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今年に入ってから、わが国の領土主権に対して、外国からの圧力を露骨に受けるという問題が表面化している。普天間・辺野古(アメリカ)、尖閣諸島(中国)、北方領土(ロシア)。そして竹島・対馬(韓国)。また、インターネットの普及によって、戦後、アメリカの属国統治の構造の中で、日本の政治・行政がいかにアメリカの意向に沿って歪められてきたかということも明らかになってきた。とくに冷戦終結後は、アメリカから日本政府に毎年突きつけられる「年次改革要望書」に沿って、法律さえも変えられてきたことを、人々は知ることとなった。
かつて、日本には同じく外国の脅威を感じて、国が動いた時期があった。150年前の幕末のことである。徳川幕府の「太平の眠り」を覚ましたのは、浦賀へのペリー来航であった。アメリカだけではない、同じくロシアからも日本は開国の圧力を受け続けていた。さらに、イギリスがアジアの大国・清を一方的に戦争で打ち破り、フランスもアジアへの進出を進めていた。このように、外国から主権を脅かされるという脅威が、日本人のナショナリズムを呼び起こし、やがて倒幕の流れへとつながっていった。
まさに今の日本の状況は、幕末と似てきている。国民は、主権に対する外国からの圧力を感じており、おそらく遠からず「再軍備」の議論が盛り上がってくるものと思われる。しかし、ここは拙速な議論は危うい。私たちはこの国家百年の方向性を決める再軍備論について、感情的にならずに、十分に議論を重ね、決断をしていく必要がある。
いったい何のための再軍備なのか。アメリカの属国としての再軍備なのか、それとも自主独立の国家としての歩みを目指すための再軍備なのか。そこがとても重要である。アメリカとしては、もともとは日本の再軍備を望んでいた。CIA文書によれば、なぜともにCIAのエージェントとした岸信介首相に日米安保改定を強行させたのか、メディア王・正力松太郎に「原子力はクリーンエネルギー」と宣伝させたのか。それは、ソ連や中国の封じ込めのために、西ドイツと同じく、日本にも核ミサイルを配備するためだった。
そして、21世紀の戦略をアメリカがつくっていく中で、当然、アメリカとしては、世界の超大国の立場を中国に渡すわけにはいかないから、いかにして中国を東アジアで封じ込めるか、ということを考えている。つまりは、東アジアにおいては、軍事的な緊張関係が生まれることが望ましい(東アジアにおける新冷戦)。もっとも避けたいことは、東アジアの黄色人種の国家が、人種的にまとまってアメリカに対して、反抗的な態度をとることである。
しかし、だからといって、アメリカが中国と小競り合いを含めた戦争をするわけにはいかない。いまや、世界で最大の米国債保有国は日本と並んで、中国であるからだ。中国が米国債をいっきに売却すれば、アメリカの経済はガタガタになる。つまりは、東アジアにおけるアメリカの属国として、日本が中国と対立する状況というのが、アメリカにとっても国益にかなうわけである。
冷戦下において、ヨーロッパ諸国とソ連を対立させた戦略と同じことを、アメリカは東アジアでやろうとしている。日本は、当時のフランスのように、アメリカの罠に気づいて、自主独立の道を歩むのか、それとも西ドイツのように、なすすべもなく隣国と対立させられてしまうのか。私たちはいずれ、たいへんな局面におかれることになる。
さて、来年の5月に、「日本国憲法の改正手続に関する法律」(国民投票法)が施行される。これにより、マスコミの煽りもあるだろうから、いっきに憲法改正の議論が盛り上がることが目にみえている。今の仙谷民主党は、「第二自民党」と揶揄されるが、本当の怖さは、アメリカの意向に沿った政党が自民党と、民主党をあわせると、衆参の2/3の議席を上回ってしまうことである。つまり、このままでは、アメリカの意向に沿った憲法案での改憲を発議してしまうことだ。
戦後、自民党は、アメリカに押し付けられた現行憲法を屈辱として、自主憲法の制定を目指して結党したわけだが、皮肉にも、戦後、さらにアメリカの属国統治が進んでしまい、日本国憲法の公布から65年経って、またしても、アメリカの意向に沿った改憲が発議されることになるだろう。そして、間違いなく、アメリカの御用メディアであるマスコミは、得意の「世論調査」という実態不明の世論誘導活動を繰り返して、国民に憲法改正の国民投票で、「賛成」を煽るようになる。
ここで、私たち国民は、この議論で流されるのではなく、いったいこの「再軍備」がアメリカのためのものなのか、それとも日本が自主独立の道を歩むためのものなのかを、しっかりと議論しなければいけない。再軍備といったって、実際に、自衛隊の予算は世界の軍隊でもトップクラスであり、装備も最新鋭を揃えているので、すでに予算や装備という面での再軍備はなされている。
問題は、自衛隊がオペレーション上、アメリカとの日米安保を前提になりたっているから、アメリカの傘下から出られないということなのである。ここがおかしい。自衛隊は、日本国民から成る日本人の軍隊なのであるから、守るべきは日本の国民と領土であって、アメリカの国益ではない。この自衛隊を、アメリカから解き放って、日本のための軍隊として再編成できるかが、「再軍備」論の肝になるであろう。
仮に、このままアメリカの意向に沿って、自衛隊が憲法上の制約もとれて、アメリカの思惑で再編されれば、たとえば、イラク戦争や、アフガニスタン戦争のような事態が起これば、日本軍が実戦投入され、多くの若い日本人の命が失われることになる。つまり、イギリスやオーストラリアと同様のことが、日本でも起きるわけだ。
ここで考慮しなければいけないのは、日本はフランスやドイツのようにアメリカと距離を置いているわけではない。日本は、アメリカの属国といえるほどのポジションにいるということだ。そして、少子化の中にあっては、「徴兵制」を真剣に検討される。実際に、自民党は徴兵制さえも、改憲案の中で今、検討をしていることが報道されている。
いずれ憲法改正の話は具体的になってくるだろうが、この時に国民は、この時の「再軍備」が、いったい誰のための再軍備なのかを見極める必要がある。アメリカの思惑に沿ったアメリカのための再軍備なのか。それとも、日本が自主独立の道を歩むための再軍備なのか。戦後、もっとも重要な議論が、もうすぐ行われることになると思う。いや、議論さえされずに、なしくずしで、このままではアメリカの思惑通りになってしまいそうだが。
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