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法律の専門家の意見です。
小沢氏を強制起訴しても、有罪にするためには、共謀の立証が不可欠です。
もちろん、検察があきらめたものを、同じ証拠で素人が起訴しても、共謀の立証→有罪判決どころか公判維持もできません。
Because It's There
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小沢一郎氏強制起訴へ、検察審査会議決〜無罪が濃厚だが、無罪の場合には検察審査員の氏名を公表すべき!
小沢一郎・元民主党代表(68)の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件について、東京第5検察審査会は平成22年10月4日、小沢氏を起訴すべきだとする「起訴議決」をしたと公表しました。小沢氏は、東京地裁が指定する弁護士により、政治資金規正法違反(不記載、虚偽記入)で強制起訴されることになります。
「起訴議決」の公表は10月4日ですが、議決自体は民主党代表選当日の9月14日付でした。そうすると、代表選の選挙運動中に審理を行い、投票日当日に議決を行うことは、客観的みて最も冷静さを欠いたなかで行った議決ですから、冷静な決定であったのか根本的に疑問があります。
「起訴議決」となったことを受けて、小沢一郎・元民主党代表は10月4日、次のような談話を発表しています。
「この度の私の政治資金団体に関る問題で、お騒がせしておりますことに心からお詫び申し上げます。
私は、これまで検察庁に対して、私が知る限りのことは全てお話をし、二度にわたり不起訴処分となっており本日の検察審査会の議決は、誠に残念であります。
今後は、裁判の場で私が無実であることが必ず明らかになるものと確信しております。
衆議院議員 小沢一郎
(2010年10月4日18時29分 読売新聞)」(YOMIURI ONLINE(2010年10月4日18時29分))
1.まずは、検察審査会の議決内容と弁護人のコメントを。
(1) NHKニュース(10月4日 19時12分)
「小沢氏強制起訴へ 検察審査会議決
10月4日 19時12分
民主党の小沢元代表の政治資金をめぐる事件で、東京第5検察審査会は小沢氏本人について、2回目の審査でも「起訴すべきだ」とあらためて議決し、小沢氏は、政治資金規正法違反の罪で強制的に起訴されることになりました。小沢元代表は「きょうの議決はまことに残念で、今後は、裁判の場で、無実であることが必ず明らかになるものと確信しています」というコメントを出しました。
この事件では、小沢元代表の資金管理団体が土地の購入資金に充てた4億円をめぐり、平成16年と17年、それに19年分の収支報告書にうその記載をしたとして、東京地検特捜部は政治資金規正法違反の罪で元秘書ら3人を起訴する一方、小沢氏本人については不起訴にしました。
このうち平成16年と17年分については東京第5検察審査会がことし4月、小沢氏を「起訴すべきだ」と1回目の議決をしましたが、特捜部が再び不起訴にしたため、2回目の審査が進められていました。その結果、先月14日付けで審査員11人のうち8人以上の賛成で、小沢氏を「起訴すべきだ」とあらためて議決しました。
4日に公表された議決書の中で検察審査会は、収支報告書を提出する前に、小沢氏に報告・相談したという元秘書で衆議院議員の石川知裕被告(37)の捜査段階の供述について「特捜部の再捜査でも同じ供述をしており、信用できる」と指摘しました。また「小沢氏に土地代金を計上することを報告し、了承を得た」という元秘書の池田光智被告(33)の捜査段階の供述についても、「師として仰いでいる小沢氏の関与を、実際より強める方向で、うその供述をするとは考えがたく、信用できる」と指摘しました。
小沢氏の供述については「土地の購入資金に充てた4億円の出どころについての小沢氏の説明は、不合理で到底信用できない。小沢氏は4億円を自分の手持ち資金から出したと供述しているが、それならば銀行から4億円を借り入れる必要はまったくない。銀行からの融資を了承し、みずから署名・押印した以上、当然、うその記載についても了承していたと認められる」と指摘しました。
そして「検察が起訴する基準に照らしても検察の判断は肯定できない。検察審査会の制度は、検察が起訴をちゅうちょした場合に、国民の責任において、公正な刑事裁判の法廷で無罪なのか有罪なのか判断してもらう制度だ」と結んでいます。これによって小沢氏は、検察官に代わって裁判所が指定した弁護士により、強制的に起訴されることになりました。」
(2) NHKニュース(10月4日 16時37分)
「議決書“検察の捜査は形式的”
10月4日 16時37分
東京第5検察審査会の議決書では、民主党の小沢元代表を起訴すべきであるという判断をした理由として、「検察官は再捜査で小沢氏や3人の元秘書を再度取り調べているが、いずれも形式的な取り調べの域を出ておらず、本件を解明するために十分な再捜査が行われたとは言い難い」としています。
そして小沢氏の供述の信用性については「本件の土地の購入資金4億円の出どころについて小沢氏の当初の説明は著しく不合理なものであって、到底、信用することができない。その後、説明を変えているが、変更後の説明も、到底、信用することができないものである」としています。さらに「小沢氏が4億円の出どころを明らかにしようとしないことは小沢氏に収支報告書に記載しなかったことなどにかかわる動機があったことを示している」としています。そのうえで「検察官が本件を不起訴処分にしたことには疑問がある」としています。
さらに「検察官は起訴するためには的確な証拠によって有罪判決を得られる高度の見込みがあることが必要だと説明しているが、この起訴基準に照らしても本件を嫌疑不十分として不起訴にした検察官の判断は認めがたい」としています。
また「検察審査会の制度は有罪の可能性があるのに検察官の判断で有罪になる高度の見込みがないと思って起訴しないのは不当であり、国民は裁判所によって、ほんとうに無罪なのか有罪なのかを判断してもらう権利があるという考えに基づくものである。そして嫌疑不十分として検察官が起訴をちゅうちょした場合に、いわば国民の責任において公正な刑事裁判の法廷で黒白をつけようとする制度である」としています。」
(3) NHKニュース(10月4日 19時12分)
「小沢氏の弁護士“まことに遺憾”
10月4日 19時12分
検察審査会が民主党の小沢元代表を起訴すべきだと議決したことについて、小沢元代表の弁護士は「議決は、まことに遺憾だ。あれだけのキャリアのある人を起訴すべき事案なのか、議決書を読んでも、どこにも理由は書いていない。小沢氏本人も事情聴取に応じて、きちんと説明してきており、意外だと感じているようだ」と話しました。
また、議決書の中で、元秘書が小沢氏に報告や相談をしたとする供述は信用できると指摘したことについて、「検察官の取り調べのあり方が問題となっているこのご時世で、調書の信用性は大丈夫なのか疑問に思う」と述べて、裁判で争う姿勢を示しました。」
2.検察審査会に関して知識のある識者のコメントも幾つか。
(1) NHKニュース(10月4日 19時28分)
「江川紹子氏 厳密評価と思えず
10月4日 19時28分
民主党の小沢元代表が政治資金規正法違反の罪で強制的に起訴されることになったことについて、ジャーナリストの江川紹子さんは「とても驚いている。大阪地検の証拠改ざん事件で特捜部の捜査が問題になっているさなかで、検察審査会はもっと慎重な対応をすると思っていた」と述べました。
今回の議決については「供述の信用性について審査員の想像で判断したとみられる部分が含まれ、厳密に証拠を評価したとは思えない。審査員は、報道などで伝えられる小沢氏のイメージによって判断した可能性もある。検察が総力をあげて起訴できなかったものが、裁判で有罪になる可能性は非常に低いと思う」と指摘しました。
そのうえで、江川さんは「検察審査会が、今回のように政治的に利用される可能性がある事件を審査することは、想定されていなかったのではないか。審査会は強大な権限を持ったのに、議論が明らかにされない不透明さがあり、新たなシステムをつくる必要がある」と述べ、現在の制度を批判しました。」
(2) NHKニュース(10月4日 19時28分)
「元検事“結論きわめて危険”
10月4日 19時28分
政府の司法制度改革推進本部で検察審査会のあり方について検討した元検事の高井康行弁護士は「前回の議決に比べると感情を排して冷静に議論しているようにみえるが、『供述に具体性や迫真性がなくてもいい』として判断された結論は、きわめて危険だ。小沢氏も否認しており、秘書の捜査段階の供述しか支えがないなかで無罪の可能性は十分にある」と指摘しました。
また、今後、指定された弁護士が捜査を指揮することについて「検察官が専従で捜査してもたいへんな事件であり、ほかの仕事も抱える弁護士が低い報酬で密度の濃い立証をできるのか。制約が多いなかで十分な立証をするのは難しいだろう」と話しています。」
追記の展開▼
3.今回の「起訴議決」とした判断を知った法律関係者は、認知症を患っていないのであれば、そのほとんどが「無実の者を感情的に起訴することを決断してしまうなんて、やっぱり日本の市民は馬鹿なんだなぁ」と感じたことでしょう。
(1) 前回の検察審査会の審査では、「市民目線からは許し難い」「(小沢氏を起訴して公開の場(裁判所)で真実の事実関係と責任の所在を明らかにすべき)…… これこそが善良な市民としての感覚」などと、自らを「善良」と声高にに称して「市民」の名の下にいわゆる「感情論」むき出しで――証拠裁判主義や無罪推定の原則は頭の中から抜けてしまったまま――起訴相当と判断していました(「小沢一郎氏「起訴相当」と議決、陸山会事件で検察審査会〜検察審査会は「陶片追放」制度と化してしまったのでは?」(2010/05/05 [Wed] 18:29:42)参照)。
今回の検察審査会では、感情論向き出しの部分は削除されました。しかし、特捜部が収集した証拠資料のうち、検察側に有利な証拠を過大評価し、不利な証拠にまるで関心を持たず、容疑をかけられた者の言い分をまるで信用しないという、これもまた冷静さを欠いた感情的な決断をしてしまっているのです。
ジャーナリストの江川紹子さんは「今回の議決については「供述の信用性について審査員の想像で判断したとみられる部分が含まれ、厳密に証拠を評価したとは思えない。審査員は、報道などで伝えられる小沢氏のイメージによって判断した可能性もある。」とコメントし、元検事の高井康行弁護士は「前回の議決に比べると感情を排して冷静に議論しているようにみえるが、『供述に具体性や迫真性がなくてもいい』として判断された結論は、きわめて危険だ。」とコメントしています。このように、やはり、結論ありきで感情論や想像で勝手に、調書を過大評価してしまっているとの批判がなされているのです。
(2) 特捜部が行った――強要された――供述は信用できると判断してしまうなど、「調書の信用性は大丈夫なのか疑問」はまるでありません。
「4日に公表された議決書の中で検察審査会は、収支報告書を提出する前に、小沢氏に報告・相談したという元秘書で衆議院議員の石川知裕被告(37)の捜査段階の供述について「特捜部の再捜査でも同じ供述をしており、信用できる」と指摘しました。また「小沢氏に土地代金を計上することを報告し、了承を得た」という元秘書の池田光智被告(33)の捜査段階の供述についても、「師として仰いでいる小沢氏の関与を、実際より強める方向で、うその供述をするとは考えがたく、信用できる」と指摘しました。」
この「自白調書の全面肯定」の議決を見ると、実に恐ろしいと感じます。石川知裕氏は、再三にわたり『小沢氏に土地代金を計上することを報告し、了承を得た』とは言っていない」と述べているにもかかわらず、まったく受け入れることなく、「信用できる」と即断してしまうのです。冤罪事件の典型は、強要された自白がある点ですが、無罪推定の原則や冤罪の防止という、ごくごく当たり前の刑事裁判の原則が、市民の頭にはまるで入っていないのです。
障害者割引郵便制度の悪用に絡む厚生労働省の偽証明書発行事件では、起訴に持ち込むためには、前田恒彦・主任検事(43)は証拠改ざんさえも行っていました。この“捏造”検事である前田恒彦・主任検事は、民主党の小沢一郎元代表の資金管理団体を巡る政治資金規正法違反事件では、東京地検特捜部に応援として派遣され、逮捕した公設秘書(当時)の取り調べも担当したのですから、当然ながら、供述の信用性は認め難いと判断するのが合理的です。
こうした状況にありながら、無邪気に特捜部が作成した調書を全面的に信用してしまうのですから、「やっぱり日本の市民は馬鹿なんだなぁ」と、法律関係者は誰もが感じたことでしょう。
ただし、議決は9月14日になされたのですから、証拠改ざんの経緯は考慮できなかったことは確かです。しかし、起訴の結果生じる刑事裁判は被告人にとって重大な人権侵害であるという点を忘れ去り、安易に思慮に欠けた起訴相当の議決をしてしまったのですから、早く議決してしまったという言い訳は通用しません。「まぬけな議決だ」との批判は受忍するしかないのです。
(3) 小沢氏の供述への評価を見ると、多くの方が何度説明しても理解できていないことが分かります。何度説明しても知識がこぼれてしまう認知症患者の言動のようで、悲しくなります。
「小沢氏は4億円を自分の手持ち資金から出したと供述しているが、それならば銀行から4億円を借り入れる必要はまったくない。銀行からの融資を了承し、みずから署名・押印した以上、当然、うその記載についても了承していたと認められる」と指摘しました。」
銀行取引をしたことがある者であれば、手持ちの資金があっても、銀行から4億円の定期預金を担保にして銀行から 同額の融資を受けること、すなわち、「預金担保貸付」を行うことはよくあることだと分かるはずです。そうした銀行取引の常識さえも分からないまま、「借り入れる必要はまったくない」と勝手な判断をしてしまうのです。
また、「銀行からの融資を了承し、みずから署名・押印した」からといって、それは銀行取引があったというだけです。それなのに、なぜ、それが土地取引終了後になされる、政治資金規正法上の収支報告書への記載に直結するのでしょうか。
しかも、収支報告書への虚偽記載に関する共謀がなければ、小沢氏は「共犯」として処罰されないのに、一体、どの時点で、「共謀」があったというのでしょうか。その点への言及は不可欠なのですが、その言及がないのであれば、「共犯」としての有罪立証は不可能です。記事や要旨を見る限り、検察審査会はその「共謀」の立証にとって不可欠な、共謀の内容・日時が全くないのですから、「共謀」の重要性が全く分かっていないのです。
もし、安易に「共謀」を肯定するようになれば、ちょっとした言動でも「共謀」が認定され、刑事裁判に持ち込まれてしまう以上、表現の自由(憲法21条)や自己決定権などの行動の自由(憲法13条)が大きく減殺されてしまうのですが、その危険性を分かっているのでしょうか。小沢氏が信用できないというメディアの報道を妄信し、起訴へ突き進んでしまっているのですから、まるで無謀な戦争へ突き進んだ、戦前の日本のメディアと世論と全く変わらないのです。
(4) 検察審査会は、一体、どういう取り調べをすればいいと思っているのでしょうか。
「東京第5検察審査会の議決書では、民主党の小沢元代表を起訴すべきであるという判断をした理由として、「検察官は再捜査で小沢氏や3人の元秘書を再度取り調べているが、いずれも形式的な取り調べの域を出ておらず、本件を解明するために十分な再捜査が行われたとは言い難い」としています。」
取り調べに「形式的」か否かの違いがあるなんて初耳ですが、その趣旨は、「いつものように自白を強要するような取り調べをするべきだった」ということでしょう。
ここまであからさまに「自白の強要」を迫るなんて、検察審査会は、常軌を逸しているとしか思えません。冤罪事件の典型は、自白の強要があったのですが、冤罪の防止なんて、まるで頭にないことが良く分かる決議書といえます。
小沢一郎・元民主党代表の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件では、東京地検特捜部は、1年にわたり執拗に捜査を行い、石川知裕氏などへ長時間にわたり自白を強要したり(「石川知裕衆院議員が告白〜裏献金話を捏造し、私を貶めた水谷建設は許さない」(2010/02/20 [Sat] 18:12:51)参照)、多くのゼネコンの関係者をなかば監禁状態にして事情聴取を行うことまで行ったのです。このように違法捜査と判断できるようなことまで行うなど、もはや捜査し尽くしたのです。
やりすぎなほどに捜査をし尽くしたという事情は誰もが分かっているのに、なぜか、検察審査員だけが「本件を解明するために十分な再捜査が行われたとは言い難い」というのですから、不可解としか言いようがありません。
(5) 検察審査会の議決のうち、法律上う、最も問題のある部分は、裁判制度のあり方へ言及した部分です。
「「検察審査会の制度は有罪の可能性があるのに検察官の判断で有罪になる高度の見込みがないと思って起訴しないのは不当であり、国民は裁判所によって、ほんとうに無罪なのか有罪なのかを判断してもらう権利があるという考えに基づくものである。そして嫌疑不十分として検察官が起訴をちゅうちょした場合に、いわば国民の責任において公正な刑事裁判の法廷で黒白をつけようとする制度である」としています。」
イ:「検察審査会の制度は有罪の可能性があるのに〜」と述べているようです。しかし、今回の審議会の議決では、最も重要な「共謀」の立証について具体的な言及がない点からすれば、この議決程度の判断では、有罪の可能性すらありません。
要するに、有罪の可能性があろうとなかろうと、「国民は裁判所によって、ほんとうに無罪なのか有罪なのかを判断してもらう権利がある」といいたいだけなのです。以前の検察審査会の考えも、刑事裁判を「世間に対する情報公開の場所」と同じように考え、検察審査会は、「有罪無罪にかかわらず、法廷で事実関係を明らか」にすべきとしています。
しかし、検察審査会法は、1条において「公訴権の実行に関し民意を反映させてその適正を図るため」としているだけであって、それ以上の権利や制度でもありません。要するに、「裁判所によって、ほんとうに無罪なのか有罪なのかを判断してもらう権利」を国民に付与したものではなく、また、「嫌疑不十分として検察官が起訴をちゅうちょした場合に、いわば国民の責任において公正な刑事裁判の法廷で黒白をつけようとする制度」でもないのです。
誰もがすぐに分かるほど間違った考えなのに、最近、なぜ、こうした珍妙な法律論がはびこるのか、実に不可解です。「やっぱり日本の市民は馬鹿なんだなぁ」ということなのかもしれません。
ロ:こうした珍妙な法律論は、憲法上、採用しえない点が最も注意すべき点です。
刑事裁判を「世間に対する情報公開の場所」と同じように考え、「有罪無罪にかかわらず、法廷で事実関係を明らか」にすべきと考えば、多くの無罪判決がでることになりますが、そのような有罪の見込みない起訴は、日本国憲法17条及び40条によって認められません(「有罪の見込みがない起訴を認めてよいのか?〜検察審査会の強制起訴を巡って」(2010/09/07 [Tue] 20:43:09)も参照)。
「日本国憲法
第17条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。
第40条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。」
(イ) 最高裁判例(最判昭和53年10月20日判決民集32巻7号1367頁)によれば、検察官の行為も(憲法17条に基づく)国家賠償法1条の対象となります。ただし、無罪判決が確定したというだけで直ちに起訴前の逮捕・勾留、公訴提起・追行、起訴後の勾留が違法となるわけではありませんが、<1>逮捕・勾留は、その時点において犯罪の嫌疑について相当な理由があり、かつ、必要性が認められる限りは適法であり、<2>起訴・公訴追行時の検察官の心証は、起訴時あるいは公訴追行時における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば適法といえるとしています(桜井=橋本「行政法」(第2版)(弘文堂、平成21年)380頁以下)。
このように、長年刑事裁判での事実認定を行ってきたという、検察官というプロによって、「各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑」があれば適法となるわけです。
とすれば、有罪の見込みがないのに強制起訴となれば、「各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑」があるとはいえず、当然に違法な起訴と判断され、国家賠償責任が生じることは確実です。このように、国家賠償責任が発生することが確実といえる違法な起訴は、憲法17条に反するものであって、認めるわけはいかないのです。
(ロ) また、無実になった者は、憲法40条により国に対して刑事補償を受ける権利がある以上、無罪となる者の増加は、多額の税金が投下されることになって、他の市民の経済的負担として跳ね返ってくるのです。
もし、「有罪無罪にかかわらず、法廷で事実関係を明らかする」べきと考えると、有罪の見込みがない起訴が多数なされることになりますが、それは、無意味に刑事補償を増加させるだけです。それは、明らかに憲法40条の存在を無視した考えであって、不当というべきです。憲法40条は拘禁された者を救済する規定であって、「金を払えば、どんな起訴でもできる」という人権を抑圧する規定ではないのですから。
ですから、検察庁が証拠を吟味して慎重な起訴を行うのは、憲法40条に適合するものであって妥当な判断なのであって、「有罪の疑いがある以上、国民の前で有罪か無罪か明らかにすべきだ」「国民は裁判所によって、ほんとうに無罪なのか有罪なのかを判断してもらう」とする考え自体が、憲法40条に反するのです。
ハ:刑事裁判は、「黒か白か」を決めるのではなく、「黒か黒でないか」を決める場所であるというのが、法治国家における訴訟理念(合理的な「疑い」があれば罰しない、「疑わしきは」被告人の利益に判断する)なのです(田宮裕「刑事訴訟法(新版)」429頁)。ですから、「刑事裁判の法廷で黒白をつけようとする制度」などという検査審査会の考えは、法治国家において共通する訴訟理念を否定するものであって、およそ採り得ないのです。
4.最後に。
(1) 元検事の高井康行弁護士も「無罪の可能性は十分にある」と指摘しているように、認知症を患っている法律関係者でなければ、そのほとんどが小沢氏は無罪になるだろうと予想しているはずです。
なぜなら、<1>法律論として政治資金規正法違反(虚偽記載)を認めることが困難であること(「強制起訴可能となった検察審査会法は妥当か?〜疑問を呈した小沢発言を契機として」(2010/09/05 [Sun] 16:56:01)参照)、<2>この“捏造”検事である前田恒彦・主任検事は、民主党の小沢一郎元代表の資金管理団体を巡る政治資金規正法違反事件では、東京地検特捜部に応援として派遣され、逮捕した公設秘書(当時)の取り調べも担当したのですから、当然ながら、供述の信用性は認め難いと判断するのが合理的であり、そうすると、「共謀」の証拠が全くないといえるからです。
そして、検察という組織は、有罪にできると判断すれば必ず起訴します(秋山賢三・元裁判官の発言)。その検察官は1年にもわたって起訴しようと画策したのにも関わらず、有罪の証拠がなく、不起訴に終わった以上、有罪にできないと判断することが極めて合理的な判断です。
そうしたなかで、今後、指定された弁護士が、有罪を立証するのは極めて困難です。
(2) 弁護士会のなかでは、前々から、誰が指定弁護士となるのか、話題になっていました。今回の事件については、弁護士の誰もがやりたくないのです。
<1>無罪であることは誰もが分かっているのですから、それなのに有罪を立証しなければならないのですから、「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」という弁護士法1条1項に反する行動をとらなければなりません。弁護士として、一生の汚点となる仕事になってしまうのです。
<2>東京地検特捜部の収集した証拠には、捏造した証拠も混じっているはずですから、その精査もしなければなりません。供述調書は、特に強要した疑いが濃厚なのですから、そのまま無批判に証拠として出すわけにはいかないのです。特捜部が事実上、機能停止している現在、一弁護士が、どうやって証拠の吟味を行い、まともな証拠をだせばいいのか分からないというのが実情でしょう。
さらに、<3>指定弁護士となれば、マスコミは、法律事務所ばかりか自宅にまでに押し掛けてくるのですから、仕事にならないばかりか、私生活さえも奪われかねないのです。いくらコメントしてもその通り報道するわけではなく、妙に歪んだ形で報道することが多く、何の利益ももたらさないのです。いわばマスコミは、単なるハエにすぎないと忌み嫌われれているとさえ言えるのです。
指定弁護士となりかねない弁護士は、そのほとんどが、「無実の者を感情的に起訴することを決断してしまうなんて、やっぱり日本の市民は馬鹿なんだなぁ」と感じたことでしょう。
(3) 翻って考えれば、日本の市民は、馬鹿な行動ばかりしています。
イ:菅直人氏が、外交や経済問題について無知であることは分かっていたのに、民主党代表選において代表に選出し、案の定、沖縄県の尖閣諸島沖(中国名・釣魚島)の日本領海内で起きたで中国漁船と石垣海上保安部(沖縄県石垣市)の巡視船が衝突した事件で、中国に脅された揚句、船長を釈放するという土下座外交を行ってしまいました。
「『ドーナツ化政権』の危機
2010年10月4日
尖閣諸島沖の中国漁船衝突問題によって、菅直人内閣が抱える本質的な弱点がはっきりしてきた。重要な政治判断を求められる局面で「逃げる」のだ。
仙谷由人官房長官は船長釈放の際に「那覇地検の判断を了とする」と語った。地検の捜査は捜査として、中国との関係をどう扱うかは政治の仕事である。
だが「今後の日中関係を考慮した」という地検の判断を含めて了解したとなれば、まさしく政治判断を地検に丸投げしたに等しい。
それだけではない。釈放によって生じる政治責任も「あれは地検の判断」と言って巧妙に回避する意図が透けて見えるのだ。」(東京新聞平成22年10月4日付朝刊【私説・論説室から】
世論は、こうした菅直人政権の行動を批判しています。その非難は正当でしょうが、菅直人氏は無知無能なのですから、こうした事態になることは最初から分かっていたはずです。非難するくらいなら、民主党代表に選ぶべきではなかったのです。
ロ:中国河北省石家荘市で軍事管理区域に許可なく侵入、撮影した疑いで身柄を拘束された建設会社フジタ社員4人のうち3人が釈放されましたが、これは、中国とパイプのある小沢氏のおかげで釈放されたことは明白です。
「民主・細野氏が中国から帰国、水面下交渉か
<日テレ24: 2010年9月30日 23:10 >
民主党・細野前幹事長代理が30日午後、訪問先の中国から帰国した。細野氏は、沖縄・尖閣諸島沖の漁船衝突事件で悪化した日中関係改善に向け、中国政府と水面下での交渉を行ったとみられる。
細野氏は30日朝、あらためて個人的な訪問であることを強調したが、細野氏の周辺によると、今回の訪中は菅首相が指示したという。また、官邸で普天間基地の移設問題などにもかかわった民主党・須川専門調査員らが同行していることや、中国外務省の用意した車で移動していることなどから、水面下で事態打開のための交渉を行ったとみられる。」
「中国国営新華社は同日、「政治資金問題は一貫して日本の政局に影響を与える重要な要素だ」との見方を伝えた。小沢氏は昨年末、民主党国会議員約140人を率いて訪中し、「中日関係に理解があり、影響力もある実力者」と見られている。このため、中国側では中国漁船衝突事件で悪化する両国関係修復に向けた「パイプ役」が不在となるとの懸念が出ている。」(2010年10月4日23時58分 読売新聞)
今回、小沢氏のおかげで3人を解放できたのですが、小沢氏が強制起訴となった以上、今後しばらくは、中国とのパイプが失われることになります。
そうなると、中国の脅しのままに左右されることになることが必至であり、パイプを失った以上、交渉さえも難しくなったのです。中国に遺された、建設会社フジタ社員の1名が、何時戻ってくるのか、不透明になってしまいました。検察審査会は、一時の、メディアに影響されたまま、小沢氏を怪しいと感情的に行動し、その結果、人命を危険にさらし、実に愚かで国益に反する行動に出てしまったのです。
中国としては、小沢氏というパイプがいなくなったせいで、自由にごり押しが可能になったのですから、大笑いという感じでしょう。そして、今後もまた、菅直人政権は、外交音痴の醜態をさらすことになるのです。
(4) 法律関係者はもちろん、他の分野の専門家の意見を聞けば誰もが同じことを言うはずです。
「メディアは間違ったことばかり書いている。間違っていると説明しても、まるで訂正しようとしないし、まったく馬鹿な奴らだ。メディアの間違いを妄信して過激な行動に出る日本の市民もどうかしている。少しは自分の頭で考えたらどうか。」
と。
日本の市民は、間違った報道に強く影響され、自分で自分の首を絞めてしまうのです。そして、ときどき、自分の首が閉まっていると悲鳴を上げるのです(菅直人氏の行動を非難するなど)。日本の市民は、いつ自分の首を絞めていることに気付き、自分の首を絞めることを止めるのでしょうか。
少なくとも、無実の者であっても起訴することを認めるような馬鹿げた検察審査会の行動を止めるために、無罪の場合には検察審査員の氏名を公表するべきです。これくらいは自己責任の範囲にすぎず、責任の重さを自覚させるのに相応しいものといえるからです。できれば、検察審査員に損害賠償責任を負担させるような法改正を行えば、少しは市民が、自己責任に目覚めることになるのではないでしょうか。
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