加えて、仙谷が当たるべからざる勢いで「逮捕・起訴」論であった。仙谷は世論に擁護論が多いことをを「多いとはどのくらいか」とはねつけ、「大阪地検特捜部の事件に匹敵する由々しき事案だ」と明らかに起訴を意識する発言を繰り返した。
これを受けたのだろう、官邸に「大阪地検」で弱みを握られている最高検が「逮捕論」で押し通そうとしたのが構図だ。最高検は船長逮捕に当たっても、甘んじて政治側からの「責任押しつけ」に応じている。今回も官邸から指示があったか、官邸の“気持ち”を忖度(そんたく)した可能性がある。しかし最高検は高検、地検の「勇気ある」抵抗にあった。かねてから船長釈放の政治責任を一地方検事に押しつけた首相官邸への反発も、地検内部には相当あったといわれている。検察の内部対立が分裂状態へと発展しかねないぎりぎりの中で、最高検が分裂回避で降りたのが真相のようだ。
繰り返すが事件を大局的に見る目において、官邸や最高検より捜査当局の方が優れていたことになる。そもそもの流出事件の発端は政府が「中国を恐れるあまり」にビデオの公開をしなかったことと、同じ理由で船長を釈放したという2つの誤判断の上に成り立っていたのだ。その誤判断の上に“義賊”が出現したわけである。それを差し置いて、「逮捕・起訴」に踏み切った場合、非難の矛先が首相官邸に向かうことを理解せず、仙谷はニワトリが目先の餌をつつくような発言に終始した。既に朝日の16日付朝刊の世論調査では支持率が27%に急落して、「20%台での4代連続退陣」が「5代連続退陣」へとなりかねない要素も出ている中で、逮捕は更なる支持率ダウンに直結したであろう。
要するに総合判断ができるか、「公務員への示しがつかない」として、「仙谷法匪」的な狭隘(きょうあい)な判断にとどまるかが問われる問題であったのだ。確かに逮捕するかしないかは難しい判断を問われる場面であったが、朝日新聞は致命的な誤報をした。11日付朝刊トップで「神戸海上保安官近く逮捕」の見出しを取り、社説では「政府の高度な判断を一職員が独自の考えで無意味なものとしてしまっては行政は立ちゆかない」と保安官責任論を展開。関連記事も同趣旨の論調で一貫させた。恐らく最高検の「逮捕」情報に引っ張られたのだろうが、社説子の言う「高度な判断」が根本から間違っていればどうするのだ。どうもこの新聞は大局を見ずに官僚的な判断にとどまるケースがよくある。今朝の見出しも読売が「逮捕せず」とやっているのに「逮捕見送り」とした。誤判断をカバーしようとする未練たらたらの「言い訳見出し」だ。
【朝刊トップ3分勝負】
★朝日
海上保安官の逮捕見送り 任意で捜査継続 尖閣映像事件 沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突をめぐる映像流出事件で、警視庁と東京地検は15日、「自分が流出させた」と名乗り出た神戸海上保安部の男性海上保安官(43)について、国家公務員法の守秘義務違反容疑での逮捕を見送る方針を決めた。
★毎日
尖閣映像流出:海上保安官の逮捕見送り…罰金・起訴猶予も
沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突を巡るビデオ映像が流出した事件で、警視庁捜査1課と東京地検は15日、国家公務員法(守秘義務)違反容疑で取り調べていた神戸海上保安部の海上保安官(43)の逮捕を見送り、在宅で捜査を継続する方針を決めた
★読売
海上保安官逮捕せず…書類送検へ
尖閣諸島沖の中国漁船衝突を巡る映像流出事件で、検察・警察当局は15日、問題の映像を動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿した神戸海上保安部所属の巡視艇「うらなみ」主任航海士の海上保安官(43)について、国家公務員法(守秘義務)違反容疑での逮捕を見送り、任意での取り調べを継続することを決めた。
★産経
海上保安官逮捕せず
沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突をめぐる映像流出事件で検察当局と警視庁は15日国家公務員法違反容疑で事情聴取していた神戸海上保安部の海上保安官を逮捕しないことを決めた。
★日経
英豪でインフラ整備応札 政府、官民一体で
路面電車など6事業
政府は先進国のインフラ整備事業の受注を官民一体で目指す活動を本格化する。月内に日本企業を中心とする事業体が、豪州ゴールドコーストの都市中心部での次世代路面電車の建設入札への参加を表明する。英国の洋上風力発電所建設への参加なども検討する。政府が16日に閣議決定する政令改正で可能になる国際協力銀行(JBIC)の金融支援拡大を利用する。
http://thenagatachou.blog.so-net.ne.jp/
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