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1169 【加筆あり】2010アメリカ中間選挙ガイド 日本では誰も語らないティーパーティーのリバータリアン派 在ニューヨーク佐藤研一朗研究員筆 2010年11月3日
アメリカ・ニューヨーク州ロチェスターの佐藤研一朗です。今日は11月8日です。冒頭に選挙戦の結果とその後を少し加筆をします。
今回の選挙の結果は、大方の予想どうり、共和党が大きく議席を伸ばすという結果になった。下院では60議席を増やし、過半数218議席を大きく上回る239議席を確保した。上院では、5議席を上積みし、46議席としたが、過半数の50議席までは手が届かなかった。
これから大統領と上院は民主党、下院は共和党というねじれ状態が、少なくとも2年間続く。下の今日のぼやきの記事に書いたように、上院では共和党が、フィリバスター(議事妨害)を行使して、民主党は今までのように政策を進めることが難しくなる。まさにレイム・ダック(足の不自由なアヒルという意味)状態だ。
メディアでは、94年に同様な状態に陥ったクリントン元大統領が、引き合いにだされていた。クリントンは自分の理想よりも、泥臭い政治家として、実利をとりながら共和党と妥協して、96年に再選されている。オバマ大統領は、共和党と取引をしながら、2012年の大統領選挙まで持ち込めるだろうか。
選挙後の、会見でオバマは自分の責任を認めた。アメリカ国民の声に耳を傾け、経済を前にすすめるため、民主党だけでなく、共和党からもいいアイディアがあれば、参考にする語った。もうすぐ期限が切れるブッシュ大統領の減税政策が、これで、おそらく延長される流れになりそうだ。しかし、それ以上は、どうなるかは分からない。
しかし、やはり、今回の選挙の主役は、ティーパーティー(茶会)だった。上院では、ティーパーティーが、推薦した5人の候補が当選し、下院では20〜25人の候補が当選した。この記事でも取り上げた、リバータリアンのランド・ポールが、ケンタッキー州から選出されたことは、大きく取り上げられていた。
彼のようなしっかりと自分の信念を持った小さい政府の擁護者が、上院議員に選ばれたことは、今後大きな意味を持つだろう。彼は少し前までは、タダの一眼科医だった。それがティーパーティーの支援を受け、今では上院議員だ。いくら彼が、ロン・ポールの子供だとしても、これはただごとではない。
評論家の中には、ティーパーティーが右寄り過ぎて、無党派層が民主党に流れ、上院を取ることができなかったという批判がある。しかし、これは的はずれだ。確かに、ネバダ州のクリスティーン・オドネルは、キリスト教原理主義のような発言を連発し上院の議席を逃した。私が住んでいるニューヨーク州の知事選を戦ったカール・パラディー(共和党)は、問題発言やスキャンダルで、政策論争に持ち込めず民主党の候補に大きく票をはなさて惨敗した。
しかし、これはティーパーティーが、どうのこうのというより、候補者の政治家としての資質が、選挙民によって評価されたと、考えるべきだろう。ランド・ポールや、フロリダ州から上院に選出されたマーク・ルビオ(共和党)のように、ある程度、自分の頭で物事をまっすぐ考え、自分の発言をコントロールできる人間でなければ、州全土で闘う上院選や知事選では戦えないのだ。
フロリダの上院選を制したマルコ・ルビオ
ティーパーティーは、まだ始まってから2年ほどしかたっていない。その草の根の政治運動が、今回の選挙で、ここまで影響力を伸ばしたこと自体は、歴史的なことだ。これでティーパーティーは共和党を飲み込んで「小さい政府」というイデオロギーを埋め込もうとするだろう。前で上げたフロリダ州からティーパーティーの支援を受け、上院に選出されたマーク・ルビオは、これは共和党にとって、セカンドチャンスであると、発言している。もし今後、共和党が、真摯に国民の声を受け止めて、行動しなければ、大きなしっぺ返しを受けますよという警告だ。
次期下院議長に就任する共和党のジョン・ベイナー院内総務は、アメリカ国民は小さい政府を望んでいて、政府の支出を減らす努力をすると発言している。共和党は、少なくとも表面的には、この国民からの湧き上がるような怒りの声に耳を傾けなくてはならない。でなければ今度は彼らがワシントンから追い出されるだろう。今、ものすごいポピュリズムの風が、アメリカで吹き荒れている。
ジョン・ベイナー下院院内総務がペロシの次の下院議長に
たしかに、議員は、パブリックサーヴァントであって、国民に雇われた身のはずだ。本来、国民の言うことを聞かなければ、首になるべきだ。しかし、どうも議員になった瞬間に、そのことを忘れる政治家が大半である。これは、どの国でも同じことだ。ある意味、これは民主主義の一つの欠陥である。だからこそ、国民の厳しい監視の目が必要なのである。そう考えればティーパーティー運動は、健全である。
ランド・ポールが、掲げた政策の中に、面白いものがある。法案に投票する前に、法案を実際に読むことを議員に義務付けようというものだ。笑ってしまうような提案だが、実際には、これは深刻な問題なのだ。例えば、今年、成立した健康保険改革法案は、何百ページにも及ぶ。妥協や交渉によって、法案が膨らんでいくのだ。しかし、このような重要法案の最終版のコピーは、採決になる前夜に、二、三冊印刷されるだけなのだ。だから、ほとんどの議員は、法案の内容すらよく分からないで、投票しているのだ。
このような議会の問題は、日本でも同じだ。日本の場合は、党議拘束があり、党に命令に従って投票をしなければいけないので、議員の個人の見解は意味を持たない。議員が法案を読んで、その人なりの意見を持ったとしても、あまり意味が無い。議員を、特権階級でなく、国民に使えるパブリックサーヴァントにするためには、このような議会での問題にも大きくメスを入れる必要がある。
今回のティーパーティーの躍進は、「議員は我々の国民の言うことを聞け」という、ワシントンに、厳しいメッセージを放った。そして、ワシントンから完全に姿を消していた「政府を小さくする」という議題を、お膳に上げた。これで「小さい政府」vs「大きい政府」という、本来のアメリカの二大政党制の構図が、復活するかもしれない。
しかし、オバマも、民主党や共和党の指導者たちも、大手メディア達も、いったい何が起きたのか、まだ、よく分からないというような顔をしている。あんまり長い間、政府の規模を小さくする事など考えていなかったため、何から始めたらいいのか、よく分からないのだ。リベラル・メディアは、実際に政府の支出を削ることなどできやしないと言い張っている。
これから、少なくとも「小さい政府」という議題が、ワシントンで話し合われることになるだろう。今後、ティーパーティーに支援された候補達が、どう行動するか、共和党や民主党が、この事態をどう受け止め動いていくのかは、まだ未知数である。どうせなら、オバマも、ただ妥協するのでなく、自分の理想(おそらくヨーロッパ式の社会民主義)をハッキリと示して、堂々とイデオロギーの論争をしてもらいたものだ。そして結論は、選挙民が決めればいいではないか、と私は思う。
最後に、もう一つ報告しておきたい。このティーパーティーの騒ぎのなかで、まったく注目されていないが、リバータリアン下院議員のロン・ポールが、金融政策副委員会の委員長に指名されることになりそうだ。ロン・ポールは、委員長の力の全て使って、連銀の帳簿を公開させるために全力を上げると意気込んでいる。前回、金融改革法案の中で、うやむやにされてしまった連銀の帳簿公開法が、また、新年早々、議会に提出されるようだ。アメリカでも、グラスノスチの風がこれから大きくなびきそうだ。
佐藤研一朗 拝
(了)
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