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「週刊ポスト」10.15日号
平成22年10月4日(月)発売
小学館 (通知)
これが軍事力なき「平和ボケ国家」の現実だ
アメリカに見捨てられた仙谷・前原のポチ外交
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別に蓮肪大臣をかばうつもりもないが、尖闇問題を「領土問題」というかどうかなど、もはや言葉の綾にすぎない。むしろ重大なのは、いま日本が問われているのが「主権問題」だという厳しい認識である。尖闇に日本の主権が及ぶかどうか、ではない。菅内閣が、中国、アメリカ、ロシアなどの大国に対して、主権国家の尊厳を示しているのか。翻って、国土と国民を守るという国家の最重要課題を扱う統治権を発揮しているのか。その両面で、この政権は国家を担う姿をしていない。
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(写真)米政府は日本の外交担当者をタカでもハトでもなく「カモ」としか見ていない
「国内法」がもたらす危機
尾籠(びろう)な言い方で申し訳ないが、菅政権の首脳たちを見ていると、虚勢を張る、言を弄することには長けていても、自分の尻も拭けない卑怯者ばかりでうんざりする。
もちろん、最初に批判されるべきは菅直人・首相である。領海侵犯した中国船の船長を、怒る中国にピピッて釈放しておきながら、「検寮が判断した」「証拠ビデオは見ていない」と逃げ回り、「弱腰だ」と追及を受けると、今度は「国内法に基づく手続きへの中国の反応は問題だ」と豹変する。
どうせ誰が書いた答弁書を棒読みしているだけだから、自分が何をいっているのか考えたこともないのだろうが、この言葉が政権の外交オンチぶりを象徴していることに、彼らは気づかない。日中関係筋が興味深い指摘をする。
「首相はじめ、政権中枢は口を揃えて『国内法に基づく対処だから中国の抗議は不当』というが、実はこれが問題の発端だった。どちらに理があるかは別として、尖閣諸島は中国も領有権を主張している場所。だから、日本が『国内法で処理する』といっているのを見逃せば、主権を放棄したことになる。あちらの視点でいえば、『中国の領土に日本の船が侵入し、同胞を拉致した』という解釈になるから、『謝罪と賠償を求める』という姿勢は当然になる」
では、どうすれば良かったかというのは難しい問題だが、こういう主権の対立が起きるからこそ、外交には「外交用語」があり、国境紛争が存在する地域では、多くの国同士が外交ルートで「あいまいな状態」を認め合い、直接火花が散らないように水面下でバランスを取り続けているのだ。
尖閣周辺でも、日本はこれまで中国船を追い払うことは日常茶飯事でも、「国内法に則って逮捕して起訴する」という対応は避けてきた。それを弱腰と批判することは簡単だが、少なくとも尖閤での日本の主権は守られてきたのである。国内には「毅然と対応している」といい、中国とは外交ルートを通じて互いに暴発しないよう関係を維持する、という自民党的なダブルスタンダードなのだが、民主党の素人大臣たちは、それすら知らなかったのだ。
岡田克也・幹事長などはもはや評論家≠ナある。
「謝罪とか賠償とか、まったく納得いかない話だ」と感想≠述べているが、政府が表立っては公式見解しかいえない時こそ、党が主導して議員外交を展開すべきなのに、他人事のようである。この人も尻の拭けない無責任体質だ。
問題がこじれた9月29日になって、ようやく細野蒙志・前幹事長代理が訪中して事態打開に動き、拘束されていたフジタ社員のうち3人が釈放されたが、あまりに遅すぎる。この真相は後事で詳述する。
中国はそれより早く動いた。訪中していたロシアのメドページエフ大統領に誘いをかけ、「北方領土を訪問したい」という発言を引き出した。北方領土は、まさに外交ルートで「あいまいな状態」に維持している問題だ。ロシアにしてみれば、自国の領土に大統領が訪問することに何の問題もない。が、日本がそれを放置すればロシアの主権を認めることになるから、必ず抗議しなければならない。あるいは、訪問をやめてもらうために「お土産」を差し出す必要が生じる。
さすがに中国の外交はしたたかだ。日本人として「眠れる獅子」などと持ちあげたくはないが、せっかく寝ていてくれた中国を起こしたことで、日本外交は窮地に立たされた。恐らく今度は韓国に呼びかけて、「中韓で竹島開発」などと言い出すだろう。
(写真)大相撲秋場所の表彰式に現われた菅首相には「売国奴」「辞めろ」の野次か飛んだ
前原「蛮勇外交」の大失敗
船長釈放を決断した「首相」は仙谷由人・官房長官である。菅首相の外遊中、首相臨時代理としてこの国難に対処した。
ただし、「検察が決めた」と逃げているのは菅氏と同じ。この真相は、なるほど「官僚主導内閣」らしい。
「ある意味では、決定は検察がしたといえる。菅首相、仙谷長官が船長釈放を望んだのは間違いないが、検察としては指揮権発動で釈放を決めてもらいたくなかった。そうでなくとも証拠改改竄問題で批判が高まるなか、抜かずの宝刀≠フ指揮権を許せば、これを機に政治の介入を招くという危機感が上層部に強かった。
だから大林宏・検事総長が法務省を通じて仙谷長官に対し、検察判断で船長を釈放するというメッセージを伝えた」(検察OB)
仙谷氏は「総理にも前原にも傷はつけない。俺が泥を被る」などとかッコつけていたようだが、真相は検察に泥を被らせただけ。「俺のクビでも腹でも切る」といっておきながら、気に入らない人間のクビや腹を切りまくったデタラメ人事と同様の三文芝居である。この人も自分の尻を他人に拭かせてご満悦である。
菅首相は、22日の訪米前から「早く釈放できないか」と焦っていたと報じられたが、仙谷氏が決断したきっかけは、子分である前原誠司・外相からのホットラインだったという。
「前原さんは総理より1日早くアメリカ入りし、この間題で協力を取り付けようとした。が、アメリカの態度は早く収拾しろ≠ニいうもので、23日のクリントン国務長官との会談でも、中国との仲介はしてもらえないことがはっきりした。
その時点で前原さんは釈放しかないと観念し、仙谷長官に『アメリカも釈放しろとの意向です』と伝えた」(官邸スタッフ)
前原氏は、前章で述べたような「国内法と外交ルートの使い分け」がわからない素人大臣である。内閣改造前の9月8日に国土交通相の権力を振り回して船長を逮捕させたのが、ただの、「蛮勇」にすぎなかったことを認めた敗北宣言だ。
蛮勇といえば、この機に乗じて政府を「弱腰」と批判している自民党の蛮勇派≠烽ンっともない。安倍晋三、麻生太郎の両元首相らは、ここぞとばかりにタカ派発言を繰り返して国民を扇動しているが、では自分たちの政権では何をやってきたのか。中国から何か譲歩を引き出したのか。その「強気外交」で北方領土交渉は進んだのか。
実際には、安倍政権も麻生政権も、あるいは小泉政権も、アメリカに土下座して、その威を借りて中国や韓国に居丈高に振る舞い、結果として周辺国との関係を悪化させただけなのだ。
まさに蛮勇で、これを「強い外交」とはいわない。
前原外相は、その小泉、安倍、麻生氏らと人脈を共有する民主党タカ派だ。アメリカ通のような顔をしているが、付き合いがあるのは小泉以来の政権が結びついたネオコン派だけで、すでに米共和党内でも主流を去った人たちだ。もとより米民主党へのパイプなどない。大新聞やテレビもネオコン派ばかりネタ元にしているから、「米国は前原外相を歓迎」と報じているが、事実は違う。
「現在のアメリカ外交は、クリントン国務長官やジョーンズ国家安全保障担当補佐官らを中心とするリベラルエリートが握っており、『同盟国と手を組んで敵対国家と対時する』というネオコン路線は完全に時代遅れ。だから前原外相はクリントン長官にしがみつこうとしたが、突き放されてしまった」(在米国連関係者)
実は、日本でメディアや政府関係者が「アメリカが助けてくれる」」と煽ったことは真っ赤な嘘だった。
「尖閣は守らない」小泉合意
前原氏はクリントン長官との会合で、長官が、「尖閣諸島には日米安保条約が適用される」と述べたと説明し、それを外交成果だと強調した。
嘘もいいところである。この発言は従来からアメリカが踏襲してきた見解にすぎない。今にも領土紛争が起きかねないタイミングで同盟国が助けを求めているのに、従来の見解を繰り返すだけだったことは、むしろアメリカに見捨てられた外交失点である。
現に、日本で「クリントンが尖闇を守るといった」という報道が広がると、ホワイトハウスはすぐさま否定した。9月23日、ベイダー大統領特別補佐官は記者会見でこう語っている。
「日本側で報じられている話は、アメリカの従来の立場をいっているだけだ。アメリカは、尖閣諸島が中国の領土か、日本の領土か、どちらの立場もとらない。
日米安保条約は、日本が統治するすべての地域を対象にする。尖閣は日本が統治している。それだけだ」
つまり、「尖闇がどちらの領土かは知らないが、日本が統治しているかぎりは安保の対象。そうでなくなれば対象ではない」という意味なのだ。
ならば日本が統治しているかぎりは米軍が守ってくれるのかというと、これも違う。それこそが日本政府が国民に知られたくない対米ポチ外交の核心である。
小泉政権末期の05年、日米は外相・防衛相会合(2+2)で「日米同盟 未来のための変革と再編」と題する合意文書を交わした。
その第2章「役割・任務・能力」に問題がある。
〈日本は、弾道ミサイル攻撃やゲリラ、特殊部隊による攻撃、島嶼部への侵略といった、新たな脅威や多様な事態への対処を含めて、自らを防衛し、周辺事態に対応する)
つまり、尖閣諸島などの「島嶼部」の防衛は、在日米軍ではなく自衛隊の役割と定めたのである。「米国は歴史的に他国の領土紛争には関与しない立場を取っている。最大の同盟国イギリスとアルゼンチンが領土問題で戦ったフォークランド紛争でさえイギリスを支援しなかった。尖閣についても、今年3月に東アジア担当のセドニ−米国防次官補代理が北京で、『尖閣諸島または釣魚島の最終的な主権の問題には立ち入らない。これは米国の一貫した立場だ』と言明している」(日米外交筋)
防衛通を自任する前原氏が知らないはずはない。むしろ米軍が尖閣を防衛する義務を負わないことを百も承知で、クリントン長官に「安保条約の範囲内」といわせたのだ。つまり、取り決め通り、尖闇は自衛隊でよろしく≠ニいわせ、それを国内向けには「アメリカが守ってくれる」と誤解させたのではないのか。
アメリカが「日本防衛」に重きを置いていないことは、この日中緊迫の時期に「米中軍事交流」再開を決めたことでもわかる。アメリカの台湾への武器輸出を機に停止していた交流の再開は、もちろん中国からの誘いに応じたものである。
「アメリカにとって、経済だけでなく軍事パートナーとしても日本より中国が重要だ。かつて『米中で太平洋を分割統治』という話も出たが、いまや現実味を帯びている。制海権については、海運や中東対応で焦点となる南シナ海が大事で、尖闇を含む東シナ海では中国と揉め事は起こしたくない」(前出・国連関係者)
土下座してすり寄るだけのポチ外交がどんな.結果を招くかは、それこそ小泉、安倍、麻生などの歴代政権が教えている。現に、アメリカと対等な関係を目指した鳩山・小沢体制が崩れて以降、日本はかつてないほどアメリカのいいなりだ。
アメリカが評価≠オているという前原氏に対し、米国防総省は「思いやり予算の増額」を要求し、日本政府はそれだけでよろしいでしょうか?≠ニばかりに、グアム移転費用を国際協力銀行から融資するというおまけ≠烽ツけた。
さらに今回の前原交渉では、BSE問題以降続いてきた米国産牛肉の輸入制限の緩和を打ち出し、さらに中間選挙向けに「対イラン強硬姿勢」を強調するオハマ政権を支えるために、日本の虎の子であるイラン油田(アザデガン)からの撤退まで受け入れた。
プッシュ元大統領に土下座し、「大量破壊兵器」「テロ支援」という2つの冤罪≠ナ始められたイラク戦争に、真っ先に馳せ参じた小泉外交とそっくりだ。
(写真)米国は「尖閣有事」では動かない(沖縄・普天間基地)
領土よりこんにゃくゼリー
自分で尻を拭かない体質は、9月29日の細野訪中で極みに達した。
菅首相は「全く承知していない」と無関係を装い、前原外相は「政府とは関係ない。総理親書など100%ない」と不快感さえ見せた。では党の動きかと思うと、岡田幹事長は「党として全く関与しておりません」と、こちらも俺じゃない≠ニ逃げ腰なのだ。
真相は官邸の仕掛けである。日中関係に関わってきた民主党議員が明かす。
「万策尽きた仙谷官房長官は、『反小沢』で仲が良い野中広務・元官房長官に相談した。野中氏は、程永華(チョンヨンホワ)・駐日大使を通じて打開策を探るようにアドバイスした。
程大使は創価大学出身で創価学会と関係が深いから、仙谷長官は菅首相にわざわざ学会系の美術館に行かせてご機嫌をうかがったが、結局、程大使には話し合いを拒まれた」
民主党で一番太い中国パイプを持つのは小沢一郎・元幹事長である。菅首相は「民主党には中国と話せる者がいない」と苛立ったが、本心を忖度すれば、「誰か小沢以外で中国と話せる奴はいないのか!」という意味だったのだろう。
「菅さんの外交経験といえば、自民党の加藤紘一氏や小沢さんにくっついて訪中したことがあるくらい。米国人脈はなく、英語もできない。外交プレーンといっても、これまで関心もなかったから、親しいテレビ局の記者たちを頼りにしていたほどだ」(菅側近議員)
お飾り総理はともかく、事実上の最高指揮官である仙谷氏は焦り、ついに小沢氏に助けを求めた。「仙谷氏は細野氏に対し、小沢氏に協力してもらうよう要請したが、細野氏は『仲介ならば自分より適任者がいるはず』と、別ルートでの交渉を勧めた。仙谷氏は小沢氏と近い大物官僚OBを通じて協力を依頼し、小沢氏が応じて細野氏に訪中を指示した」(小沢側近)細野氏は、小沢氏が毎年行なっている日中交流「長城計画」の事務総長で、小沢氏の中国パイプの窓口役だ。訪中した細野氏は、外交部門の中枢と会談し、直後にフジタ社員3人の解放が決まった。もちろん、会談をアレンジしたのは小沢氏である。
ただし、これで問題が解決したわけではない。これから政府、党の外交ルートをフル活用して交渉に当たらなければならないが、総理大臣、官房長官、外務大臣、幹事長らが、裏で小沢氏を働かせて、表では「脱小沢」などといっている卑怯な体制では、相手に足元を見られるか、不信感を持たれるだけだ。
本来、こういう危機にこそ外務省の「チャイナスクール」が日頃の人脈を活かすべきなのだが、「チャイナスクールは、菅政権が中国大使を政治任用したことで、サボタージュしている。外務官僚をないがしろにするからだ。困るだけ困ればいい≠ニいう空気が強い」(同省幹部)という有り様。民間から大使を任命したことは失政ではないが、その大使を支えるよう官僚たちを指導できないところに、前原氏、仙谷氏のいう政治主導≠フレベルが現われている。
丹羽宇一郎・大使は、夜中に呼び出されたり、高官に会談を拒否されたりと、中国政府から信じがたい屈辱を受けたが、なぜか外務省プロパーの領事らは、拘束されたフジタ社員にも簡単に会えた。うがった見方をすれば、外務省は自分たちの中国パイプを誇示しつつ、丹羽大使と官邸に恥をかかせた疑いすらある。
こんな亡国官僚を一喝できない政権では、中国問題は悪化するだけだ。フジタ社員を釈放させられても、尖閣問題は、はるかに難題である。ロシアまで対日圧力を高め、アメリカからは見捨てられる──そんな最悪の国難を任せられる力は、菅政権には全くない。
しょせん「反小沢」しか頭になかった政権は、この程度なのだ。当たり前のことだが、「反小沢」は「国のかたち」でも何でもない。
素人の政治ごっこで国益を失うのではたまらない。
そういえば、仙谷氏は失地回復のつもりなのか、この重大局面に奇妙な政治主導≠見せた。9月27日、政府は「こんにゃくゼリーの形と硬さ」の基準を政治主導で決める方針を打ち出したのである。
こんにゃくゼリー問題は、仙谷氏の数少ない政治実績である。自民党政権時代にこの問題を取り上げ、販売禁止を申し入れるなど、戦う政治家≠ヤりを見せた。
官房長官になると、社会党出身の福嶋治彦氏を消費者庁長官に抜擢し、こんにゃくゼリー規制を検討させた。もっとも、すでに業界の自主規制により、一昨年から事故は起きていないため、庁内では規制に慎重論も多かった。それを押し切ってやろうというのだから、なるほど政治主導である。
菅政権の実態は、「外交は検察が決める。尻ぬぐいは小沢にやらせる。こんにゃくゼリーは俺たちが決める」という体たらくなのだ。
(写真)菅官邸は最後に小沢氏の中国パイプに頼った(右は胡錦濤・国家主席)
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