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末期的症状の菅政権、しかし後継1番手の前原外相には不安も ロシアにも中国にも霞ヶ関にもなめられ/田崎 史郎
現代ビジネス 11月8日(月)6時5分配信
「この政権は末期的症状だな…」
沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を撮影した映像がインターネット上に流出した政府の失態を見て、公明党幹部はこうつぶやいた。
たしかに、ハノイで中国が日本との首脳会談をドタキャン(10月29日)、ロシア大統領・メドベージェフの国後島訪問(11月1日)、民主党元代表・小沢一郎の衆院政治倫理審査会出席拒否(4日)、政府部内からとみられる尖閣ビデオ流出(5日)―と続くと、中国にもロシアにも小沢にも、そして霞が関にまでもなめられ、政権の体をなしていないとみられてもやむを得ない。
もちろん、この政権は首相・菅直人が退陣を決意しない限り続く。しかし、ここまで国民の信を失うと政権を立て直すのは容易なことではない。このため、民主党内では後継を模索する動きが進行している。
後継の1番手は外相・前原誠司だ。前原は日経新聞・テレビ東京の世論調査(10月29-31日実施)で「今後、日本の政治に影響力を発揮してほしい政治家」のトップに挙げられ、19%を獲得した。2位は幹事長・岡田克也とみんなの党代表・渡辺喜美の9%で、前原は群を抜いている。さまざまな局面で明確なメッセージを発信し続けていることが評価を高めているとみられる。
しかし、「危なっかしい」という声も根強い。昨年9月に国土交通相就任直後、八ツ場ダムの建設中止を打ち出したものの、在任中に解決できなかった。日本航空の再建問題でも当初、「自主再建は十二分に可能」「再建計画は順調に進んでおり、達成できるとの確信」「政府を挙げて再建に力を尽くす」などと言い続けた。しかし、日航は今年1月19日、会社更生法の適用を東京地裁に申請、経営破綻した。
中国漁船衝突事件でも、9月7日の事件発生直後、前原が船長逮捕を主導した。こんな言動を振り返っていると、前原が党代表当時の「偽メール問題」を思い出す。
2006年2月、故永田寿康が衆院予算委員会で、ライブドア社長だった堀江貴文が自民党幹事長・武部勤(当時)二男への送金を指示した電子メールを入手したと追及。その信憑性が疑われても、前原は「確証を得ている」と言い続け、結局代表辞任に追い込まれた。
こうした重要な局面で、前原は直線的に行動しがちだ。ストレートであるがゆえに分かりやすいのだが、思慮に欠けるともいえる。それが「首相にしてはいけない政治家」(民主党幹部)という厳しい評価を生むことになっている。
前原の対抗馬は幹事長・岡田克也。代表、外相を経験し、経歴としては申し分ない。ベテランの元衆院副議長・渡部恒三、元財務相・藤井裕久らが支持している。ところが、昨年5月の代表選を争った際に支持した議員でさえ、「もう二度と支持したくない。つまらないところであまりに敵をつくりすぎている」と見放している。
たとえば、04年6月に党代表だった岡田が民主党議員を率いて韓国を訪問した際のこと。議員が「マイレージを貯めて家族で旅行しよう」と雑談していたら、岡田が寄ってきて「これは党の出張ですからマイレージを付けないでください」と要請したという。
もちろんマイレージを付けるのは褒められた話ではない。しかし、あくまで雑談の中での話題だ。また党の負担になる話でもない。そんなことに対して、岡田は四角四面の態度を取る。
*** 遅れを取り戻した海江田万里 ***
主流派サイドではほかに、官房長官・仙谷由人、仙谷を補佐して政策調整に当たる国家戦略担当相・玄葉光一郎、財務相・野田佳彦、幹事長代理・枝野幸男(元行政刷新担当相)、当選3回で閣僚に抜擢された国土交通相・馬淵澄夫らの名前が挙がる。
これに対して、先の代表選で小沢に投票した非主流派サイドでは、経済財政担当相・海江田万里、前総務相・原口一博、前幹事長代理・細野豪志らが候補者だ。海江田は05年衆院選で落選したが昨年8月に復帰、菅改造内閣で入閣したことで後れを取り戻した。
主流派の人たちも非主流派も、菅政権の衰弱を横目で見ながら、じわじわと「ポスト菅」に向けて動きだしている。(敬称略)
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