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株式日記と経済展望
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経済破局に直面しているアメリカは、日本のことを考えている余裕は
ないのかもしれません。アメリカは撤退するかわかりません。西尾幹二
2010年10月30日 土曜日
◆対談本『尖閣戦争――米中はさみ撃ちにあった日本――』(祥伝社新書)¥760
http://www.nishiokanji.jp/blog/
はじめに
尖閣海域における中国漁船侵犯事件は、中国人船長が処分保留のままに釈放された9月24日に、日本国内の衝撃は最高度に高まりました。船長の拘留がつづく限りさらに必要な「強制的措置」をとると中国側の脅迫が相次ぎ、緊張が高まっていたときに、日本側があっさり屈服したからです。
日本人の大半は敗北感に襲われ、国家の未来に対する不安さえ覚えたほどでした。
間もなく日中政府間に話し合いの雰囲気が少しずつ出て来て、中国側は振り上げた脅迫カードを徐々に取り下げました。いったん幕は引かれ荒立つ波はひとまず収まったかに見えます。このあとすぐに何が起こるかは予断を許しませんが、こうなると何事もなかったかのごとき平穏な顔をしたがるのが世の風潮です。政府は果たすべき責任を司法に押しつけて逃げた卑劣さの口を拭(ぬぐ)い、「大人の対応」(菅首相)であったとか、「しなやかでしたたかな柳腰外交」(仙谷官房長官)であったとか自画自賛する始末です。マスコミの中にも、これを勘違いとして厳しく戒める声もありますが、事を荒立てないで済ませてまあよかったんじゃあないのか、と民主党政府の敗北的政策を評価する向きもないわけではありません。
しかし、常識のある人なら事はそんなに簡単ではないことがわかっているはずです。海上への中国の進出には根の深い背景があり、蚊を追い払うようにすれば片づく一過性のものではなく、中国の挑発は何度もくり返され、今度は軍事的にも倍する構えを具えてやってくるであろうことに、すでに気づいているはずです。
だからひらりとうまく体を躱(かわ)せてよかった、などとホッと安堵していてはだめなのです。中国は必ずまたやって来る。今度来たならどう対応するかに準備おさおさ怠りなく、今のうちにできることからどんどん手を着けておかなければなりません。
沖縄領海内の今回の事件は、明らかに南シナ海への中国の侵犯問題とリンクしています。中国は今年3月、南シナ海全域への中国の支配権の確立を自国にとっての「核心的利益」であると表立って宣言しています。これに対しアメリカは、7月、ASEAN地域フォーラムで、南シナ海を中国の海にはさせないという強い意思表明を行なっています。
2008年以来のアメリカの金融危機と、それに伴うEUと日本の構造的不況は、中国に今まで予想もされていなかった尊大な自信を与えています。アメリカの経済回復の行方と中国の自己誤解からくる逸脱の可能性は、切り離せない関係にあります。世界各国がすでに不調和な中国がかもし出す軋(きし)みに気がついています。その現われが劉暁波(りゅうぎょうは)氏への2010年度ノーベル平和賞授与であったといってよいでしょう。
世界はたしかに中国の異常に気がつきだしていますが、この人口過剰な国の市場への経済的期待から自由である国はほとんどありません。アメリカもEUも日本も例外ではなく、中国を利用し、しかも中国に利用されまいとする神経戦をくりひろげていて、各国も他国のことを考えている余裕がなくなっています。そこに中国の不遜な自己錯覚の生じる所以があります。
アメリカと日本と中国は三角貿易――本書の二章で詳しく分析されます――の関係を結んでいます。これは互いに支配し、支配される関係です。アメリカは中国に支配され、中国を支配しようとしています。その逆も同様です。アメリカは必死です。経済破局に直面しているアメリカは、日本のことを考えている余裕はないのかもしれません。それでも南シナ海を守ると言っています。しかしいつ息切れがして、約束が果たせず、アメリカは撤退するかわかりません。
本書を通じて、私共が声を大にして訴えたテーマは、日本の自助努力ということです。アメリカへの軍事的な依頼心をどう断ち切るかは国民的テーマだと信じます。
私は20年前のソ連の崩壊、冷戦の終焉(しゅうえん)に際し、これからの日本はアメリカと中国に挟撃され、翻弄される時代になるだろうと予想していましたが、ゆっくりとそういう苦い時代が到来したのでした。
尖閣事件は、いよいよ待ったなしの時代に入ったというサインのように思います。
今回対談させていただいた青木直人氏は、もっぱら事実に語らせ、つまらぬ観念に惑わされないリアリストであることで、つねづね敬意を抱いていました。氏は国益を犯す虚偽と不正を許さない理想家でもあります。この対談でも、現実家こそが理想家であることを、いかんなく証して下さいました。ありがとうございます。
平成22年10月15日
西尾幹二
◆尖閣戦争 10月30日 青木直人
http://aoki.trycomp.com/2010/10/post-258.html
『尖閣戦争・米中挟み撃ちにあった日本』(祥伝社新書・760円プラス税)が発売になる。
今回編集を担当していただいた祥伝社の角田出版部長は、私の処女作『日本の中国援助ODA』を世に出していただいた方である。
この人には足を向けて寝れないほどお世話になっている。新人であった私の持込の企画を読むや否や、直ちに、発刊の決定をしていただいた感動はいまでも鮮明である。その角田さんが、締め切りぎりぎりに西尾さんと私が追加した相当量の原稿に手を入れ、驚くほど短期間にまとめあげてくれて、この本が出ることになった。
尖閣事件が起こってから1ヶ月。通常大きな事件があると、すぐに緊急特集本が乱発されるのだが、時間的制約からか、ほぼ例外なく中身の薄い「やっつけ本」になりがちである。だが、この『尖閣戦争』はそうではない。私は自信をもってそう言い切れる。この本は何度も何度も、読んでみて、ほしい。一度読んだだけで、後は読み捨てにされるという中身ではないことを保障したい。
西尾さんは親米派の多い保守言論人のなかで、もっとも早く米中『同盟』関係を経済的側面から指摘してきた方である。私も2003年に、今回と同じ祥伝社から『北朝鮮処分』を上梓、このなかで東アジアにおいて台湾独立阻止と北朝鮮封じ込め、そして日本の核武装反対の3点で、米中両国の協力体制が構築されつつある事実を紹介した。つまり西尾さんも、私も共に、米国と中国が経済の相互依存関係をベースに、東アジアにおいて新しい秩序を求める動きを具体化させてきたと指摘・警告してきたのである。
こんなことは一つ一つのファクトをつなぎ合わせれば、誰でも気づくはずなのだが、『保守』言論人たちはその冷戦構造的なイデオロギーと、彼らに特有な米国に対する過剰な依頼心が障害となり、状況への正確な認識には至らなかったのである。
そのせいか、以前はひどかった。台湾独立の最大の敵は中国と同様に米国の国務省であると書いたせいで、台湾独立派の関係者から頻繁にクレームがあり、私の講演にはいつも独立派の女性活動家が監視するかのように目を光らせていた。
朝鮮半島も同様である。米韓両軍による北朝鮮解放はない。それは米中関係を破壊するリスクを持っているからだとも指摘したが、これにも『米国に対する不信をあおるのか』との批判があった。私はしみじみ思ったものである。
馬鹿につける薬は本当にないのだろうか、と。
あれからどのくらい経ったのだろうか。
李登輝は一線を離れ、陳水扁は逮捕された。そして、独立派は壊滅した。政権は国民党に移動し、中台経済同盟は着々と進行している。他方、独立派勢力は何の総括もせず、ただただ沈黙の中にいるかのようである。
朝鮮半島はどうか。北朝鮮の金正恩の肩書きがなぜ国防委員会委員ではないのか、なぜ軍事委員会なのか、読者はお分かりだろうか。ここが北の将来を占う最大のポイントなのだ。
(詳しくはNLCの配信をお待ちください)
台湾独立壊滅、労働党政権の延命化、そして日本の安倍晋三政権崩壊、田母神追放と核武装化阻止。それらはいずれも米中『同盟』という一本の糸で結ばれている。気づくべきはこのことである。自覚すべきはこの事実である。
およそ政治に関わるものは、主観的願望をもって客観的現実に代えてはならない。いくら、ちりめんじゃこが好物だといっても、鯨ほど大きいとは言うまい。
願望だけでは世の中は変わらないのだ。それは結局のところ、砂上の楼閣にすぎない。
現実を踏まえない「運動論」は時代の追い風が止んだ瞬間、土佐勤皇党ばりの内部不信と内ゲバによって、急速に影響力を喪失していくだろう。
本書の中で指摘してきたテーマは今後の日本の将来の行方を左右する。米国の力の衰退と中国の台頭。このパラダイムシフトを直視すべきなのだ。
台湾、朝鮮、そして尖閣諸島。
米中『同盟』と日米安保の綱引きがいま始まった。日本の中国に対する弱腰が続けば米国の親日派も影響力を失うだろう。尖閣戦争はそのワンステップなのである。
最語に、西尾さんが私に語ってくれた言葉を紹介したい。
『言論人はいま現在の話だけではなく、50年先、100年先の日本の姿を考えながら、発言しなければならない』。
その言葉の意味が十分に伝わる本に仕上がった。
読者の皆さんにお願いがあります。
この本の宣伝を積極的にしていただきたい。ブログの拡散も結構である。
ぜひご協力のほど。
「私たちは冷戦が終わり、平和が来たとばかり思っていた。だが実際はそうではなく、時代の時計の針は日清日露の時代に戻ろうとしている。それは他国に過剰に依存した『平和』についにピリオドが打たれるということなのだ。
求められているのは日本の自立なのである。わたしたちはさらに奮闘しなければならない」(青木直人・本書・あとがき)
(私のコメント)
アメリカ政権内部は権力闘争で外交政策もコロコロと変わります。クリントン国務長官も親中派でしたが、最近では中国に厳しくなってきました。オバマ大統領は外交音痴で演説は上手だがアドリブの効かない見かけだおしの大統領だ。ジョークにしてもスピーチライターが考えたものなのだろう。
オバマ大統領が演説すると来た必ず透明なプロンプターが設置されていますが、政治家なら原稿なしで1時間から2時間の演説など平気でこなす世界の政治家がごろごろいる。ベネズエラのチャベス大統領などは6時間も演説し続けた。プロンプターなしでは演説できない大統領は外交交渉でもアドリブが効かずに失敗する事が多いのではないだろうか?
外交交渉などはトップ会談ともなると一人で対応しなければならないから周囲のサポートが効かない。政治家の資質で外交交渉は左右されるから個人の資質が外交交渉では必要になる。日本の政治家は国際会議になると借りてきた猫のようになってしまうのは、言葉の問題よりも個人の資質の問題だ。
オバマ大統領にしても二年近い予備選挙で戦い抜いてきたのだから無能ではないが、イラク反戦ムードの中で誕生した大統領であり、「チェンジ」はなかなか進まない。その失望から若者のオバマ離れが進み、中間選挙でも民主党は苦戦しているようだ。失業者が10%近くなってはアメリカへの輸出で稼いでいる中国に対する風当たりも激しくなるのは当然だ。
クリントン国務長官などは「風」を察して態度を変えていますが、中間選挙向けのポーズだけなのかもしれない。オバマ政権発足当初は親中派で固められて、まさに米中のG2体制で同盟関係は磐石だった。台湾に対する扱いも韓国に対する扱いも中国に配慮した外交に終始して、台湾の独立派は潰されて韓国の駐留米軍は形だけのものになりつつあった。
日本においても親米の自民党政権は潰されて民主党が政権を取りましたが、これもアメリカの中国に対する配慮からだろう。アメリカの国務省は親中派の牙城であり、アメリカ政府高官は日本を素通りして中国と頻繁に往来した。日本は外交的に孤立して中国に吹きよせられるように親中派の鳩山政権が誕生した。
アメリカ政府にしてみれば、日本など放置していてもどうでもいい存在とみなしていたのだろう。クリントンの外交論文を見ればそれは明らかだ。オバマの演説でも中国の事ばかりで日本が出てくることは希だった。アメリカ政府自身の態度がそうだったからだ。
このような状況になれば、日本は自主独立の道を決断しなければならないのであり、沖縄の普天間基地も日本から出て行ってもらわなければならない、と言う揺さぶりも必要になる。鳩山首相の駐留なき安保はアメリカ離れを模索するものですが、米中がG2だと言っている以上はアメリカとの距離を置く必要がある。
日本が台湾や韓国のような小国なら、日本もノムヒョンのような政権が出来たかと放置も出来たのでしょうが、沖縄の海兵隊基地の海外移転に動き出してアメリカ政府は明らかに狼狽した。自民党政権ではありえない事だったからだ。込むないでは沖縄を中心にして反米軍基地運動が起きて、本土でも米軍基地を受け入れる所がない。つまり海兵隊基地の海外移転は在日米軍基地の全廃につながる。
この事は、日米間よりも韓国や台湾やもとよりASEAN諸国の動揺を招き、アメリカは東アジアからの全面的な撤退に繋がる。オバマ大統領の外交音痴ぶりはG2外交でも証明されましたが、麻生総理や鳩山総理へのそっけない態度は日本を軽視たものだ。つまりそこまで日本は米中同盟に追い詰められたのであり、鳩山総理の普天間基地の見直しは窮鼠猫を噛む思いだったのだろう。
アメリカは中東を関が原と見ているようですが、上杉勢が関東になだれ込んできたら徳川勢はどうなっただろうか? 中国は台湾を中心に太平洋になだれ込もうとしている。台湾が中国の手に落ち、日本がアメリカから離れれば、中東のアメリカ軍は孤立して敗北する。
中国はあと一歩のところで東アジアからアメリカ軍を撤退させる事に失敗した。尖閣諸島はその最前線であり、中国は露骨に本性をむき出してきた。中国国内では過激な愛国反日運動が起きて温家宝は追い詰められている。レアメタル禁輸は全世界を敵に回すものですが、中国の強硬派は、自油貿易で中国が一番利益を得ている事がわかっていないようだ。
西尾氏が書いているように、いずれアメリカは衰退してアジアから撤退して行くだろう。経済状況から見ればそんなに先の話ではない。アメリカが孤立主義を採って本国に閉じこもってしまったら世界はどうなるのだろう。民主主義国家でアメリカがこけたら大国と言えるのは日本しかありませんが、中国の外洋進出を抑えられるのも日本しかない。
問題はアメリカの中国への態度が、いつまた急変して米中同盟は復活するかもしれない。そうなれば日本は断固として在日米軍基地を追い出して自主独立の覚悟を固める覚悟がいるだろう。米中のG2が復活して日本のマネーが米中に吸い取られる状況は避けなければならない。
尖閣問題は中国が仕掛けてきたのですが、アメリカの国務省が背後にいることに気が付くべきだ。台湾の自主独立派を潰したのは米国務省であり、日本の自主独立派を潰そうとしているのも米国務省だ。だから中国に尖閣を仕掛けさせたのだ。
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