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検察審査会のことを、これまで多くの日本人は詳しくは知らなかっただろう。だが、今年の2月に東京地検特捜部が、小沢氏の秘書3人を政治資金規正法・虚偽記載違反で起訴した時、【検察審査会】なる言葉が盛んに言われ出した。普通なら検察が「不起訴」とすれば、それで一件落着である。処がマスコミは、ヤメ検や検察OBと共に盛んに「まだ、検察審査会がある」とか、「検察審査会で2度起訴相当が出ると起訴できる」と報道した。それと共に「小沢クロ」のネガキャンが強まっていった。
検察審査会は、検察とは全く別組織で、目的は「検察をチェック」することである。また、法律の専門家である検事が、徹底的に捜査した結果「不起訴」とした事件を、法律の素人から「おかしい」と指摘されたら、検事として不名誉な話である。それなのに検察OBが、なぜ、「まだ、検察審査会がある」と言うのかと、非常に不思議な気持ちで聞いていた。だが、これで「小沢クロ」を刷り込まれた人は多いと思う。
検察OBたちは、検察は120%クロでないと立件しないが、検察審査会ならば少しでも疑わしければ起訴するだろうと言っていた。そして今回、第2回目の議決書は、検察OBたちのストーリーの通りになった。そのため、検察審査会は検察の一組織だと思っている人がいる。だが、検察審査会は裁判所に付設された組織であるが、憲法76条で定める司法組織ではない。非常に不思議な組織なのである。
処で、二人の日本人がノーベル賞化学賞を受賞することとなった。そして、平和賞が中国の作家・劉暁波氏に授与されると発表された。この劉氏の平和賞授賞に中国政府が不快の意を示したことが新聞で報道された。おそらく多くの日本人は、中国が反体制派を容認しない、全体主義国家だと再認識し、日本は民主主義国家でよかったと、改めて思っただろう。だが、本当に日本は民主主義国家だと胸が張れるのだろうか。
民主主義国家なら、憲法で定められた国民の権利を官僚(組織)が作為・無作為を問わず、阻害することは有り得ないはずだ。憲法32条には、「何人も裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」と定められている。これは、誰もが自らを守るために、裁判に訴える権利を有すると言うことである。この基本的人権が官僚(組織)の作為・無作為を問わずに守られないなら、民主主義国家とは言えないことになる。
検察審査会法には、議決に対する不服申し立て規定がない。また検察審査会は行政組織でないので、行政不服申し立てもできない。法律の目的が検察の「不起訴」をチェックすることだから、ある意味では当然かもしれない。だが、上にも述べたように、小沢氏が不起訴と決まった直後から、「まだ、検察審査会がある」と検察OBや検察官僚から、次々と発言があったのは、今にして思えばそこにあったのだ。
検察審査会が2度目の「起訴相当」議決をすれば、その議決に異議を申し立てる法律がない。必ず強制起訴となる。法律の不備というか、落とし穴である。検察審査会事務局(=法務官僚)は勿論、検察官僚も検察審査会法を熟知している。憲法違反であろうが、誰かがこの法律の落とし穴に気付き、違憲訴訟を起こすまでは、彼らはこの落とし穴を「罠」として使える。そして、その罠が威力を発揮しそうなのである。
検察審査会法では、2回目の起訴相当の乱発を防ぐために、第41条が定められた。41条の4に「(2回目の)審査を行うに当たっては、審査補助員(=弁護士)を委嘱し法律に関する専門的な知見をも踏まえつつ、その審査を行わなければならない」と定められている。これは検察が不起訴にした理由・説明を、弁護士が「犯罪事実」=可罰性事実か、単なる「犯罪疑惑」なのかを説明しなさいと言うことである。
分別のある審査員なら、犯罪事実か、単なる疑惑かを見分ける。或いは、法第41条を正しく解釈する。そうなると「起訴相当」の議決は難しくなる。そのリスクを避ける必要があった。そこで分別のある中高年を審査員から外した。確率的に100万分の1以下だ、と言われる平均年齢30歳代の審査員が2度も選ばれることになった。この審査員選定は、検察審査会事務局の協力がないと難しいことは言うまでもない。
とにかく、2回目の起訴相当に持ち込めば、それが法的に無効でも、「起訴」という「罠」に捉えたことになる。この程度のストーリーを、2月の時点で見抜けなかったのは残念だ。検察と検察審査会がそこまで手を結ぶのかとおもうが、逆にそれだけ追い詰められているのだろう。
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