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「週刊ポスト」10.15日号
平成22年10月4日(月)発売
小学館 (通知)
幹部は「前田への嫉妬もあったんだろう」と言い放ち、告発を葬り去っていた
大阪地検特捜部に蜂の一刺し!告発¥乱ォ検事「涙の激情」
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検察の強引な捜査については、これまでも指摘されてきた。しかし、まさかここまで酷いとは───。「最強の捜査機関」の恐るべき実態を告発した一人の女性検事。その時、閉ざされた組織内部で何が起こっていたのか
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(写真)「正義」は地に堕ちた(左から女性検事Aさん、大坪弘道前部長、前田恒彦容疑者。上写真は法務省HPより)
前田の2部屋隣に一人暮らし
「正義の番人」と呼ばれた者たちが責任を押しつけ合う姿はあまりに見苦しい。
大阪地検特捜部が押収したフロッピーディスク(FD)のデータ改ざん事件。
証拠隠滅容疑で逮捕された主任検事・前田恒彦容疑者(43)は、「事件の見立てに合うように、意図的に改ざんしたことを、部長、副部長に直接報告した」と供述。
ところが名指しされた大坪弘道・前特捜部長と佐賀元明・前副部長は、最高検察庁の取り調べに対し、「前田検事から『誤って書き換えたかもしれない』と聞き、それを信じた。改ざんとは思わなかった」などと説明。双方の言い分は真っ向から対立している。
ほかに複数の検事が調査を受けているが、幹部2人による隠蔽の有無を明らかにする上で、鍵と見られているのが、FD改ざんの事実を幹部2人に告発した女性検事・Aさん(41)の証言だ。
Aさんは連日、最高検の調査を受けているのだろうか、大阪・枚方市にある官舎の部屋は不在のまま。2つ隣の前田容疑者の部屋とともにひっそりと静まりかえっている。
検察は上意下達の「鉄の組織」だといわれる。45nからの記事に登場する三井環・元大阪高検公安部長のように、組織に歯向かう告発は自分の身を危うくする。
そうした危険を顧みず告発を決めたAさん。彼女の激情を生んだものは何だったのか。Aさんの置かれた立場や心の内を探っていくと、外部からは窺い知ることのできない検察内部の「中央」対「関西検察」、「男」対「女」の対立構造や、妬み嫉みが渦巻く様が浮き彫りをこなってくるのである。
郵便不正事件にからむ証明書偽造事件の捜査の過程で、前田容疑者が証拠品のPDの更新日時記録を改ざんしたとの疑惑が浮かび上がったのは今年1月27日、村木厚子・元雇用均等・児童家庭局長の初公判だった。
「検察が公判で主張している日時は6月上旬だが、捜査報告書に記載しているFDの更新白時は6月1日。主張が破綻している」
弁護側の指摘に検察側は慌てふためいた──。
「娘は曲がったことが大嫌い」
事件の捜査にかかわっていた男性検事が、東京地検特捜部の応援のため東京に出向いていた前田容疑者に電話で連絡をとると、前田容疑者は平然と言い放った。
「時限爆弾を仕掛けた。(FDの)更新日時を変えた」
6月8日の日付になったFDが上村被告側から出てくれば、検察の描いた構図に有利になると説明し、さらにこうもいったという。
「作戦だ」
「上も承知している」
こんなことをして大丈夫なのか──男性検事は動揺し、同僚にこのことを伝えた。話を聞いたAさんは激怒し、前田容疑者に「いったいどういうつもりなんですかで」と電話をしたが、前田容疑者からは、納得のいく回答は得られなかった。
そして1月30日午後。Aさんと2人の同僚男性検事は、休日に特捜部の佐賀副部長(当時)を呼び出すと、次のように切り出した。
「村木さんは無実です。きちんと調べて、上に報告してください。でなければ、自分が公表して辞めます」
Aさんは涙ながらに辞えたが、佐賀副部長の反応は鈍かった。過が明けた2月1日、今度は大坪部長(当時)に「検事正に伝えましょう」とも直訴。大坪部長は「事実を調査する」と答えたが、それは形だけに終わった。指示を受けた佐賀副部長が前田容疑者に事情を聞いた際、難詰するどころか「FDにまで触らせてしまうとは、苦労をかけてしまったな」とねぎらいの言葉をかけたのだという。
大坪部長もまた、「自分の右腕」と公言してきた前田容疑者をかばった。小林敬・検事正らに「検事の間でトラブルはあったが、調べたところ問題はなかった」と報告したのである。
逆に検察幹部の矛先は、組織に楯突いたAさんに向かった。ある幹部は告発したAさんのことを、「前田は(成果をあげて)目立ちすぎたからな。嫉妬もあったんだろう」とすら語っていたという。そして4月、Aさんは花形の特捜部から公判部に異動となった。こうしてAさんの職を賭した告発は握り潰されたのである。
Aさんは69年、佐賀県に生まれた。九州大学法学部を卒業後、大学院を経て司法試験に合格。東京地検検事としてキャリアをスタートさせた。Aさんの母親の話。
「娘は曲がったことが大嫌いなので、不正を見過ごすことができなかったのでしょう。寝る間も惜しんで仕事をしていました。前に大阪に赴任していた時は、同僚の女性検事さんたちとお金を出し合って職場近くにワンルームマンションを借り、仕事で(官舎に)帰れない時はそこで寝起きしていたほど。最近は正月もお盆も実家に帰っていません」
司法記者からも「威張った特捜検事が多いなかで、Aさんは気さくな人柄。正義感が強いことでも評判でした」との声が上がる。昨年、Aさんから取り調べを受けた男性は、女性らしい気遣いが印象的だったという。
「優しく丁寧なしゃべり方で、私に淡々と聞いてきました。背筋がピッとした美人で、取り調べ中には、お茶入れてくれたんです。独身だと聞いたので、『早く結婚した方がいい仕事ができる』といったら、彼女は肯いていましたね」
(写真)検察の魔手にからめとられた村木厚子氏
関西検察の馴れ合い
Aさんの告発には、検察独特の内部構造が関連しているとの指摘がある。告発に踏み切れたのは、「西系」あるいは「西回り」と呼ばれる関西検察に彼女が属していなかったからというものだ。『ヤメ検』(新潮社刊)の著書もあるノンフィクションライターの森功氏が語る。
「名古屋高検を境に西を『関西検察』といい、大阪高検の管轄で人事が決められ、西日本をぐるぐる回っていく。最高検の直下にある『関東検察』への対抗意識もあって、一致団結している。よくいえば家族的。ただそれが馴れ合いにつながっている面も否めない」
その濃密な人間関係の中で検事は、取り調べのやり方や筋読み∞プツ読み≠ニ呼ばれる独特の捜査技術を磨いていく。
「とくに特捜が扱う事件は物証が少ないものが多い。そこに必要なのがプツ読み≠フ能力。内偵をし、ガサ入れをして、押収した大量の資料を読み込み、そこで出てきた数少ない物証と物証を重ねていっそ、筋読み(事件の構図)どおりになっているかを調べる。しかし、物証だけでは立証できないので、どうしても自白を引き出す。割り屋≠ェ必要になる」(森氏)
今回、逮捕された前田容疑者は「割り屋」として能力を買われていたが、その実態はいってもいないことを供述調書に書き連ねていたのではないかという疑念が湧き起こる。
特捜部も東京には検事が約40人もいて、3班に分かれ、派閥も存在する。一方、大阪は総勢13人。そのため派閥もなく、特捜部内どころか、検事は皆知り合いで、刑事部、公安部と、部署が違っても皆一緒に飲みに行く。
「前田容疑者がFDの改ざんを同僚検事に漏らしたのも身内意識≠ゥらで、自分をかばってくれると思っていた節がある」(司法記者)
そんな身内意識の強いなかで、Aさんは「関西検察」の人間とはいえない存在だった。東京地検に初任官し、浦和地検、松山地検、東京地検などを経て大阪地検に勤務。よそ者≠ニして扱われていたのは確かなようだ。
「大阪地検は事件は作ればいい≠ニいう気分が強く、生真面目な性格のAさんはその雰囲気になじめなかっためではないか」(同前)
また、男社会の検察にあって、女性という点でもAさんはマイノリティだった。現在、女性検事は全体の2割程度。特捜部の検事はわずかしかいない。
「私たちが任官した当時は、司法修習生の検察希望者に女性枠≠ェあるといわれていました。どんなに優秀であっても女性は限られた人数しかとらないということです。研修の時は、セクハラに対する耐性を見るため≠ニ称して、セクハラ発言が平気で行なわれていた。今でも女はいらない≠ニいう考えが一番根強いのが検案です」(司法修習生でAさんと同期の女性弁護士)
関西検察の馴れ合いに染まることなく、また、男社会の「常識」の外にいて、しかも正義感が人一倍強かったAさん。だからこそ、上司の前で涙を流すほどの激情で、仲間を告発することができたのではないか。
現在、Aさんは母親でさえ連絡が取れない状態が続いている。
「今回の報道を見て、心配して娘の携帯に『生きてるの? 連絡をちょうだい』と入れましたが、返事はありません」(母親)
勇気ある告発の行方は───。
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