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2010年10月18日 (月曜日)
安倍晋三訪米記
日本の元首相である自民党の安倍晋三氏が14日から訪米している。
同氏の訪米目的について自民党は8日、「米軍普天間飛行場の移設問題をめぐって日米関係が冷え込む中、米上院議員らとの意見交換を通して日米同盟の再構築を主張する同党の立場を訴えるため」と発表しているが、ここでいう「日米同盟」とは何を指すのか。
まず、米国防総省で今日18日に開かれたという会談の内容を伝える記事をみてみよう。
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(引用はじめ)
尖閣、占領されても安保適用
自民党の安倍晋三元首相らは18日、ワシントン近郊の国防総省でフロノイ次官(政策担当)、グレグソン次官補(アジア・太平洋担当)と会談した。
会談に同席した小野寺五典党外交部会長が、尖閣諸島の領有権をめぐって日中間で武力紛争が発生し、同諸島が中国に占領された場合の米国の対応について尋ねたのに対し、フロノイ次官は「(米国の対日防衛義務を定めた)日米安全保障条約第5条により日本を助ける」と説明した。
米政府は、安保条約は日本の施政権下にある領域に適用されるとの立場だが、尖閣諸島が中国に占領・掌握されても、そうした考え方は変わらないとの認識を示したものだ。
また、グレグソン次官補は、中国が将来的に複数の空母を保有する見通しであることについて「脅威の始まりになる」と語った。【ワシントン時事】
(引用おわり)
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さっと読めば、安保第5条に基づいてアメリカは日本を助けるんだ、という印象を与える書き方となっているが、ここで使われている「助ける」が、必ずしも武力行使を指すものとは限らないことに注意しなければならない。
米政府はこれまで、「安保によると適用範囲」と述べるにとどめ、武力行使の可能性について踏み込んだ発言を一貫して避けてきていることから、「日本と中国との対話を促す」という意味で「助ける」という言い方をしたと解釈するのが自然だろう。
もしかしたら、血の気の多いグレグソン次官補あたりが個人的見解としてオフレコベースで踏み込んだ発言をした可能性はありうるが、いずれにしても彼らより格が上の高官らがすでに何度も公式見解を発表しており、またそうした状況で彼らが米政府を代表する立場にはなりえない。
日本メディアの記事には米側に直接、発言の内容を確かめたと思われるくだりがないため、こうした記事だけで真相の判断ができないのも残念だ。
しかし、この記事を読むだけでも、今回、安倍氏がアメリカで訴えたかった日米同盟とは対中政策における日米軍事同盟なのだな、ということがまずわかる。
それでは安倍氏がアメリカでいわんとしているメッセージとは一体なんなのか。ということで、もう一つ、記事をみてみよう。
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(引用はじめ)
実践伴う対中メッセージ必要
集団的自衛権、行使容認を主張―安倍氏
訪米中の自民党の安倍晋三元首相は15日、ワシントン市内で講演し、東シナ海での中国の海洋進出の動きに関し、「実践を伴う断固としたメッセージを送らなければならない」と述べた。具体的には、集団的自衛権行使を禁じた憲法解釈の変更や、武器輸出三原則の見直しを主張した。
安倍氏はこの後、国務省でスタインバーグ副長官と会談。尖閣諸島の領有権をめぐり日中間で武力紛争が発生した場合の対応について、同副長官は「(米国の対日防衛義務を定めた)日米安全保障条約第5条が適用される」と語った。
安倍氏はウェッブ上院外交委員会東アジア・太平洋小委員長とも会談し、日米両政府が中国の動向について情報交換や戦略の共有を図ることが重要との認識で一致。ウェッブ氏は尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で逮捕した船長の釈放について「間違った判断だった」と指摘した。【ワシントン時事】
(引用おわり)
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そう、記事の見出しに要約されているように、安倍氏がアメリカに伝えたかったのは、集団的自衛権行使と武器輸出三原則の2つの見直しを自分が日本で強く主張していますよ、ということなのである。
安倍氏の講演内容は、主催の米シンクタンク、ハドソン研究所のホームページにもアップされているから、興味のある方はそちらを参照していただくとして、簡単に講演の流れをざっと説明すると、まず、日本がこれまで保ってきた経済大国2位の座を中国に抜かれたことについて触れ、「日本にはまだ挽回する手段がある。それを説明するために私は今回アメリカにやってきた」と話し、自身が首相を務めていた頃に「イノベーション25」という経済政策で経済成長を達成した、などと力説。
これまではアジア諸国の代表格といえば日本だったのに、中国の台頭でG7やG8では日本の影がすっかり薄くなってしまい、「尖閣事件では日本は明らかに間違ったメッセージを中国に送ってしまった」と菅政権を厳しく批判。そのうえで、中国の脅威はアジア諸国全体の信用を失わせることにつながりかねないと中国脅威論を展開し、中国をおさえるためには自分がこれまで主張してきた武器輸出三原則の見直しに集団的自衛権行使の見直しが不可欠。最近になって、民主党もやっとその必要性に気づき始めた、といった感じで話を展開し、「日本では自分の主張に賛同する閣僚や議員は多い。だから日本は必ず復興する」と結んでいるのである。
しかも、冷戦時代の米国民の英雄としてレーガンを持ち出しながら、「米ソ冷戦は終焉したが、アジアにおける冷戦は進行している。レーガン元大統領は米国民に希望を与えた。日本の復興に向け、私も決して希望を捨てない」なんて言い方もしているほどだ。
「自分の主張に賛同する者は多い」と安倍氏はアメリカで主張するが、自民党の現状はどうなっているのか。
資金難で国会近くに構えていた派閥事務所を3月に閉鎖した山崎派には解散論、古賀派も会長が辞意を漏らすなど転機を迎えているといわれているし、森、小泉、安倍、福田と4代続けて首相を輩出した最大派閥の町村派も実質的リーダーの森元首相が退会届を出す騒ぎだそうで、どこも落日といった雰囲気が強い。
野党になってまだ1年しか経っていないというのに、資金の配分機能の低下が影響したのか、派閥分裂は加速するばかりで、派閥というよりも単なる意見交換の場といった様相になりつつあるようだ。
そんな状況下で、尖閣事件が発生してからこれまでの安倍氏の足跡をたどると、民主党の対中政策を批判することにより、自民党再生を図ろうとしたのではないかと思えてくる。
「日中悪化は民主党が招いた危機。民主党はまったく国際政治を理解していない」「船長釈放は極めて愚かな判断。中国の圧力に政治が屈した」などと「尖閣事件は民主党の外交的敗北」こうした主張を展開してきた安部氏は、9月27日に野党各党と開いた国対委員長会談では、「外交の大失態だ。早く政権を自民党に引き渡すべきだ」と政府批判を強め、さらに、安倍氏が会長を務める超党派の神道政治連盟国会議員懇談会は緊急総会で、内閣総辞職を求める声明を発表し、また、同じく安倍氏が会長の超党派保守系議員らのグループ、創生日本も日本の国益、信頼、尊厳を大きく損ねたとして「菅政権を断固とした決意を持って打倒する」と宣言している。
民主党政権には日本はまかせていられない、自民党の出番が到来した、といいたいのだろう。
経済大国であるはずの一国の元首相が外国に乗り込み、自国の政策批判を展開する。こうした安倍氏の言動を米側はどう受け止められているのだろう。
安倍元首相の訪米に関して日本のメディアが詳細を報じているのとは対照的に、安倍元首相の訪米を報じたのは現時点ではワシントンポスト紙のみ。しかも内容は、日本文化教育に力を入れている米公立小学校を訪問した、というものだ。
米メディアの代わりに安部氏の訪米行動を注視しているのは、韓国や香港やタイなどアジアのメディアのようで、「日本の保守派元首相が米で中国の脅威について主張」と各紙が報じている。
15日に米国務省を訪れた安倍氏らを迎え入れたスタインバーグ副長官が会談に費やした時間はたったの15分。その短さに米政府の自民党に対する評価が現れているといえるのではないか。
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