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やってみてわかった「検察審査会」の重大欠陥をただすのは誰か
裁判員制度を問う / 2010年11月03日
昨夜の『ニコ生』では、「検察・検察審査会」が話題となった。2時間の討論をしながら、私自身も初めて知ることも多く、驚かされたのは、「東京第5検察審査会」の開催状況・議事録をめぐる国会答弁だった。有田芳生参議院議員が紹介していたが、「記録は存在しましせん」「何回、審査会が開催されたかは承知していません」と答えているという。事務局の「平均年齢」の計算違いで発表が二転三転したことや、最後に帰着した「平均年齢34・55歳」が1回目の議決時と2回目の議決時が同一数値という信じがたい発表にも疑念を抱いたが、「審査会を何回やったかは覚えていません」というのは絶対にウソだし、こんなデタラメ答弁を認めている国会も情けない。
昨夜は、隣に座った平沢勝栄衆議院議員を促して、与野党一致して法務委員会として事実を国会に提出させるべきだと提案した。検察審査会に「強制起訴」という強権が付与されたことで、今回の小沢一朗氏の起訴が決まった。審査会の議決は、2010年10月4日以降の政局に大きな影響を与え、「尖閣問題」と共に1カ月の国会日程が足踏み状態となった。これだけ、大きな波紋をもたらして政治家を「刑事被告人」とした審査会が、会議の開催回数、出席人数、不起訴と決めた検事の発言、補佐人(弁護士)のアドバイスなど一切は「何だったのか記録もないので判りません」というのでは、究極の無責任構造になる。
検察庁は法務省の下に置かれている。従って、捜査・起訴などの検察官の職務も「内閣の行政権の行使」であり、最終的には内閣が責任を負う。だが、検察審査会は内閣から完全に独立した行政委員会であり、その起訴権限を乱用したからと言って内閣が責任を負うことは出来ない。この点について朝日新聞の「私の視点」で、元参議院法制局第3部長だった播磨益夫氏は、「検察審査会の強制起訴議決は、起訴権限の乱用があっても内閣が憲法上の行政責任を取り得ない、取りようのない行政無責任の法制度である。三権分立の枠組みをはみ出し、違憲の疑いが濃厚だ」としているが、鋭い指摘だと思う。
「法改正時は想定していなかった。確かにおかしい点がある。やってみたら、こんなことになった」と平沢氏は語った。率直なところだと思う。ところが、平沢氏も含めて超党派で「終身刑創設」を議論した昨年もそうだったが、国会議員が議員立法で刑事司法の分野に乗り出すことを法務・検察、その背後にいる裁判所も含めた司法官僚は異常に嫌う。法務省が自民党議員たちにささやいたのは、「先生方の問題提起で、無期懲役をもう仮釈放しません。運用で事実上の終身刑に近くしますから」という内容だった。そして、超党派の議員立法提出の動きは収縮していった。
昨夜の「ニコニコ生放送」で語った「検察審査会の透明化」を、法務・検察に委ねてはいけない。国会議員・政治家はもっと働けと言いたい。「検察審査会法」改正をテーマに、緊急に手当てしなければならないことはたくさんある。「何がどう語られたか」を事後検証出来ない審査が、「強制起訴」という権限を持つのはおかしい。検事の話だけ聞いて、被疑者には一度も会わないのもおかしい。
市民の参加と言いながら、「通常では検察が起訴に持ち込めない事件も検察審査会で強制起訴に持ち込んでやる」という検察の思惑が見え隠れするようなことになれば、刑事司法の根幹は崩れてしまう。「疑わしきは法廷に引きずり出せ」ということが日常茶飯事になれば、検査官の起訴のハードルもぐっと下げられることになる。市民にとってもみれば、「マスコミから『疑惑』をつきつけられ、捜査機関から被疑者として捜査対象になれば、『真相は裁判で聞けばいいじゃないか』と刑事被告人となる」というリスクにさらされることになる。
司法制度改革の中で「検察審査会の強制起訴権限付与」はほとんど議論されなかった。議論するとすれば、今しかない。与野党対決の中で、スキャンダル合戦となり「第2、第3の小沢一郎氏」が続出するような展開は、事前には想定外だったと言うが、十分に予想出来るからだ。私に言わせれば、完全無欠とうぬぼれている法務検察・司法官僚は想像力に乏しく、国会議員は彼らの政策を追認する下働き機関だったのがこれまでの姿だ。裁判員制度の改革も、すぐに着手すべきだ。
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