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鳴りを潜めていた民主党の小沢一郎元代表が、「ポスト菅」の政局をにらんでそろりと動き出した。10日、京都市内で行われた鳩山由紀夫前首相と稲盛和夫京セラ名誉会長との極秘会談。ときあたかも、沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突をめぐる映像流出事件で、上を下への大騒ぎとなっている最中だっただけに、政界では、どんなやり取りが交わされたのかと、疑心暗鬼が広がっている。
3氏は4月にも同じ京都市内で会談している。米軍普天間飛行場の移設問題や「政治とカネ」の問題で内閣支持率が急落し、7月に控える参院選で民主党の惨敗が予測されていたころだった。会談から約2カ月後、鳩山氏は自ら首相の座を降りる決断をしている。
稲盛氏は小沢氏の信頼が厚いことでつとに知られる。かつてそのわけを小沢氏に近い民主党関係者に尋ねたことがある。
「とにかく口が堅い。財界人の中には、小沢氏と会えば、会ったことを話したがる。けれど、稲盛氏は決してそんなことをしない。ましてや会談内容が漏れるなんてあり得ない」
小沢氏にとって、本音を語れる数少ない人物なのだ。
5日には、都内の中華料理店で自身を支持する約10人の政務三役と会談し、尖閣諸島問題について、菅直人首相の対中弱腰外交を念頭に、「検察に政治的判断を言わせるのはどうか。政治家が政治主導でやるべきだ」と批判した。
会合をセットしたある政務官周辺から、「真の狙い」を聞かされた。
「菅政権はもう持たないよ。『ポスト菅』の号砲が鳴ったとき、直ちに戦闘態勢がとれるよう、今から準備しておくということだ。これからもちょくちょくやるだろう」
この周辺の見立て通り、映像流出事件では、馬淵澄夫国土交通相の引責辞任を迫る野党の圧力が強まり、国会運営もままならない状態だ。何よりも小沢氏の「政治とカネ」の問題をめぐる国会招致も見通しが立っていない。民主党は、「ねじれ国会」で野党の協力を引き出す「部分(パーシャル)連合」にとって有効なカードを何一つ切れていないのだ。
頼みの綱だった公明党でさえ11日の中央幹事会で、平成22年度補正予算案に反対する方針を決定した。その後の記者会見で山口那津男代表は、菅政権をこう突き放した。
「予想以上にこの政権の様相、国民の反応は厳しい。国民の期待に応えられなければ、その後の展開に変化がないとはいえない」
政府・民主党の対応次第では、首相を退陣に追い込む可能性にまで言及した
実は、岡田克也幹事長は、「部分連合」を促す小沢氏の国会招致をめぐり、野党幹部からアドバイスをもらっている。
くだんの幹部は、(1)小沢氏に対し、政治倫理審査会への出席を促す(2)拒否されたら離党勧告に踏み切る(3)小沢氏の支持グループが離党に同調しても、小規模で済む−ことなどを進言した。要するに、政倫審の出席は、本人の申し出が必要なので、その対応については、小沢氏に丸投げし、出席しなければ切ってしまえ、ということだ。それでも岡田氏が実行したのはアドバイス(1)だけで、(2)には踏み切れない。
小沢氏周辺は、岡田氏の足元を見透かしている。
「岡田氏は強硬手段をとれないだろう。もしやれば、20人だが50人だかが小沢氏に同調して離党する。少なくとも政務三役は全員引き上げだ。幹事長の責任問題になるし、落ち目の菅政権にはこのうえない打撃となる」
それにしてもこういう見立てを聞くにつれ、「純化路線」を指向し旧新進党を解党、その後、自由党を結成し自民党と連立を組んだ小沢氏の政治行動を思い起こす。小沢氏は3日に出演したインターネットサイト「ニコニコ動画」の公開生中継で、政界再編はおろか離党する考えもないと明言している。それでも、事を急いで進める性癖が“持ち味”の小沢氏だけに、岡田氏がどんな出方をしようが、そうした展開になる可能性を捨てきれない。
9月の代表選で敗れ「一兵卒」宣言をした小沢氏だが、復権に向けた策に思いを巡らしているに違いない。「純化路線」で政界再編を仕掛けるのか、それとも、首相退陣をじっと待って、「ポスト菅」に名乗りを上げるのか。ただし、当然のことながら「政治とカネ」の問題を脇に置いたまま表立った活動をすれば、批判の矢面に立たされることを覚悟してもらわなければならない。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101114/plc1011141801024-n1.htm
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