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《公の場で中国を批判する発言は厳に慎め》
那覇地検が9月24日、尖閣諸島沖でおきた中国漁船衝突事件で、逮捕した中国人船長の釈放を発表した直後、全国の自衛隊部隊に指示が下った。防衛相、北沢俊美は防衛省幹部らに、年末に策定する「防衛計画の大綱」に盛り込む予定の離島防衛強化について尖閣問題に絡めて議論しないよう伝えてもいる。
むろん、いたずらに相手を刺激することはないが、民主党政権は現実を直視するのを避けているようにみえる。しかし、現場の自衛官たちは迫り来る中国の姿を肌で感じているのだ。
今月6日、東シナ海にある平湖(中国名)ガス田付近で、日中中間線をはさんで海上自衛隊の護衛艦と中国海軍のフリゲート艦が対(たい)峙(じ)した。
「現場」にいたのは2隻だけではなく、米海軍音響測定艦インペッカブルの姿もあった。同艦は潜水艦のスクリュー音を収集することを主な任務にしており、いまでは「対中監視に特化した艦艇」(防衛省幹部)といえる。2009年3月、南シナ海の公海で漁船を含む中国側船舶に包囲されたこともあった。
先月中旬には青森県三沢基地に米空軍最大の爆撃機B52Hが降り立った。同下旬には神奈川県横須賀基地に米海軍最大級の排水量を誇るオハイオ級原子力潜水艦ミシガンが入港した。
これらの米軍の行動は、尖閣事件で一段とはっきりした中国の脅威に対して、米国が日本との協力関係を強化しようとしていることの証左である。米国務長官、ヒラリー・クリントンが先月の外相、前原誠司との会談で、日本防衛義務を定めた日米安保条約第5条の尖閣諸島への「適用」を明言したのも同じ理屈だ。
もっとも、拓殖大大学院教授の森本敏は日本に楽観論が広まるのを戒める。
「適用範囲と言っただけで、発動するか否かは日本の覚悟次第だ」
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覚悟を示すとは、「体を張る腹づもり」(前原)などと、ただ空手形を切ることではない。
前防衛政務官、長島昭久は中国が尖閣問題で攻勢を強めている理由について「海洋戦略の一環だ」と指摘する。尖閣を手中に収めれば、沖縄からフィリピンに至る第1列島線を越えて、米空母機動部隊が中国側に進入するのを阻止する「接近阻止(アンチアクセス)」戦略を確かなものにできるからだ。中国の戦略を踏まえれば対抗策は自明だ。日米同盟を基軸にした離島防衛の強化にほかならない。防衛上の空白地域となっている与那国島などの先島諸島への自衛隊配備について検討を加速させる必要がある。
海上民兵の乗った「漁船」の監視には、大型無人偵察機グローバルホークの導入も有効だ。米空軍は9月、西太平洋地域では初めて同機をグアムに配備した。長島は日米の情報共有強化という点でも導入には効用があると説明する。
防衛研究所所員の斉藤良は「中国が北米、南米の『市場』にアクセスするために通る必要がある対馬海峡や薩南諸島、琉球諸島に存在する海峡」に注目する。沖縄本島と宮古島の間の「宮古海峡」などでの日米共同演習は、中国に対する「接近阻止」戦略となるわけだ。
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「大統領に何か手みやげはあるのか」
先月、来日した米元国防副次官、リチャード・ローレスは民主党議員と都内で会った際、11月の米大統領、バラク・オバマの訪日に話が及ぶと、詰問口調になった。ローレスはブッシュ前政権下で在日米軍再編の米側責任者を務め、鳩山由紀夫前政権発足後「同盟関係が脆(ぜい)弱(じゃく)になっている」と警鐘を鳴らしてきた。
鳩山はインド洋での海上自衛隊による給油活動を中止。代わりに5年で50億ドル(約4千億円)のアフガニスタン復興支援を決めた。カネで済ます「小切手外交」の復活だ。対照的に韓国は7月、約2年半ぶりにアフガンへの再派兵に踏み切った。ローレスには日本が自ら汗を流すことなく、米国に依存しようとしているようにみえる。昨秋、ローレスらがまとめた報告書「同盟が消える日」(邦題)は日本の主体性の欠如を厳しく問うている。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜(ぎ)野(の)湾(わん)市)の移設問題で広げた同盟の傷口を放置し、対中戦略でも無為無策を続ければ、日本は米国から「三くだり半」を突きつけられかねない。(敬称略)
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この連載は船津寛、佐々木美恵、半沢尚久、尾崎良樹が担当しました。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101016/plc1010162219017-n1.htm
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