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小沢一郎強制起訴への民主党政権の対応を見ていると、小沢の政治生命の危機だけでなく自らの政権の危機であるという意識がまるでない。焦点は小沢を抱えて政権を維持し、統一地方選挙や解散・総選挙を乗り切れるかという一点に尽きる。小沢の自発的辞任や野党とマスコミの批判の盛り上がりを待っているのだろうか。そうであれば民主党自体がマスコミと野党の攻勢をまともに受けるだけだ。ここは「小沢切り」に動くべき時なのに、動きは極めて鈍い。
東京第5検察審議会もやるものである。9月14日の代表選当日の起訴議決である。なぜかについて百家争鳴の議論があるが、筆者の解釈は簡単だ。代表選で小沢が選出して首相になった場合の“圧力回避”である。小沢は代表選最中に検察審を「素人」よばわりし、制度そのものに疑問を呈してきたが、検察審は小沢が首相になった場合の審議への影響を考えたのだ。「素人」にしては素早く、かつ適切な判断だった。
政権の反応の鈍さを象徴するものは官房長官・仙谷由人の「有罪判決までは推定無罪」発言に尽きる。政治倫理、政治道徳などとんと念頭になく、法律用語を便宜上もてあそんでいる。幹事長・岡田克也も含めて及び腰なのである。政権幹部は強制起訴が及ぼす問題の大きさを推定する能力に欠けているようだ。まず小沢を離党勧告や除名処分をしないまま抱えていれば、刑事被告人を擁護する民主党の姿が浮き彫りになる。法廷手続きは起訴までに長くて3か月、初公判までには場合によっては1年近くかかることも予想される。兵庫県明石市の歩道橋事故は、今年1月に検察審の起訴議決があったものの、初公判の期日はいまだに決まっていない。公判が始まれば一審は本人の出廷が不可欠であり、毎回マスコミが報じて忘れられるということがない。
政権が「小沢切り」をしない限り“おんぶお化け”のように小沢に起因する「政治とカネ」論議が続くのだ。やがて国民は民主党に自浄能力なしと判断して、政党支持率は低下の一途をたどる。これに内閣支持率も連動する。小沢は単独自発的離党を即座に否定しているようだが、それでは集団離党で新党結成があり得るかだ。それも小沢戦略にはないだろう。集団離党すれば、菅民主党は公明党や自民党との連立に直ちに動くだろう。小選挙区制の下で政治とカネに汚染されたイメージの「小沢新党」が生き抜ける道はない。
しかし政権幹部が「小沢切り」に尻込みしていても、野党の攻勢は避けられない。証人喚問になるかどうかは別として、少なくとも小沢の国会招致では一致するだろう。自民党は議員辞職勧告決議案の国会提出を検討しており、提出されれば民主党議員は“踏み絵”を迫られることになる。決議を契機に民主党が割れる危険があるのだ。
かって田中角栄がロッキード事件で起訴されたとき、田中は「今後は体力の3分の1を裁判、3分の1を政治、3分の1を人生に費やす」と漏らしていたが、この話を小沢も知っているだろう。田中の真似をして「闇将軍」を狙いたいのだろうが、政治家のスケールが違っており、もうこれ以上政界汚濁の印象を振りまくのはやめた方がいい。離党どころか議員辞職を決断すべき時だ。
【朝刊トップ3分勝負】
★朝日
小沢氏、強制起訴へ 検察審査会2度目は「起訴議決」
小沢一郎・元民主党代表の資金管理団体「陸山会」の土地取引事件で、東京第五検察審査会は4日、小沢氏を2004、05年分の政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で強制的に起訴すべきだとする「起訴議決」を公表した。議決日は9月14日。裁判所が指定した弁護士が検察官の代わりに起訴する。市民の判断によって、政治家が強制起訴される初めてのケースとなる。
★毎日
陸山会事件:小沢氏、強制起訴へ 民主執行部、自発的離党期待 「政治とカネ」重荷に
民主党の小沢一郎元代表が強制起訴されることが4日確定し、今後は小沢氏の離党問題が焦点となる。9月の党代表選で菅直人首相を支持した反小沢系議員には小沢氏の求心力低下を期待する声もあるが、離党勧告などの厳しい対応に踏み切れば、小沢グループの離反で政権が不安定化しかねない。臨時国会で野党が小沢氏の証人喚問要求などで攻勢を強めるのは必至で、民主党政権は再び「政治とカネ」問題で大きな重荷を背負った。
★読売
小沢氏強制起訴へ、年内の可能性も
小沢一郎・元民主党代表(68)の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、東京第5検察審査会は4日、小沢氏を起訴すべきだとする「起訴議決」をしたと公表した。 小沢氏は、東京地裁が指定する弁護士により、政治資金規正法違反(不記載、虚偽記入)で強制起訴される。議決は、小沢氏の事件への関与を認めた元秘書らの供述は信用できるとし、小沢氏の供述については「不自然、不合理」と批判。「不起訴とした検察の判断は納得しがたい」と指摘した。
★産経
小沢氏強制起訴へ 検審「起訴すべき」
民主党の小沢一郎元幹事長(68)の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、東京第5検察審査会は4日、政治資金規正法違反(虚偽記載)罪で告発され、嫌疑不十分で不起訴処分となった平成16、17年分の虚偽記載容疑について、「起訴すべき」(起訴議決)と判断した。
★日経
小沢氏、強制起訴へ
規正法違反で検察審が2度目議決
民主党の小沢一郎元幹事長(68)の資金管理団体「陸山会」による土地購入を巡る事件で、東京第5検察審査会は4日、東京地検特捜部が2度にわたり不起訴処分とした2004〜05年分の政治資金規正法違反容疑について、小沢氏を「起訴すべきだ」とする2回目の議決を公表した。
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