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メディアのネガティブキャンペーンで国民に嫌われた小沢一郎氏。そのあおりで、民主党は右派グループの専横状態に。国民のために小沢一郎氏はリベラル派を結集し、新党を結成せよ。(森永卓郎)
2010年 10月26日
■菅内閣の高支持率は国民の小沢嫌いの裏返し
民主党政権になって、鳩山氏・菅氏と、ふたりの総理大臣が登場した。
鳩山氏は普天間問題で迷走し、支持率を決定的に下げてしまい退陣に追い込まれた。
小沢氏・菅氏の間で争われた民主党代表戦を経て誕生した菅政権は、小沢氏の登場をよしとしない世論調査などを背景に、登場時に支持率をV字回復させた。
政権運営のブレと共にジェットコースターのように支持率が乱高下するのもこの政権の特徴だ。実際、2010年9月17日と18日に毎日新聞が行った世論調査で、菅改造内閣の支持率が前回調査よりも16ポイント高い64%と急回復し、ほぼ内閣成立当時の数字に戻っている。
その後尖閣問題のあおりで、支持率は再び急落するが、本稿ではこの9月の数字に焦点を当ててみたい。
■菅内閣自身は決して支持を集めていない
民主党代表選直後の「菅内閣支持率急増」原因は、誰の目にも明らかだ。
菅内閣の高支持率は「国民の小沢嫌い」の裏返しで、あくまで相対的なものに過ぎないのだ。
前述の世論調査では、小沢グループを排除した「菅改造内閣の顔ぶれを評価する」とした国民は60%、「岡田克也氏が幹事長になったこと」を評価する国民が71%、そして「菅総理が再選されたこと」を「良かった」と考える国民に到っては、79%にも達している。
このことからも、「小沢嫌い」=「菅政権消極的支持」であることが読み取れる。
実際、「菅内閣の経済政策」を「評価しない」とした国民が、70%もいる。
この世論調査を素直に読めば、国民は菅総理の経済政策は気に入らないけれど、小沢氏が権力を握らなくて「本当に良かった」と考えていることになる。
それくらい、小沢氏は国民に嫌われていたのだ。
■小沢氏を弁護しただけで批判が集中
実は、私はこの空気を、代表選の最中から肌で感じていた。
「検察が起訴できなかったのだから、小沢氏本人は法律違反をしていない。代表選は菅氏と小沢氏の政策本位で考えるべきだ」と、私はずっと主張してきた。
ところがこうした原稿を書くと(関連記事:冤罪を生みやすい検察の体質。小沢一郎氏の事件も同じ構図ではないのか。今こそ郵便不正事件の教訓を生かせ。)、山ほどの反論メールが寄せられる。
それだけではない。街を歩いていても、何人もの人から声を掛けられる始末だ。
「お前、小沢を応援しているそうだな。小沢は罪人だぞ。罪人を総理にして恥ずかしくないのか」。――おおむね、こんなような言われ方をする。
しかし、こうした「イメージ中心」の小沢批判は危険だと、私は強く感じている。
■強制起訴でネガティブキャンペーンはさらに強化
まず第一に、もちろん小沢氏は罪人などではない。地検は何度も起訴をあきらめている。犯罪事実を立証する証拠がないからだ。
これに対し、国民の小沢嫌い、そしてその反映である大手メディアによるネガティブキャンペーンが、「小沢=罪人」という意識を、繰り返し繰り返し高めている。
これが大衆迎合主義の危険な兆候でなくてなんであろう。
特に検察審査会の議決によって小沢氏が強制起訴されることになってからは「主要新聞すべてが小沢氏の議員辞職を迫る」という、一種異様な状況にまで到っている。
もちろん、ネガティブキャンペーンの一翼を担ったのは、ライバルを蹴落としたい菅総理自身だ。自分は「オープンでクリーンな政治」を目指すと主張して、暗に小沢氏にダーティーなイメージを与えたわけだ。
■政治資金を完全公開してきた小沢氏
しかし、ここで皆さんに問いたいのだが、小沢氏は本当に裏でこそこそとやましい蓄財に励んでいたのだろうか。
事実は逆だったのではないか。
先日、ジャーナリストの上杉隆氏から聞いて驚いた。日本の国会議員で政治資金を1円単位で完全公開しているのは、鈴木宗男氏と小沢一郎氏くらいだというからだ。
今のルールでは「5万円以下の費用」については領収書を公開しなくていいことになっている。小沢氏は、そこまでも含めて政治資金を完全公開している。
普通はこうした人たちは「クリーンな政治家」と呼ぶものではないのか。
■小沢氏の会見は完全にオープンだった
それだけではない。
たとえばネット世論などを見る限り、大手メディアによる「記者クラブ制度」を批判する声が多い。
こうした批判を辿ると、的外れな部分が実際はかなりある。
しかしそれにもかかわらず、小沢氏は、自身の記者会見を「フリーのジャーナリストやネットメディアに対してまで開放する」オープンな政治姿勢を取ってきた。
メディアでは「小沢氏は政治資金について説明責任を果たしていない」とかしましい。しかし実際は、ずっと公開の場で説明を続けてきたのだ。それを知りながら「責任を果たしていない」と主張するメディアのほうがどうかしている。
国会という場で説明責任を果たすべきだという声もあるが、同様に西松建設から献金を受けていた13人の国会議員は誰も説明をしていない。ダブルスタンダードだろう。
■小沢氏は新党を結成すべきだ
ただ、今さら文句を言っても仕方がない。
菅総理の続投は決まり、小沢氏は裁判への対応に追われることになる。そのうえで今後どうするかを考えないといけない段階だ。
私は、このままずっと民主党で冷や飯を食っているよりも、小沢氏は党を割って出て行くべきだと考える。
今政権を実質支配している前原・野田グループは、民主党政権のなかで、最も保守色の濃い政治理念を持っている。政策の考え方は、構造改革路線に非常に近い。
最大勢力の小沢グループが冷遇される一方で、民主党国会議員の6分の1しかいない右派が、党を実質支配しているのだ。
小沢氏がそこに残る意味があるだろうか。
■民主党も自民党も右派一色で染め上がる
一方で、自民党も石原伸晃、小池百合子、石破茂という新三役に世代交代することで、新しい時代に突入している。
この3人が掲げる政策も、構造改革路線と基本的に同じだ。
つまり、このままの状態で国政選挙が行われたとしたら、国民は民主党に投票しようが自民党に投票しようが、「経済政策だけ見れば」構造改革路線を選ぶことになる。
リベラルを主張する人は、社民党や共産党に投票すればいい。ただし、これでは政権は取れない。もちろん社民党の票が伸びれば、自民党であれ民主党であれ、与党も多少はその主張を取り入れるだろう。
しかし安全保障問題まで含め「全面に」というわけにはいかない。そうなると自らの投票が死に票になってしまう危険性がある。
小沢氏が党を割っていれば、こうした票を生かすことにもつながる。
■小沢一郎氏の支持者は確実に存在する
そもそも、小沢氏が全面的に国民の支持を失っていると見るのは、実は早計だ。
新聞の世論調査とは異なるYahoo! JAPAN、ニコニコ動画といったウェブサイトにおける「代表選挙で菅総理と小沢氏のどちらを支持するのか」というネット投票では、小沢氏は実際に7割もの支持を獲得している。
ネットユーザーはテレビだけぼんやり見ている人たちとは異なり、多様な意見に触れ、自分なりの判断を確立している。
テレビの表層的な報道だけでは「小沢はカネに汚いから糾弾すべきだ」というダーティーなイメージが増幅される一方だが、それとは一線を画して小沢氏の政策を評価する層が確実に存在するのだ。
■国民のために「反構造改革路線」結集を
ここまで、小沢氏が無罪であること、そして支持率は大手メディアの世論調査とネットメディアの世論調査では大きな食い違いがあることを述べてきた。
日本の将来を考えるなら、こうした政治家を生かさない手はない。
つまり、国民のために、構造改革路線と対立するリベラルな政策集団が選択肢のひとつとしてあってほしい。
簡単にまとめるなら、小沢氏は自民党左派と大同団結し、新党を結成すべきだ。私はそう考えている。
それに対し、民主党右派は自民党右派と合同すべきだろう。
日本の将来を決めるのは、なんといっても経済政策だ。
その経済政策を争点として2大政党に割れて議論するほうが、国民にとってわかりやすいし、なんといっても日本の将来のためになる。
小沢氏は、今こそ立ち上がるべきだろう。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/sj/20101022/249489/?P=1
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