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菅直人政権について「内閣支持率下落53%−中国人船長釈放『不適切』7割」「検察への信頼低下68%」などと読売新聞が10月1日付け朝刊1面トップと3面「総合面」、9面を使い、全国世論調査(1〜3日、電話方式)の結果などについて報じた。
回答者の多くが、菅首相、仙谷由人官房長官の尖閣諸島沖での中国船衝突事件に対する不手際を不適切(72%)、外交・安全保障政策に不安(84%)と感じているのが、支持率低下の最大の理由である。菅政権にとっては、大打撃だ。
だが、これは、「外交防衛政策」について「政権担当能力がない」という冷厳な判定であるから、当然至極の数字である。「脱小沢」を国民に印象づける改造内閣が比較的高支持率(66%)でスタートしてまだ1ヶ月も経ていないのに、このスピード下落である。つまり、「脱小沢」効果の効き目なく、「政権担当能力がない」という自業自得の結末であり、今後、支持率回復の見込みは、ほとんどないだろう。
ところが、この日午後3時50分ごろ、小沢一郎元代表の政治資金管理団体「陸山会」の収支報告書記載に関して政治資金規正法違反(虚偽記載)罪について審査していた東京第5検察審査会が「起訴すべき」との議決をしたとテレビ各社が速報したため、政界に激震が走った。議決は、民主党代表選が行われていた9月14日に行われており、文書化するのに手間取り時間がかかったという。
しかし、それにしても、菅首相がASEM首脳会談出席のめ、ブリュッセルに出張中を狙い撃ちしたような発表である。しかも、読売新聞が「内閣支持率下落53%」と報道した当日に、発表とは、タイミングが合いすぎ、いかにも「作為的」である。だからと言って、菅政権の支持率が回復するはずはないのである。
問題は、これからの裁判手続きである。検察審査会が、東京地裁に強制起訴して、検察官役の弁護士が選任されるまでに、約半年かかり、それから裁判が始まる。だが、これは第一審であり、小沢一郎元幹事長側は、「無罪判決獲得」を目指して法廷闘争を繰り広げ、第2審東京高裁判決、第3審最高裁判決へと長期裁判になる可能性が大である。
無罪有罪にかかわらず、「10裁判」(鈴木宗男前衆院議員の裁判は、8年かかっている)となるということである。その間に、皇室において、「慶事」があれば、「恩赦」ということもあり得る。田中角栄元首相の場合、@東京地検特捜部は昭和51年7月27日、ロッキード事件で逮捕、A8月16日、受託収賄罪と外為法違反罪で東京地裁に起訴、B東京地裁は昭和58年10月12日、田中元首相に懲役4年、追徴金5億円の実刑判決、即日控訴(「不退転の決意」)。ここまで来るのに7年2か月を要した。10月26日、中曽根康弘首相が田中元首相に「自発的辞職」を勧告。(それでも辞職せず)
昭和60年2月7日、竹下登が創政会を発足。2月27日、田中元首相は、 脳梗塞で倒れ入院。言語障害や行動障害が残り、政治活動は不可能に。6月、田中事務所が閉鎖。9月、 ロッキード事件控訴審開始、田中は欠席。
昭和61年7月の総選挙で、トップ当選。田中は選挙運動が全く行えず、越山会などの支持者のみが活動。自民党圧勝。昭和62年7月4日、竹下が経世会を旗揚げ。田中派の大半が参加。二階堂グループは木曜クラブに留まり、中間派も含めて田中派は分裂。7月29日、ロッキード事件の控訴審判決。東京高等裁判所は一審判決を支持し、田中の控訴を棄却。田中側は即日上告。
平成元年10月、田中直紀が次期総選挙への田中角栄の不出馬を発表。平成2年1月24日、衆議院解散により政界を引退。衆議院議員勤続43年、当選16回。各地の越山会も解散。ここまでくるのに、14年が経過した。平成4年12月、経世会分裂。平成5年12月16日、75歳で死去。ロッキード事件は上告審の審理途中で公訴棄却となる。逮捕されてから、17年4か月後のことだった。
さて、菅首相、仙谷官房長官らは政権発足当初、小沢一郎元代表が強制起訴された場合、「離党勧告」することを決めていた。枝野幸男幹事長が、勧告係を担当すると手を挙げた。その後、9月の代表戦後は仙谷官房長官が「勧告する」ことにしていた。だが、いまは、仙谷官房長官ら執行部側が「勧告する」ことはせず、小沢派あるいは小沢支持派に勧告させることにしており、輿石東参院会長の名前が取りざたされている。
ただし、仮に小沢一郎元代表が離党することになった場合、小沢一郎元代表とともに離党する者が出る可能性がある。その人数によっては、菅政権が崩壊の危機に立たされる。そうなれば、政界再編が一気に進み、小沢一郎元代表が「闇将軍」として、身代わりを立てることになる。
たとえば、原口一博前総務相が、最有力候補(小沢一郎元代表に了解を得て、10月1日、自民党の岩屋毅元外務副大臣らとともに超党派の「国家主権と国益を守るために行動する議員連盟」=主権議連=を立ち上げている)となろう。
この意味で、小沢一郎元代表の強制起訴は、「脱小沢」の菅政権にとっても、劇薬として降りかかる大変な事態であり、菅首相、仙谷官房長官らは、喜んではいられない。
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