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経済の死角 2010年10月07日(木)
内田樹「腐ったメディアの方程式」君たちは自滅していくだろう(週刊現代)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1307
テレビは見ない。新聞も本も読まない。マスメディアは世の中の急激な変化に戸惑うばかり。なぜ見なくなったのか。なぜ読まなくなったのか。内田教授はその理由を「作り手の劣化」と断じる。
■先がない業界
日本のメディア業界は、新聞も、図書出版も、テレビも、きわめて厳しい後退局面にあります。ビジネスモデルが、一変してしまいました。とにかくもう業界的には「先がない」状態だと思います。お気の毒ですけど。
その最大の原因は、ネットの台頭よりもむしろ、従来型マスメディア自身の力が落ちたこと、ジャーナリストたちが知的に劣化したことで、そのためにメディアそのものが瓦解しようとしているのだと思います。
先日の民主党代表選の報道でも、とても気になったことがありました。
菅直人総理はじめ、政治家のぶら下がり取材をしている記者たちが、とにかく若い人ばかりなんです。
20代から、せいぜい30代前半まで。ちょっと前までバラエティ番組で司会をやっていたようなアナウンサー出身の記者までいる。
政治というのは経験の函数ですから、それだけ若い記者が政治イシューについて深い洞察を含んだ質問をすることなど、できっこないですよね。
なぜこういうことになるのかというと、現場の記者に求められている取材能力レベルが格段に下がっているからに違いありません。
新聞は、「こうやって書け」と定型の文体をまず徹底的に教え込み、その通りに書かせている。定型ですから、取材能力などなくても、必要最低限のことを聞けば、ある程度の記事は書けるわけです。
新内閣の発足。メディアはスター政治家が「感情を露にする」シーンを狙いつづける
一方テレビは、「メディアを足蹴にして不機嫌な顔で立ち去る政治家」のような、感情に訴える画を常に欲している。
落ち着いて縷々政見を語るとか、その政治家の本音のようなものはシャットアウトして、ただひたすら感情的な場面ばかりを伝えようとする。
だからテレビの政治記者は、トンチンカンなことを平気で聞ける図々しさが必須ということになってくるんでしょう。政治家がそれに怒ってくれたら、思うつぼなんです。
『9条どうでしょう』『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』などの著書で知られる論客、内田樹・神戸女学院大学教授が、メディアをめぐる問題について書きおろした『街場のメディア論』が話題を呼んでいる。 内田氏は(1)日本のマスメディアの凋落とその理由、(2)メディアとインターネットの将来、(3)書籍存続の可能性と著作権問題などについて鋭い分析を加えている。
昨年流行した新型インフルエンザを巡る報道にも、非常に危険性を感じました。専門家たちが、「まず情報を集めて、分析し、危険性を見極めなくちゃいけない」と言っているにもかかわらず、メディアは「新型」というだけで大騒ぎしたのです。口蹄疫でも、同じ騒ぎが繰り返されました。
いまの報道は、「浮き足立て」、「興奮しろ」、「取り乱せ」ということを要求し、平静にやっていると、「緊張感がない」と怒り出す。冷静に物事の真相を見ようという姿勢とは程遠い。失礼ですが週刊現代も、その例外ではありません。
こんなことをやっていたら、狼少年と同じで、本当に危険な災害、流行病が来たときに、どんなことが起こるかわかりません。
■君たちの手は汚れていないか
そもそもメディアは、本能的に変化を好みます。
社会が変化しなければ、メディアに対するニーズがなくなるからです。だからメディアは、有名政治家が失言したり、朦朧会見することを望み、乱が起きることを待望し、あらゆる社会システムに「改革」を要求して、社会制度の変化を無条件に良いことだとして、常に変革を求めます。
しかし、はっきり言って、医療、教育、司法などの現場で地道な下支え的仕事に携わっている人たちの実感からすると、メディアにはもう、かかわってほしくないというのが偽らざる本音なんです。
私は20年間教師をやってきましたが、「メディアのおかげで教育環境が良くなった」と思ったことは一度もありません。いま日本に100万人以上の教師がいますが、メディアのサポートのおかげで教育環境が整備されたと思っている人は1%もいないでしょう。
医療関係者も同じです。おそらく、公務員もそうでしょう。毎年のように「改革」を要求して、現場に過剰な負担を強いる。これだけ憎まれているのに、日本のメディアは反省がなさすぎます。
「自分の手は汚れている。カネ儲けのために、若干、あざといことをやっている」と噦犯意器があればまだマシですが、一番怖いのは、「自分の手は汚れていない。自分は正しい」と思いこんでいる人たちです。テレビのなかでニュースキャスターたちが、
SOBA:噦犯意器←この部分は意味不明、文字化け?
「こんなことが許されていいんでしょうか」
と眉間に皺を寄せるシーンがしばしばあります。私にはこれがどうにも許容できない。この発言には、自分はこんな酷い事態にはまったく関与していませんよ、という暗黙のメッセージが含まれている。自分が無垢であることを装う演技性が、どうにも我慢できないんです。
いま、若い人たちが新聞を読まなくなり、テレビを見なくなり、雑誌を買わなくなっている。一人暮らしの20代の人で、宅配の新聞を取っている人などほとんどいない。それはネットに客を奪われたからではなくて、「偽善的な定型」に安住したメディアの報道に胡散臭さを感じ取っているからだと思います。
私自身は、民放テレビ局の番組を見ることはほとんどなくなってしまいました。とにかく音がうるさくて、出演者たちの声が癇に障ります。おそらくCMの音量が上がっているので、それに併せて番組の音量も上げているのでしょうが、まったくの悪循環。
民放は、そういう作り手の配慮の足りなさが際だっています。周りの人との会話でも、民放の番組が話題になることはまずありません。
その点、最近のNHKは、ターゲットをかなり限定した番組作りをしているように思います。ときには、「この番組は数万人見てくれればいい」と割り切った番組作りをしている。
だから、マスメディアなんだけれども、部分的には、「数千人から数十万人程度の規模の特定層に向けて発信される情報」であるミドルメディア的な機能を有しています。結果的には、それがすごく成功しているような気がします。
■売れない理由
読者、視聴者からの信頼を失いかけているマスメディアに代わって、存在感を強めているのがネット、ブログなどの「ミドルメディア」である。内田氏は、ミドルメディアの可能性についてはどのように見ているのか。 また、「出版不況」が言われて久しいが、書籍の未来についても聞いた。
ミッションステートメント(綱領、行動指針)をはっきりとさせることで、10人中9人には嫌われても、選んでくれた1人にとことん気に入ってもらい、リピーターになってもらう。これからの時代は、そういうメディアが生き延びていくことになるでしょう。それはインターネットだけでなく、いろんな形態があり得るのです。
ヨーロッパから日本に帰ってくると、新聞のレベルがいきなり急低下してしまうので、本当にガッカリします。『ル・モンド』や『ガーディアン』は日本の新聞のように巨大な読者数ではなく、リテラシー(読解力)の高い少数の読者を想定し、それに向かって発信しているから、ずっと高いクオリティが維持されている。
それでも経営的には厳しい状況にあることはたしかですが、日本にも、少数ながら強いサポーターがついているクオリティペーパーのような新聞が必要でしょう。
僕らが学生だった'70年頃、片手に朝日ジャーナル、もう一方に少年マガジンを抱えていましたが、それで大変バランスが良かった。これからは、そういうクオリティの高い活字のミドルメディアにぜひ登場して欲しいと思います。
テレビは、先にふれたようにNHKはすでにミドルメディアに対応し、番組ごとにターゲットを変えています。民放もこれからはミドルメディア化し、旗幟鮮明にしていかなければ、生き残ることは難しい。
いま出版社は、「本が売れなくなった」と大騒ぎをしています。図書館に配本するのを規制しようとか、ネット上に流出するのを防ごうとか、新古書店を敵視したりしていますが、根本的に出版メディアの側に欠如しているのは、読み手に対するリスペクトだと思います。
著作権に対する出版社の発想は、無償の読者を読者としてカウントしていません。それどころか、「盗人」として捉えてしまっている。僕に言わせれば、「図書館で本を読まれたら、おカネが入らないので大損だ。
だから、図書館にはなるべく本を配るべきじゃない」と考える人には、物書きの資格はありません。図書館は出版文化の支え手です。それを敵視するなんて言語道断です。
物書きや出版社にとってまずは高いリテラシーを持った読者層を、いかに形成するかがすべてのスタートなんです。
どんな人もまず無償の読者として出発し、長い時間、場合によっては20年以上をかけて有償の読者に変化します。カネを払わずに本を読み続ける行為を通してリテラシーを形成し、その後にはじめてカネを出して本を買うという行為が始まるわけです。
出版メディアは、そのプロセスにこそ投資をしなくてはいけません。いまの日本の出版危機というのは、その読者層の形成に対して、十分に配慮してこなかった結果なのではないでしょうか。(談)
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僕も行きましたが、当日の東京の気温は最高35℃、最低29℃の猛暑でした。動員とか中傷している報道がありましたが、あの猛暑の中、動員であれだけの人は行けません。
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