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http://www.j-cast.com/2010/11/11080580.html
事業仕分けが民主党政治家の政治ショーであることは、もうみんなに知られてしまった。
例えば、昨2009年の事業仕分けで、当時一参議院議員にすぎなかった蓮舫氏に対して、
「私の話も聞いてください。一方的にただ質問に答えろというのは心外だ」
とのテレビシーンがあったことを覚えているだろうか。国立女性教育会館の神田道子理事長である。これは、事業仕分けの演出としては失敗だろう。彼女が天下り官僚であれば、それこそ絵になったであろうが、そうではなかったのだ。
「法律に基づかない」弱さ露呈
昨年の仕分け会場が、国立印刷局の体育館であったことをひやかして、官僚の間で「昔はボコボコにされるときに体育館の裏にこいというのがあったが、今では体育館の中にこいという」との冗談がでていた。叩き役は政治家で、叩かれ役は官僚という図式が出来ていたからだ。
その仕分けで国立女性教育会館については「大幅に予算を削減する」との判定になった。しかし、5億9000万円とほぼそのまま全額が執行されることが決まり、結局3000万円のカットに終わったのだ。
そもそも行政刷新会議自体が、法律に基づかず閣議決定によって設置された会議である。官僚はこうした形式を重視し、行動する。こうした「会議」の設置根拠は法律である。法律に基づかない会議は、懇談会などの名称であり、そこで大臣らに好きかって放題のことを言わせておくのは、霞が関の常套手段である。できるだけ長期間に懇談会を開いて、その取りまとめにまた時間をかけて、そのうちに大臣が変わるまでタコツボに入ってじっくり待つというのが官僚の基本戦略だ。
ただ、行政刷新会議は、マスコミの注目度もあるので、そんなにのんびりとしていられない。そこで、法律上の位置づけをしないで、根拠を閣議決定にするという事実上の格下げを、民主党は昨年の政権発足当初に官僚側から仕組まれて、それにまんまとはまってしまったのだ。
通例、審議会の根拠は法律であり、しかも、大臣が諮問してそれに答えるという形式になっている。このため、諮問しておきながらその答申を無視できにくい。しかも、審議会のうち特に格の高いものは、政府がその答申を最大限尊重するという規定がある。こうなると、答申どおりにやらないと、政府側に挙証責任が発生するので、ますます答申の拘束力が増す。
私が小泉政権にいたときには、さらに念を入れて、答申が出たときにはそれを閣議決定までした。もちろん、その場合、政府内だけではなく、与党内プロセスを同時にクリアしておく。ここまで手順を踏んでおくと、答申はほぼそのまま法律案や予算案になり、国会に提出され、与党内同意をすでに得ているので、ほとんど国会を通過できるようになっている。
目立ちたがる民主党議員
こうしたプロセスは、手順が重要で、下手に誰かがパフォーマンスをすると、まとまるものもまとまらなくなる。
民主党の事業仕分けをみていると、とても最後の制度改正や予算まで見込んだ行動のようには見えない。たしかに、国民にいろいろな面を見せたという点は評価できるが、最後の結果の方がより重要だ。
しかし、事業仕分けは、政府内における法律上根拠のない参考意見に過ぎないために、なかなか最後までいかない。さらに、本来国会議員は、国会で仕事をするのは当然だ。だから、国会法39条では、国会議員の総理大臣などを除く公務員との兼職を禁止している。事業仕分けにでた国会議員は、本職の国会ではなく、場外の仕分け会場にいたわけであるから、それは本業ではない「ヒマつぶし」と何ら変わらない。しかも、国会が開催中なのだ。
しかし、国会議員は、事業仕分けはテレビに取り上げてくれるので、是非ともでたいという人が多い。ある国会議員は、事業仕分けの魅力はなんといってもテレビに出られることだと白状していた。そうした事情から、今回はやたらと国会議員が多かった。民間の人はほとんどが財務省からの声がかかって参加していたが、ある人は「国会議員が多く、彼らは目立ちたがり屋なので、何でも質問するから、高度な専門的な議論ができなかった」とぼやいていた。事業仕分けが政治ショーなので、民主党議員が出しゃばることは制止できない。
事業仕分けがお笑いになったのは、これまで判定が無視された案件についての再仕分けという話だ。これまでの仕分け判定を閣議決定すればいいのに、再び仕分けしようとは呆れる。また無視されたら再々仕分けを行うのか。
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++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。
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