http://www.asyura2.com/10/senkyo97/msg/279.html
Tweet |
「週刊ポスト」10.15日号
平成22年10月4日(月)発売
小学館 (通知)
[緊急討論]「事件を捏造する検察、罪人を乱造する裁判所」
「起訴されれば99%は有罪」というこの国の司法の真実
三井環 元大阪高検公安部長 × 鈴木宗男 前代議士
───────────────────
不都合な調書を破棄し、事実とは異なる供述を誘導し、果ては証拠を改竄して、無実の者を有罪に仕立てあげようとした──検察はなぜ暴走するのか。
さる9月に実刑が確定して失職、間もなく収監される鈴木宗男・前代議士、そして検察の裏金問題を告発した直後に逮捕され服役した三井環・元大坂高検公安部長が語り合った。
───────────────────
(写真)逮捕直前の鈴木氏。「当時の世論は宗男を捕まえろ≠フ一色だった」(鈴木氏)
検事は弱い者から攻めていく
──村木裁判により、検察に対する国民の不信が高まっている。検察捜査をよく知るお二人に、なぜそんなことが起きるのか聞きたい。
鈴木 私の事件(欄外参照)は、そもそも「鈴木宗男を潰せ」ありきで始まった捜査でした。検察も必死だったと思います。当時、私の前に三井さんが逮捕され、検察の裏金問題が注目されていた。検察は私を逮捕することで話題を逸らしたかった面もあるでしょう。
三井 鈴木さんは連日、北方4島支援事業で私腹を肥やす大悪人といわれていましたよね。でも、蓋を開けてみれば、国後(くなしり)島のムネオハウスやディーゼル発電施設に絡む事件ではなく、はるか昔に起きたやまりん事件で逮捕された。贈賄側の時効が成立しており、それまでは立件することはありませんでした。時の政権の意思が色濃く反映されたと思います。
鈴木 私も政治判断だと思っています。当時の小泉政権の中では、私は抵抗勢力といわれていた。1に鈴木宗男、2に野中広務、3に古賀誠。この3人がビッグ3でしたからね。
三井 そもそも、やまりん事件はその4年前に釧路地検が動いて立件できなかったもの。でも、世論は「極悪人の宗男を逮捕しろ」という雰囲気だったから、検察は何かをやらなければならなかった。だから、昔の事件をもう一度掘り返した。
鈴木 何しろ、私が逮捕される前日まで、NHKをはじめすべてのテレビ、新聞、週刊誌が「宗男は北方領土人道支援関連で逮捕される」と報じていた(苦笑)。
検察のリークによって私のイメージが作られ、報道で増幅されていく。
三井 本当なら検察はムネオハウスで逮捕したかったのでしょう。でも、事件性がないとわかって、取ってつけたような事件で逮捕したわけです。
──取り調べはどのようなものだったのか。
鈴木 やまりんの社長は検事から、「狙いは鈴木一人だ。特捜の前に障害になるものは排除する。我々の行く道に邪魔になる足は蹴飛ばす」とまでいわれ、「贈賄側は時効だから協力しろ。我々に協力するとしないではずいぶん違う。社長だって叩けばほこりが出るだろう」と脅された。
検事はとにかく弱い立場の人間から攻めていくんです。たとえば、がんの手術をしたばかりで、放射線治療を受けていた私の女性秘書は、闘病中にもかかわらず逮捕された。政治資金規正法の虚偽記載は彼女の事務的なミスです。でも、検察はどうしても私を共犯にしたい。だから彼女を逮捕し、長期勾留して治療を受けさせないようにして、私からの指示だったといわせようとした。
──小沢一郎・民主党元幹事長の事件でも、石川知裕・代議士の女性秘書が長時間の取り調べを受けたことが問題になった。
鈴木 幼い子供がいるのに、夜中の11時になっても電話の1本も許さず、帰さなかった.人質にしているようなものです。
三井 検察にとって捜査というのは戦争だから、あらゆる策略を駆使して調書を取るわけです。こうしたやり方は決して特異なケースではなく、昔から行なわれてきた。表に出なかっただけです。でも、村木(厚子・厚労省元局長)さんの事件で、それが明るみに出た。
【鈴木宗男事件のあらまし】02年初め、国後島の宿泊施設「友好の家」(通称ムネオハウス)や発電施設開連の入札に関わる疑惑が浮上、同年3月には国会証人喚問を受ける。同年6月に東京地検特捜部に逮捕されるが、容疑は帯広の木材会社やまりんを巡る斡旋収賄だった。同年9月、政治資金規正法違反、議員証書法違反の罪で追起訴される。一審、二審ともに実刑の有罪判決。去る9月7日、最高裁で懲役2年、追徴金1100万円の判決が確定して衆議院議員を失職。11月にも収監される予定。
「内部告発者は逮捕の恐怖」
──村木公判では、証人が次々と調書に書かれていた供述の内容を否認し、裁判所も調書の大半を証拠として採用しなかった。
三井 公判で調書をひっくり返したのが、上村(勉・厚労省元係長=公判中)さんが拘置所でつけていた被疑者ノート。その中に嘘の供述調書を作られた経緯が詳しく書かれていた。それが無かったら、村木さんも有罪だったかもしれません。
鈴木 村木さんの弁護をしたのは、私と同じ弘中惇一郎さんですが、「村木さんの事件もあなたの事件も、検察の調書の作り方は一緒だ」といっていました。
──どうして被疑者や証人は検察の作文調書にサインしてしまうのか。
三井 それは……中に入ったことがない人には説明が難しいのですが、毎日、検事と10時間ぐらい向き合っていると、その検事を信用してしまうのが一つ。また、たとえ嘘でも検事から「他の容疑者はこういっているぞ」といわれれば、記憶があやふやになって、「そうだったかもしれない」と思ってサインすることも多い。
鈴木 新聞が読めないから情報が何も無い。話し相手が検事だけだから、だんだん優しく見えてくる(笑い)。
それに、立場の弱い容疑者や証人は、家族や会社のことを取り調べの際に持ち出されれば、早く解放されたいという思いでサインしてしまう。ただ、私は自分が話していない調書はすべて蹴っ飛ばした。そのために437日も勾留された。
──サインしなかった調書には何が書かれていたのか。
鈴木 簡単にいえば、「私は悪いことをしました。行政に圧力をかけました」という話です。検事たちは司法試験に合格したエリート集団。そうしたシナリオを書くノウハウを訓練されているんですね。
三井 検事の採用に作文試験はありませんが(苦笑)、調書の作成は徹底的に叩き込まれます。私が高松地検の次席検事だった頃は、部下の作った調書は被疑者がサインする前に持ってこさせて、有罪に持ち込むストーリーに合うように私が添削しました。3分の1くらいをゴツソリと削除したこともあります。現場検事たちはそうやって調書作り≠フ腕を磨いていく。
特捜案件の場合、ストーリーを作る統括役が特捜部長。それに従って検事たちが脅したりすかしたりして虚偽の調書を作っていくわけです。被疑者や参考人を調べる検事は応援を含めて10人、20人以上になる。バラバラに調べていたら(勾留期間の)20日間のうちに事件はまとめられない。
──「部長、筋が違います」という検事も出てくるのではないか。
三井 いないでしょうね。稀にいたとしても、その検事は捜査から外される。つまり、ストーリーを作る者と、それに合致した調書を作る者が出世していく構造なのです。
──村木裁判での証拠改題は、内部告発によって発覚したものと思われる。不当な捜査が多いなら、良心ある検事の内部告発はもっとありそうなものだ。
三井 検察には裏切りを絶対に許さない土壌がある。私は検察の裏金問題を告発したとたん、毎年、同僚から届いていた400〜500通の年賀状が3通しか来なくなった(苦笑)。しかも検察は逮捕権を持っている。
私のように組織の裏切り者は逮捕までされる。
鈴木 政治の世界にも裏切りはあるが、政治家の場合は言い逃れや、ごまかしがきく。逮捕権を握っている検察組織での裏切り行為に対する報復の恐怖は別格でしょう。しかも、検察は自分たちが正義だと信じ切っているから、たまったものではない。
法廷を自ら否定する裁判官
三井 なぜそこまで調書づくりに拘るかといえば、特捜は「調書さえ作れれば勝ち」と考えているからです。
鈴木 先に話した女性秘書は、公判では「仕方なく調書にサインした」と主張しましたし、やまりんの社長も(全く話していない内容や意に沿わない部分が多々ありましたが、結局、嘘の調書に署名をしてしまいました)とする陳述書を提出しました。これに対して検察は「供述調書と違う。偽証だ」と反論する。
そうなると裁判所は、「取り調べでの供述調書は信用性が高く、公判での証言は信用性が低い」というんです。陳述書を証拠として採用しておきながら、自分たちの法廷より検事の取り調べを信用する。自ら法廷を否定しているんです。
三井 判検交流(裁判官と検事の人事交流制度)がありますからね。それとは別に、昔から裁判官と検事には法廷外での会合が開かれますし、検事と裁判官は同じ官舎であることが多い。一方、弁護士と裁判官の交流はほとんどない。裁判官からしてみれば、検事は身内≠ニいう感覚がある。
鈴木「一審は2年間で終わらせろ」という最高裁の通達も大いに影響していると思う。2年を超えればその裁判官は出世コースから外れる。だから、真相を追求せず、事務的に調書を優先させて裁判を進める。私の一審もちょうど2年でした。
自衛隊の憲法9条違反判決を下した後に左遷された裁判官の半生を追った『法服の枷』というドキュメンタリー番組(制作・中京テレビ)が昨年、話題になりましたが、国の政策や時の政権の意思に反する判決を出せば、人事で報復を受ける。村木さんや私のようないわゆる「国策捜査」となれば、なおさら検事の主張しか見なくなるのでしょう。
三井 鈴木先生の事件、日歯連事件(※=次n欄外)、小沢一郎事件などは政権主導の捜査といっていい。
(写真)裏金告発の直前に三井氏は逮捕された(大阪地検特捜部による自宅の捜索)
【三井環事件のあらまし】大阪高検公安部長だった02年4月にテレビ番組で検察の裏金作りを実名告発する収録を控えた3時間前に電磁的公正証書原本不実記載、詐欺などの容疑で大阪地検特捜部に逮捕される。同年5月、収賄容疑で再逮捕。05年2月、一審で収賄などの罪で懲役1年8か月の実刑判決。07年、高裁は控訴棄却。08年8月、最高裁で実刑が確定。仮釈放は一度も認められないまま、今年1月に清期出所となった。
(写真)取り調べ可視化を訴える足利事件の冤罪被害者・菅家利和さん
鈴木 私の場合、検察は三井さんが告発した裏金問題の隠蔽で小泉政権に大きな借りを作っていた。それで、検察側は政権に良い印象を持たれたい。だから、検察は小泉政権の抵抗勢力である私を逮捕したのだと考えています。
──検察はどうやって政権の意向を忖度するのか。
鈴木 当時の福由康夫・官房長官が、オフレコの記者憩で、「鈴木宗男の捜査はどんどんやったほうがいい」とか、「鈴木宗男が逮捕されても政権に影響はない」とか口にしたんです。官邸からそうした話が出ると、特捜部は動きやすい。
三井 昨年の総選挙前の3月には、小沢さんの秘書の大久保隆規さんが逮捕されたが、あれも検案が独自に動いたわけではない。検察には選挙に影響を及ぼす時期には捜査はしないという不文律がある。当時の自民党政権が主導した捜査としか考えられません。
鈴木 あの時も漆問巌・官房副長官が、オフレコの記者懇で「自民党には捜査が及ばない」なんて、バカなことをいっていた。
──検察は政権を守る防衛機関なのか。
鈴木 政治家でもいまだに勘違いしている人が多いが、検察は司法ではなく行政の一機関ということです。
可視化と証拠品開示が急務
──村木裁判での犯罪行為が明らかになった今、検察の在り方をどう変えていくべきだと考えるか。
三井 地検や高検、最高検のトップを民間人にして、選挙で選べばいい」そして、政治的な事件、すなわち国策捜査の可能性がある事件は裁判員裁判の対象にすべきです。そうすれば検察に都合のいい調書を簡単には作れなくなる。調書を無批判に採用するのは裁判官の習性。裁判員なら疑いの目を向ける。
鈴木 取り調べの可視化は絶対に必要です。被疑者だけではなく、裁判に出てくる証人の取り調べまで含めた全面可視化でなければ、弱い人からやられてしまう。
三井 付け加えると、可視化とセットで、残記録(検察が証拠捷出しなかった調書)と押収した証拠品の全面開示が不可欠です。足利事件にしろ免田事件にしろ、再審で死刑判決が覆った事件では、検案が隠した証拠が出てきたことがきっかけになった。しかし、現行制度では被告弁護人はどんな証拠があるのか、把握することもできない。
鈴木 私の裁判では、検察は供述調書の約半分を証拠として提出しませんでした。
私は取り調べの中で、記載ミスのあった献金の使途をきちんと喋っている。ところが、検察はその調書を公判に捷出せず、「鈴木は(使途を明らかにできない)裏金を作っていた」と主張する。
われわれが「こういう調書があるはずだ」といっても、検察は「事件とは直接関係ない」と。
三井 裁判所が命令すれば提出させられるはずですが、裁判官がそうした意見を述べたことはほとんどない。だから残記録と証拠品の全面開示制度が必要なのです。
──鈴木さんは間もなく収監される。今後はどのような活動を展開するのか。
鈴木 私の裁判では、林野庁側に明らかに偽証している人がいる。その追及も含め、獄中にあっても法廷闘争を続けます。
三井 いつか国会議員上して復帰してください。先生は今年、私を参考人招致して検察の裏金問題を追及しようとした。
鈴木 そう。法務委員長にも進言した。でも、委員会がなかなか動かない。法務省の役人から説明を受けた末に、「やめておこう」ではあまりに情けない。
──三井さんの逮捕直前、当時の民主党幹事長だった菅首相は三井さんを国会招致して、検察の裏金問題を追及する約束を交わしていた。今、その約束は?
三井 総理になったら全くダメだね。
鈴木 民主主義の危機だということがわかっていない。総理も官房長官もね。
三井 出所後5年は選挙に出られませんが、恩赦の可能性だってある。あきらめないでください。
鈴木 最近はどこに行っても見ず知らずの人が寄ってきて「先生、頑張って」と。特に女性が多いんですよ(笑い)。私は21歳で、永田町に入り、国会議員を25年やらせてもらった。ありがたいことに、バッジがあろうがなかろうが、皆が「政治家・鈴木宗男」として見てくれるんです。いかなる立場宅なろうとも、発信をしていきます。
●司会・構成/佐藤篤司(ジャーナリスト)
※日歯連事件/04年7月、日本歯科医師達盟の不正会計問題に絡んで発覚した闇献金事件。東京地検特捜部は、01年に橋本派へ1億円の小切手を渡した日歯連元会長を逮捕した一方で、受け取った橋本龍太郎・元首相と同席した青木幹雄氏は不起訴、同じく同臆していた野中広務氏は起訴猶予にし、現場にいなかった村岡兼造氏を逮捕した。また、白歯連は自民党議員数十人に数億円の迂回献金をしていたが、捜査されなかった。p-48
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK97掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。