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2010年11月12日00:28 カテゴリ社会・世界情勢メディア
悪魔の税制 斎藤貴男『消費税のカラクリ』
きのう、いったんアップした記事を、操作を間違って消してしまいました。がっくりしていたら、ある方がRSSリーダーに残っている、と送ってくださいました。そんな技術があるのですね。ご親切に感謝しつつ、少し手を入れてもう一度、アップします。
読後、あやうく絶望しそうになる、でもこれが現実なのだ、ここから出発しなければならないのだ、と気を取り直す、そんな本にときどき出会います。このブログでも取り上げたい、そうした本が何冊か溜まっていますが、きょうはその1冊、斎藤貴男さんの『消費税のカラクリ』(講談社現代新書)をご紹介します。
以前、「消費税が上がると輸出産業が儲かる」という記事を書きました(6月26日、こちら)。それにたいして、「違うよ!」というご指摘をうけ、「【訂正】消費税のカラクリ、私にはお手上げです」を書きました(6月29日、こちら)。これは、輸出戻し税をめぐる議論です。部品を仕入れて製品をつくり、それを輸出する時は、海外の人に国内の消費税を負担させるのはおかしいので、部品の仕入れ値に上乗せして製品輸出業者が払ってあった消費税を製品輸出業者に戻すという、一見なるほど、の制度です。いったん払った消費税が戻るだけだから、輸出業者はプラスマイナスゼロ、つまり儲かってはいない、というのが、批判の眼目だったと思います。思います、と言うのは、とにかく私の頭では理解できなくなってしまったからです。それで、正直に「お手上げ」と書きました。
ただし、2本目の記事に、私はこんな懸念を書いていました。「たとえば輸出する車でも国内販売する車でも、自動車会社は同じ部品を調達するのですが、部品を納入する下請け業者は親会社からつねに値下げ圧力を受けていて、消費税をちゃんと上乗せできずに身を削って苦労している、けれど自動車会社は輸出分にはゆうゆうと消費税の還付を受けている、ということが問題なのではないかなあ、と思います。」
このしろうと考えは実は正解だったと、斉藤さんのご本を読んで確信しました。その実態はしかし、私の想像を超えていました。斉藤さんはご本についてインタビューをうけていて、それを見ればだいたいのことはわかります(こちら→http://blog.livedoor.jp/ikedakayoko/archives/2010-06.html#20100629)。けれど、インタビューだけではわからないのが、私も愕然としたその実態です。消費税がどのように個々の人間を絶望の淵に追いやるか、これはぜひひとりでも多くの方に知っていただきたい。斉藤さんは、消費税に追い詰められて自死に至った小規模な会社経営者のご遺族を何人も取材しているのです。斉藤さんは言います。消費税は、それを価格に上乗せできる強者にとってはなんでもない、けれど上乗せができない、取引の場で弱い立場にある事業者にとっては命取りだ、と。
先日、NHKスペシャル「借金862兆円はこうして脹らんだ」を見ました。景気対策や福祉財源確保のため、あるいは身勝手なアメリカの圧力でどんどん赤字国債が発行されていくさまを、旧大蔵省の次官級の人びとの証言録やインタビューで描いていました。その中で終始ちらついていたのが、消費税という言葉でした。何度もこれを導入しようとしたけれどできなかった、それが国や地方自治体の借金を脹らませた、と言いたいのかな、と思いました。ある人が、「消費税は悪魔のような税、必ずとれるから」といった証言をしていました。悪魔のような税。そうなのです。消費税は、しくみが簡素で、広く浅くかけられるので公平だとしてもてはやされていますが、商取引があれば、儲けがあろうがなかろうが必ず発生する、徴税する側にとってこれほど確実な税はないのです。それにしても、悪魔のようなとは、なんと正直な。
悪魔性は、中小零細事業者に牙を剥きます。赤字なら、法人税は発生しません。でも、消費税は発生するのです。「あなた、これを売った時に取引先から消費税を預かったでしょう、それを払いなさい」というわけです。「いえ、値下げ圧力で儲けなどほとんどなかったのです、消費税なんて、もらったかたちにはなっているけど、原価や人件費を考えたら、実際はもらってないのが現実です」と言い訳しても通りません。「それはあなたの経営手腕の問題だ、預かったことになっているのだからとにかく払いなさい」とつっぱねられます。
斉藤さんは、ヨーロッパの消費税についても研究し、それが輸出助成金の側面をもつという、フランス政府の徴税部門の重鎮の証言を紹介しています。「消費税が上がると輸出業者が儲かる」ことの、まさに動かぬ証拠です。さらには、消費税は正社員を減らして派遣を増やすと節税できるしくみだ、という指摘も、これほど多くの人びとが不安定な雇用と低賃金に苦しんでいる今、きわめて重い。
NHKだけでなく、東京新聞(中日新聞)を除くほぼすべての新聞も、政権党も野党の多くも、そしてもちろん官僚機構も、消費税を上げるしかないと、連日声を張り上げている今、このちいさな本は貴重です。ぜひお読みになることをお薦めします。消費税が、その税率アップが、健全な資本主義ではなく、むくつけの弱肉強食資本主義を完成させる最後の仕上げであるという事実が、これ以上はないほど理解できると思います。
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