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http://diamond.jp/articles/-/9980
先日テレビ番組で公務員制度改革について議論した際、複雑だからやむを得ないのですが、意外と多くの人がその全体像や問題点を正しく理解できていないのでは、と感じました。そこで、今回は公務員制度改革の現状と問題点を簡単に整理してみたいと思います。
霞が関が高齢者で溢れかえる!
民主党はマニフェストで公務員制度改革の遂行を掲げていましたが、現状では完全に骨抜きになった感があります。これまでも、新たに設置された内閣人事局には人事院や総務省が持つ公務員制度関連の権限が移されていない、降格人事の規定も幹部クラスに限定されていて意味がない、などの問題がありましたが、天下り問題への対応は、特にひどいものとなっています。
民主党は、天下りを禁止し、キャリア官僚も定年まで働けるようにする、とマニフェストで約束しました。しかし、それを実行すると、幹部クラスの公務員の数が減らないので、そもそもポストの数が足りないし、各省庁の中には高齢者が溢れかえることになります。
実は民主党は昨年の日本郵政の社長人事の際に、「政治家の口利きで公務員OBが民間企業に行くのは天下りではない」というひどい対応をしたのですが、それだけでは限界があります。そこで政権は、官僚の知恵を借りて、天下りを禁じる代わりに幹部公務員の民間出向を大幅に増やそうと決めました。
しかも、そのためには様々な規定を改正しないといけないのですが、あまり一気にやるとメディアの批判を受けるので、あまり目立たないように徐々に改正を行なってきています。
具体的には以下のとおりです。
6月 退職管理基本方針を改正
・役所の幹部公務員の民間出向を可能にした
・独立行政法人などの幹部ポストは公募制になっているが、幹部公務員が出向で行く場合は公募を経なくていいと決めた人事管理基本方針を改正
・官民交流促進のため、各省庁の人事担当が民間企業と、人事に関する情報交換を積極的に行なえるようにした
7月 退職手当法施行令を改正
・公務員が出向している期間も退職金の対象となる企業や法人を38追加した(日本郵政、NTT東日本など)
8月 人事院規則の改正
・幹部公務員は所属省庁の所管する企業には出向できなかったが、審議官クラスは、所属する局以外が所管する企業には出向できるようにした
・(規則の運用も改正し)民間交流から戻った幹部公務員が、勧奨退職後・自己都合退職後に出向していた企業に就職することを禁じた(=定年退職後ならその企業に就職することを容認した!!)
加えて言えば、6月の退職管理基本方針改正の中で、幹部クラスで出世コースから外れた人用のポストとして、“高位の専門スタッフ職”が創設されました(中堅職員用に作られた専門スタッフ職ポストの幹部版)。
ちなみに、その給与水準については、秋に人事院勧告で決められると言われていましたが、仕事がない窓際幹部に1千万円以上払うことには世論の厳しい批判があるだろうということで、先送りになっています。
要は、公務員の天下りは禁止するけど、代わりに幹部の民間出向を増やすとともに、役所内に新たな幹部用のポストを用意することで、出世コースから外れた幹部公務員も定年まで働けるようにしようとしているのです。
現役公務員の民間出向は
OBの天下りよりもタチが悪い
それでは、この政権の方針の本質的な問題点は何でしょうか。私は3つに集約できるのではないかと思っています。
第一に、現役の公務員のままでの幹部の民間出向は天下りよりもタチが悪いということです。民間企業からすれば、役所を辞めたOBよりも現役の方がよっぽど怖いに決まっています。特に所属する役所が所管する企業に出向できるとなると、尚更です。
第二に、こんなことばかりしていると、優秀な若者は霞ヶ関に集まらなくなります。もう既に10年以上前から、学生の就職活動における霞ヶ関の官庁の人気は落ちています。学生は賢いから、給料は安い、残業は長い、天下りはなくなると分かっているからです。接待疑惑などの霞ヶ関の不祥事が次々に発覚したことも、当然影響しています。
そして、今回の民主党政権の決定は、就職活動の学生の足を更に霞ヶ関から遠のかせるはずです。全員が定年まで勤務し、省内に高位の専門スタッフ職がたくさんいるような環境では、出世のスピードは遅くなるからです。そういう組織には、安定志向の学生ばかり集まるのではないでしょうか。
かつて私が霞ヶ関にいた当時の同期クラスの官僚は、「優秀な学生があまり来なくなり、霞ヶ関の崩壊はもうだいぶ前から始まっている」と自嘲気味に言っていますが、民主党政権はこの事実をもっと深刻に受け取るべきです。
第三に、このやり方で公務員総人件費を2割削減できるのかということです。政府は最近、今年度の国家公務員の給与引き下げ幅を人事院勧告どおり1.5%とすることを決めました。平均給与400万の民間は5.5%下がっているのに、平均給与600万の国家公務員の給与が1.5%しか下がらないこと自体異常ですが、それに加え、高位の専門スタッフ職を増やして人件費がかかるようでは、総人件費の2割削減などとても無理です。
唯一可能な方法は、地方出先機関を地方自治体に吸収合併してもらい、出先機関の職員の人件費分を地方交付税などの形で自治体に払うこと位でしょうが、これは人件費分のコストの名目が変わるだけで、ごまかしに過ぎません
むしろ条件付きで天下りを解禁すべきだ
このように、現在進みつつある民主党政権の公務員制度改革は、“改悪”と断言しても差し支えないと思います。これ以上霞ヶ関を崩壊させて、組合的な安定志向の人ばかりの組織に変えたいのでしょうか。
私は個人的に、今のように幹部の現役出向や高位の専門スタッフ職といった“組織を腐らせる改革”よりも、むしろ天下りを解禁すべきだと思います。
その際重要なのは、絶対にやってはいけないことを明確にすることです。天下り先を見つける際に(閣僚などの政治家も含め)役所が口利きするのは絶対ダメ、天下りした人が役所とのつながりを使って行った先の企業に利益誘導するのも絶対ダメとして、その2つの行為には刑事罰を科せばいいのです。刑事罰を科せば強制捜査できますので、電話の記録なども調べられます。
それ位シンプルな制度にしない限り、上述のような細かい制度改正を繰り返されたら、タチの悪い幹部公務員が美味しい思いをするだけで、霞ヶ関の組織の活力は落ちる一方ではないでしょうか。日本の直面する現状を考えると、霞ヶ関には大事な仕事がたくさん残っているので、優秀な人を集める、組織を活性化することが必要なのです。
民主党はマニフェストで叫んだ“天下りの全廃”という言葉に拘泥し、自縄自縛になっています。他の政策と同様、公務員制度改革についてもマニフェストの見直しが不可欠ではないでしょうか。
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