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「良薬は口に苦く、忠言は耳に逆らう」というが、首相・菅直人は、剛直ではばかることなく直言する「骨鯁(こっこう)の臣」がいないのだろう。だから人に会う度に「情報がない」とぼやくのだ。首相に情報がないとは、中国やロシアが聞いたら喜ぶ“情報”であろう。菅発言は、自分では気づいていないだろうが、官邸で自らを取り巻く者達を否定するものでもある。たしかに情報が命の政界で、他人より首相の情報が遅いのは由々しきことだ。情報がないという情報だけで短命政権を予想できる。首相を取り巻く情報網を再構築しなければとても長続きしまい。
菅は少なくとも2回ぼやいている。先月27日夜、民主党の前参院議長・江田五月らに「官邸にいると情報がなかなか入らない」。2日菅氏支持の民主党議員グループの会合で「首相官邸は情報過疎地帯だ。役所で取りまとめたものしか上がってこない。とにかく、皆さんの情報や意見を遠慮なく私のところに寄せてほしい」。いかに菅へのの情報が枯渇しているかを物語っている。しかし江田や若手議員らに「情報よこせ」と言うのは、八百屋でタコを「よこせ」というような無い物ねだりだ。与太情報ならない方がいい。
菅の発言から見ると、情報戦争に当たって首相秘書官、最近うようよいる官邸官僚、外務省、内閣情報調査室、警察、検察などが機能していないことを物語っている。官邸は端的に言って公家の右往左往だ。外務省は「政治主導」が怖いのか、保身か、なぜか戦後まれな無能ぶりだ。裏情報の内調はいい時と悪い時と極端だが、菅発言から見ればいまはどうも悪い時ということのようだ。警察、検察はもともと伝統的に左翼がいっぱいの民主党は嫌いだ。
「役所で取りまとめたものしか上がってこない」というのは、ありきたりの情報しか来ないと言うことだ。政界にせよマスコミ界にせよ情報戦争の世界は、いかにトップに情報を「上げないか」の世界だ。官邸キャップがバカ記者を相手にしないのは、1から10まで皆報告するから、付き合っていられないのだ。情報の世界はトップに上げる前に精査して研ぎ澄ませて、「これを上げればこう反応する」まで読んだうえで耳に入れるのだ。
過去にそういうことができる首相秘書官が2人いた。1人は佐藤7年政権を支えた楠田實。もう1人は小泉5年政権を支えた飯島勲だ。とりわけ産経新聞のデスクから引き抜かれた楠田はすごかった。記者夜回りで官房長官・愛知 揆一が酔っ払って暴言を吐いたことが、翌朝佐藤の耳に入っていたほどだ。佐藤が「地獄耳」と言われたゆえんである。いずれもマスコミに独自の情報網を抱え、電話一本でその報道機関が抱える最高の政治情報を知る事ができた。もちろん、判断力がなければ与太情報を首相に入れることになる。楠田は「情報はいかに捨てるかだ」と漏らしていたが、その通りであろう。飯島もメディア戦略や情報操作に長けていた。
また民主党政権の自業自得ぶりも明白だ。事務次官会議を廃止し、人事上事務次官を軽視する政策が象徴するものは、役所の情報など不要ということにつながるのだ。情報伝達はトップに向かって上がる毎に研ぎ澄まされていかなければならないのであり、そのトップをないがしろにすれば役所の情報網も“ばらける”。だから普天間問題が起き、戦後最大の対中屈辱外交が起きたのだ。事務次官会議は単なる会議ではない。情報交換、調整の場でもあった。「それは総理の耳に入れておいた方がいい」と他の次官から忠告され、会議後事務次官が首相の部屋を訪れる例など数知れない。その我が国最大・最強の情報ルートを断ち切ったのが民主党政権だ。宝の持ち腐れとはこのことを言う。
菅自身の自業自得もある。情報収集は怒ってはおしまいだ。部下は情報を入れて怒られるなら、入れないでおこうという道を選択する。「ニューヨークでのイラ菅爆発」を諫める秘書官がおらず、逆にそれを東京に伝えたから、拘留期限前の船長釈放という事態へと発展したのだ。尖閣事件では情報の平衡感覚があるものがそばにいたなら、「政治主導があったことは確実にばれます」と諫めるのだろう。自らそういう側近を作らなかったか、作れなかったことが菅の限界なのだろう。要するに狭量なのだ。だいたい首相たるもの「情報がない」などと自らの能力欠如を口にすべきではない。田中角栄ですら「首相になると裸の王様だ。1年たつとキツネが憑(つ)いたようになり、椅子に天地逆に座っていても気づかない」と述べていたが、菅の情報不足ははやくもキツネが憑く前兆かも知れない。
【朝刊トップ3分勝負】
★朝日
オバマ民主大敗 茶会旋風 共和、下院制す
【ワシントン=伊藤宏】米国の上下両院議員、州知事を選ぶ中間選挙が2日投開票され、下院で野党の共和党が過半数を大きく上回り、4年ぶりに多数派を奪還した。民主党は現有から60議席以上の大幅減となる。上院でも共和党が議席を伸ばしたが、民主党は辛うじて過半数を守った。オバマ大統領の政権運営や、2012年の再選戦略に大きな影響を与えるのは確実だ。
★毎日
米中間選挙:オバマ民主党が大敗 下院で60議席以上失う
【ワシントン古本陽荘】米オバマ大統領の就任2年間の政権運営に対する審判となる米中間選挙は2日、投開票され、連邦議会下院(定数435)では、野党の共和党が過半数(218)をはるかに上回り、240議席以上を獲得する見通しの歴史的勝利となった。民主党は60議席以上失い、52議席を失った94年の中間選挙を上回る大敗を喫した。上院(定数100、改選37)では、共和党が現有41議席に5〜8議席上乗せする見通しだが、民主党が過半数51議席を維持することが確定した。
★読売
オバマ民主、大敗 下院過半数割れ
【ワシントン=本間圭一】オバマ米民主党政権の任期前半の評価を問う米中間選挙は2日、全米で投開票が行われ、民主党は下院で60以上の議席を減らして過半数を失い、歴史的大敗を喫した。
上院でかろうじて過半数を維持したが、大幅に議席を減らした。大統領は2年後の次期大統領選での再選に向け、戦略見直しを迫られた。
★産経
オバマ民主民主党、歴史的大敗 共和党が下院で過半数 オバマ氏の再選戦略に影
【ワシントン=佐々木類】オバマ米大統領の政権運営に対する初の審判となる中間選挙は2日夜(日本時間3日)、全米各地で開票が進み、共和党が4年ぶりに下院で過半数を獲得した。上院は民主党がかろうじて多数派を維持したが、米CNNなどによると、下院で60議席以上減らすことは確実となり、クリントン政権下の1994年の中間選挙時に並ぶ歴史的大敗を喫した。オバマ大統領は今後、共和党の意向にも配慮した政権運営を迫られる。
★日経
オバマ民主大敗
下院で与野党逆転、上院は過半数死守
【ワシントン=弟子丸幸子】オバマ米政権への事実上の信任投票となる米中間選挙は2日、投票、即日開票された。政権の経済政策への不満を背景に、下院は野党・共和党が4年ぶりに過半数を奪回。与党・民主党が60議席以上を減らす72年ぶりの歴史的敗北を喫する情勢だ。一方、上院では民主党が過半数を死守した。求心力が低下するオバマ大統領に厳しい前途が待ち受ける。
http://thenagatachou.blog.so-net.ne.jp/
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