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尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件をきっかけに仙谷由人官房長官の詭弁(きべん)と独善に磨きがかかってきた。事件に関する「厳秘」資料を不用意に広げて衆院第1委員室で撮影されると、正当な取材活動を「盗撮」呼ばわりした揚げ句、今度は写真取材の規制強化に意気込むとは、呆れてモノも言えない。
「由々しき事件だ。徹底的に調べていただかないといけない。私の刑事事件経験を含めた常識からいっても、その広さと深さの想像がつかない…」
仙谷氏は10日、ビデオ映像流出を認めた海上保安官に対し、逮捕もされていないのにこう決めつけ、その悪質性を強調した。
さすが「健忘症」を自認するだけのことはある。民主党の小沢一郎元代表の強制起訴が決まった10月4日、「起訴されても有罪判決が確定するまでは被告人は推定無罪の立場だ。その原則だけは考えなければならない」と説いたことをすっかりお忘れのようだ。
仙谷氏は、映像流出の責任論が海保を所管する馬淵澄夫国土交通相に向かうと突如として「政治職と執行職のトップは責任のあり方が違う」と珍妙なロジックを持ち出した。
要は鈴木久泰海保長官に責任はあるが、馬淵氏の責任はないと言いたいらしい。だが、そもそも「政治職」「執行職」という法令上の区分は存在しない。
「仙谷氏の造語ですね。馬淵氏を辞任させたら、次は追及の矛先が自分に向かうのがイヤなんでしょう」
ある人事院幹部はこうささやいた。成果は政治家が独り占め。失敗はすべて官僚の責任。これが民主党の唱える「政治主導」であることを官僚たちはすでに見透かしている。
誰彼かまわずかみつく「癖」も相変わらず直らない。映像流出事件で、学識経験者らが流出映像は「秘密」に当たらず、国家公務員法(守秘義務)違反に問えない可能性を指摘したことを受け、仙谷氏はこう反発した。
「その種のことを言っている学者とおぼしき方がいるが、ちゃんとした論文に書けと言ったら、そんなことは書かないと思う」
焦りの表れなのかもしれないが、弁護士歴を誇り、かねて法律の蘊蓄(うんちく)を語ってきた割に、この反論の論理性は乏しい。
とんちんかんなのは仙谷氏だけではない。菅直人首相は保安官が名乗り出た10日夜、慌てて各省庁の事務次官を首相官邸に集め、再発防止の徹底を訴えた。
「事務次官会議の廃止」を民主党政権の功績だと誇ってきたのは首相ではなかったのか。「へそが茶を沸かす」という言葉があるが、笑えない喜劇に付き合わされるのはもっと辛い。(阿比留瑠比)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101112/plc1011122341025-n1.htm
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