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某週刊誌の編集者が「菅直人の写真を表紙に使ったら、売り上げが惨憺(さんたん)たるもの」と愚痴をこぼす。菅首相には“週刊誌的な人気”がないらしい。
「『小沢一郎』は売れる。徹底的にたたいても売れる。『小沢さん以外、日本を救う政治家はいない!』と褒めちぎっても売れる。週刊誌は『小沢一郎』でメシを食っているんですよ」
「週刊現代」「週刊文春」「週刊新潮」は小沢追及派。「週刊朝日」は小沢擁護派? 「週刊ポスト」に至っては「『小沢嫌い』ここに極まれり!」「人民裁判と暗黒ニッポン」と過激な見出しで小沢さんを応援する。週刊誌にとって、神さま、仏さま、小沢さま……である。
だから、小沢さんは不公平な懲罰?の対象になる。例えば鳩山由紀夫前首相は資金管理団体の偽装献金が発覚しても「政策秘書がやったこと」で逃げ切った。鳩山さんの言う通り、問題の政策秘書、芳賀大輔氏が勝手に偽装していたというのなら、即刻クビにするのが当然だが、鳩山さんは首相を辞めた直後の6月9日、ひそかに?公民権停止3年の芳賀さんを政策秘書に戻している。そんな宇宙人の「うそつき」をメディアは追及しない。批判したって売れないからだ。
褒めても、けなしても、売れるのは「小沢一郎」である。
資金管理団体「陸山会」の土地取引事件で、東京第5検察審査会が強制的に起訴すべきだと結論づけたのも、まず「小沢」ありきの司法のポピュリズム化である。
国会はまたぞろ「小沢喚問」で揺れる。いくら引っ張り出しても、小沢さんは「本当のこと」を言うはずもないのに……これは、複雑な政治的争点を単純化して、いたずらに民衆の人気取りに終始する「衆愚政治」の典型である。ともかく、良くも悪くも小沢さんは千両役者である。
江戸で初めて千両の出演料を取ったのは、元禄年間(1688〜1704年)、上方から招かれた立女形(たておやま)の初代・芳沢あやめ。続いて、誇張した豪快な演出の「荒事」を編み出した初代・市川団十郎の800両。二代目団十郎は1000両。上方へ招かれた時2000両を要求した。1両を10万円で計算すれば1000両は1億円である。
さて平成の荒事師・小沢さんの経済効果は果たしてどのくらい?
それにしても……メディアは「小沢」「小沢」で浮かれていてよいのかしら。(専門編集委員)
毎日新聞 2010年10月19日 東京夕刊
http://mainichi.jp/select/opinion/maki/news/20101019dde012070045000c.html
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