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検察史上まれな事件を引き起こしておきながら、前特捜部長と元副部長の2人を起訴して、まさかトカゲのしっぽ切りで済ますつもりではあるまい。組織ぐるみの犯罪である以上、総責任者としての検事総長・大林宏の引責辞任がなければ幕引きできる話ではない。折から官房長官・仙谷由人が進退問題に波及する可能性があることを強く示唆しているが、政治の圧力に屈した形の辞任は検察組織に禍根を残す。検察内部からも「続投」批判の声がある。自ら早期に辞任すべきだ。
大阪地検特捜部の押収資料改竄(かいざん)・犯人隠避事件がりつ然とさせるのは、戦前、戦中の思想犯に対する特高の対応とそっくりだからだ。証拠があろうとなかろうと「しょっぴいて」拷問して吐かせる。証拠なんぞはいくらでもねつ造する。大阪地裁は「15年は刑務所に入れてやる」「家族も逮捕する」などの脅迫的取り調べを理由に特捜部検事の作成した供述調書12通を証拠採用しなかった。こうした取り調べは氷山の一角だろう。それに押収資料改竄が加われば特高と変わらない。思想事件と酷似している。検察ファッショそのものでもある。
しかし21日の法相・柳田稔の大林に対する厳重注意と異例の指示には「総長の強いリーダーシップを発揮せよ」という文言が入っており、辞任をうかがわせるものではない。大林自身も記者会見で「失われた検察に対する信頼を一刻も早く回復することが、私に課せられた責務であると考えている。検察の在るべき姿を取り戻すべく、全国の検察庁職員とともに全力を尽くしたい」と責任を取る気配はない。むしろ組織改革に意欲を示しており、「続投」での政治と検察の“出来レース”と“癒着”を感じさせる。さすがに仙谷も世論を気にしてか検事総長の進退問題に関し「(検察改革の方向性が出るに)いたってから、あるいはそこに至る過程で、問題が出てくる可能性は十二分にあると思う」と述べた。
これでは問題の先延ばしになる可能性がある。いつ完了するか分からない組織改革までやっていたら、けじめが付かない。民間でもたとえ就任早々であろうと、トップは責任を取るのが仕事だ。検事総長は捜査に一定の区切りがついた現時点で、潔く辞任すべきだ。というのも菅政権は“検察コントロール”の臭いが芬々(ふんぷん)と漂っているからだ。尖閣事件で検察に外交上の責任を押しつける猿芝居に、検察が応ぜざるを得なかったことが物語るものはなにか。紛れもなく押収資料改竄事件で、政治に“弱み”を握られたからに他ならない。外交問題を地方検事が理由に挙げて船長を釈放するという前代未聞の事件は、政治の支配下に検察が置かれたことを物語っている。もし検事総長が釈放を拒否していたら、柳田は総長辞任へと動いていただろう。
検察とりわけ地検の特質は政界汚職事件への切り込みの鋭さにある。今後折に触れて外交ばかりか政治家の不祥事でも圧力がかからないとは限らない。それどころか菅政権では汚職の摘発ができるかどうかという不信感も生じる。検察が常日頃政治との緊張関係を保つことは不可欠であり、そのトップの進退が政治家に追い詰められたような形で決まれば禍根を残す。検察の内部改革など誰でもできる。問題はけじめだ。政治に検察コントロールの材料を与え続けてはならない。民主党内に検事総長の進退を国会取引の材料にする思惑もあるというが、これこそもってのほかだ。事態は検事総長が早期辞任によって身を処すことしかない。それが証拠改竄の重大性をどこまで認識しているかを示す証左となるのだ。
【朝刊トップ3分勝負】
★朝日
前特捜部長ら起訴 改ざん隠蔽否認のまま
最高検は21日、元主任検事による証拠改ざんを隠した疑いで逮捕した大阪地検特捜部の前部長・大坪弘道容疑者(57)と元副部長・佐賀元明容疑者(49)を、犯人隠避の罪で大阪地裁に起訴した。2人は「元主任検事からは過失と聞いた」と一貫して容疑を否定している。起訴に先立ち法務省は、同日付で2人を懲戒免職処分とした。検察トップの大林宏・検事総長が記者会見で陳謝するとともに、「失われた国民の信頼を一刻も早く回復することが私の責務」と引責辞任は否定した。
★毎日
証拠改ざん:前特捜部長ら2人起訴 犯人隠避罪で最高検
郵便不正事件に絡む証拠改ざん・隠ぺい事件で、最高検は21日、事件を大阪地検に移送したうえで、前特捜部長の大坪弘道(57)、元副部長の佐賀元明(49)両容疑者を、犯人隠避罪で大阪地裁に起訴した。法務省は同日、2人を懲戒免職処分とした。大坪被告と佐賀被告は起訴内容を全面的に否認しているという。大林宏検事総長は会見で「前代未聞の事態に至り、国民の皆様に深くおわびする」と謝罪した。
★読売
前特捜部長ら起訴
大阪地検特捜部による証拠品改ざん・犯人隠避事件で、最高検は21日、特捜部前部長・大坪弘道(57)、元副部長・佐賀元明(49)の両容疑者を犯人隠避罪で大阪地裁に起訴した。2人は容疑を否認しているという
★産経
特捜部長ら起訴 「方と証拠」回帰へ急務
大阪地検特捜部の押収資料改ざん・犯人隠蔽事件で最高検は21日前部長の大坪弘道容疑者(57)と、元副部長・佐賀元明両容疑者(49)を大阪地裁に起訴した。
★日経
日・ベトナム、レアアース共同開発
両首相が合意へ 住商など対日輸出を計画
菅直人首相とベトナムのズン首相は31日、ハノイで会談し、レアアース(希土類)の共同開発で合意する。日本は官民一体で探査や製錬技術を供与、開発を後押しする。豊田通商と双日が共同で取り組む開発に加え、新規参入する住友商事など企業進出が加速する見通し。レアアースは世界生産量の9割超を中国が占めており、一国依存脱却の足がかりとなる。
http://thenagatachou.blog.so-net.ne.jp/2010-10-22
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