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唐突にTPPなるものが浮上した。これを批准するとやがて域内の関税がゼロとなり、輸出は促進され農産物の国内生産が極めて困難になるらしい。不思議なのは今までほとんど聞いたこともないこのTPPなるものに菅政権は前のめりになりすぐにでも批准しなければならないものらしい。
関税の自由貿易協定 FTA=Free Trade Agreement は世界各地にある。その地域内での貿易障壁を低くし、交易を活発化させ批准国がそれぞれメリットを得ることを目的とする。
欧州にはご存知のとおりEUがある。これは関税のみならず通貨も統合し国家の主権の一部まで共通の規則にまとめ国境の垣根を低くしようとする大胆な統合の試みである。域内にはかなりの経済格差があり統合には国家の主権とからむ困難を極める点もあるが加盟各国の強固な意志と活発な討論により、国を超えた経済単位として認められる存在となっている。これ以上統合が進むかどうかは予断は許さないが、大戦を繰り返してしたヨーロッパ主要国の強い意思、決意は厳然とある。
北米にはNAFTA=North American Free Trade Agreement がある。アメリカとメキシコの経済格差、人件費格差は大きいがそれを利用して生産をメキシコが担い、すぐ近くそれこそ数千キロにわたって国境を接するアメリカとの関係を使って生産流通活動を行うことは両国の利害が一致することも多い。
南米には、メルコスールがありブラジル、アルゼンチンの主要国にウルグアイ、パラグアイ、加えてチャベスのベネズエラも加盟国となったようだ。最近でも何度がインフレで経済破綻した国も多く通貨をドルペッグ制にしたりして共同して経済の安定をはかっている。ブラジルはBRIKSの一角で今後の経済発展が期待されている。他の中南米諸国は準加盟国ということのなっている。
そしてアジア環太平洋地域にはアジア太平洋経済協力機構(APEC)は毎年首脳が集まり、大きく取り上げられ報道されてきた。各国首脳が民族衣装で顔あわせする写真や報道はおなじみだ。すでに20年程度の歴史がもつが加盟各国に関税の規則を強制するものではなかった。
日本付近の動きはどうか、東南アジアには共通の問題に対処する国際組織としてはASEANがあり40年を超える歴史がもち最近ではあのミャンマーまで加わって10カ国となり、民族、言語、宗教(仏教国、イスラム教国、キリスト教国がある)の違いを乗り越え加盟国は緊密な活動を行っている。この地域も最近は発展が著しい。
問題はここからだ。アセアンに加えて3カ国つまり日本、中国、韓国を加えた組織を作ろうとするとオレも加えろとばかり必ずアメリカが反対する。日本も自分の主張がとおり難いためか消極的だ。そのためアメリカが加わりオーストラリア、ニュージーランドが加わったそれこそ環太平洋の組織になってしまう。結局アセアンプラス環太平洋とかでAPECとなんら変わらぬ構成メンバーとなってしまう。東南アジア諸国にしても経済、技術大国の日本との関係は強めたいが、日本との協定には必ずアメリカが口をはさむ。また近年発展著しい中国ともよい関係を持ちたいとも考えている。そのため全体の関税の協定は進ます、個別に2国間でFTAを結ぶケースが出てきた。日本はこの動きにも遅れているとされる。
中ロはかって何度も戦火を交えた国境問題を合意・決着させ上海協力機構を稼動させている、地理的に隣接する中央アジア諸国とも経済関係を強め域内の経済発展を図っている。これも機能しつつある。
麻生元首相が唱えた「自由と繁栄の弧」はこの中ロを除外し、これを取り囲むようにしてインド、ヨーロッパとの関係を強めるかっての冷戦構造を再現するような考え方だったようだ。今の民主党で前原大臣もこの考えかそれとも何も考えずアメリカに盲目的に従っているだけか。後者の可能性が高い。
このような情勢の中で、日本の行動は常に中途半端だった。アメリカの顔色を伺わなければ何も決められない状況が続いた、鳩山前首相は「東アジア共同体」に言及した。これがどの程度の経済の結びつきを意図したものかは不明だがアメリカのご機嫌をそこねたことは間違いないようで志半ばの退陣となった。その後を継いだ今の菅政権は方針を一変させ100%アメリカのいいなりになっていると見ていいだろう。
長い前置きとなって恐縮であるがこのTPPなる協定。他の経済協定をみても分かるように、屋上屋根を重ねるような組織である。関係国も他の国際協定と全くダブっている。現在の正式加盟国は、チリ、ニュージーランド、ブルネイ、シンガポールとのことでいずれも経済規模は小さい。どこから加盟国の関税を劇的に変えるこんな話がでたのか全く理解に苦しむ。今まで真摯な議論など全くなかった。話しあうのならAPECで議題にすればよいことのはずだが。しかしどのFTAでもここまで乱暴な農業分野の協定はない。
アメリカは今後加盟する見通しとのことであるが、日本が義務を負う内容は、農産物を含め関税をゼロにする。日本はその分輸出が有利になるだろうということらしい。
さらに郵政資金の民間運用を進めることや公的機関の保険運用を禁止することまで含まれるらしい。これはいつか聞いたような話だ。そうなにかと瓜二つだ。以前あった日米構造協議からアメリカに要望された年次改革要望書に書かれた内容そっくり同じそのまんまだ。加えて米国産牛肉の輸入条件の緩和まで含まれているらしい。
もはや断定していいだろう。これはTPPに名を借りたアメリカの対日要求そのものだ。しかし冷静に考えてほしい。EU諸国は日本と変わらぬ所得水準の国でコスト的にはいかに不利でも食糧は自給できる水準である。あのイギリスも第一次世界大戦当時食糧の大半を輸入に頼っている弱点をドイツにつかれ商船に対するUボートの攻撃に怯えた。その後必死の努力で食糧の国内生産を進め、市場経済原理の本家のような国ではあるが現在はほぼ自給できる食糧生産を行う国となっている。
アメリカが関税の引き下げを他国に執拗に要求しその裏で自国の食料品に巨額の補助金をつけているという事実は税率の例外品目を減らすこの分野の国際協定でインドもアフリカ諸国も見抜いている。食糧自給率が40%以下などという先進国はシンガポールなどの小規模、都市国家を除いて存在しない。
経済分野の98.5%の農業と関係ない分野が犠牲(?)になっているとの宣伝が行われているが、ドル紙幣を食べるわけにはいかない。人間の腹は紙幣では膨れない。金が全てといってもそれこそ80円の円が78円になるだけで2%以上ドル資産は目減りする。さらに1.5%のシェアを追求してどうするのだ。日本の農業をどうするかは難しい問題だが放棄してさらに自給率を低め工業製品の分野だけを優先するという政策は断じて採るべきでない。
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