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平成22年9月24日発行
発行人 南丘喜八郎
編集人 坪内隆彦
発行所 株式会社K&Kプレス
TEL 03(5211)0096
FAX03(5211)0097
(転載承諾済)
菅直人の仮面を剥ぐ! 文藝批評家 山崎行太郎
第94代内閣総理大臣・管直人。16年振りに非世襲議員として首相に就任した彼は、市川房枝と共に市民運動に従事していたという経歴を持つ。薬害エイズ事件においてもその本領を遺憾なく発揮し、官僚と果敢に闘い国家の責任を厳しく追及した。しかし現在では、かつてのように官僚と闘う姿をもはや垣間見ることさえできない。今回の民主党代表選挙において小沢一郎氏に勝利し、総理としての職を続けることになった菅直人という政治家の本質は、一体如何なるものなのか。文曇批評家の山崎行太郎氏に話を聞いた。
薬害エイズ事件を利用した管直人
── 菅氏は薬害エイズ事件の時の活躍によって、一躍その名を挙げた。最近もエイズ治療に関する写真展「命をつなぐ」を視察するなど、それが政治家としての彼のアイデンティティとなっている。
山崎 菅氏が厚生大臣だった頃、いわゆる薬害エイズ事件が起こった。菅氏は国の責任を認めて被害者に謝罪し、国を相手取って裁判を起こしていた被害者との和解にこぎつけた。こうした彼の行動に対して、当時の世論やマスコミは喝采を送った。
しかし、結論を先に言えば、菅氏はエイズ事件の真相をよく知らないままに謝罪し、その責任を役人と製薬会社、そして当時マスコミで責任を追及されていた帝京大学元副学長・安部英氏に押し付けたのだ。しかし、菅氏がやったことは完璧なスタンドプレイだった。安部氏に全責任を負わせることには無理があったのだ。
当時のマスコミの論理は、加熱製剤なら発病しないことを知っていたにもかかわらず、安部氏は、エイズ感染の原因である非加熱製剤を使い続け、殺人に荷担したというものだった。しかし、1984年の段階では、非加熱製剤から加熱製剤への切り替えは、欧米各国においても充分に行なわれていない。また、ギャロ博士のようなエイズ研究者達でさえ、その時点では原因がわかっていなかった。それは、ギャロ博士、モンタニエ博士、シヌシ博士等の証言で明らかになっている。
しかも、非加熱製剤を使い続けたのは、製薬会社に便宜を図るためであり、安部氏は製薬会社から見返りとして多額のカネをもらっていたと言われていたが、まったくデタラメだったということが裁判を通じて証明されている。菅氏はこれらのことを知ってか知らずにか、ご自慢の著書『大臣』(岩波新書)に手柄話として得々と書き連ねている。笑止というしかない。
閑話休題。事件の起こった当時、日本各地で「エイズパニック」が起きていた。例えば1986年、長野県松本市において、エイズを発症していたとされるフィリピン人女性が松本市内で売春行為をしていたことが伝えられたため、マスメディアは松本市内に大挙して押しかけ、女性が働いていた店や、客となった男性などを探しまわり大騒ぎとなった。
恐怖がさらなる恐怖を引き起こす中、世論は薬害エイズの諸悪の根源を求めた。そうした中、薬害エイズの原因である非加熱製剤を三十代の男性患者に投与して死亡させたとして、安部氏が逮捕された。そして、一連の薬害エイズ問題の全てが、安部氏に責任があるかのような世論が形成されていたったのだ。
このような渦中において、菅氏は厚生省が薬害エイズ被害を防ぐために必要な手を打っていなかったことを証明する重要な証拠、「郡司ファイル」を発見≠オ、謝罪会見を行ったのである。そして産業・官僚・学界の癒着という構造にメスを入れたとして、脚光を浴びたのだ。
しかし私は当時から、彼の振る舞いが世論に便乗して自らの人気を獲得しょうとするパフォーマンスにしか見えなかった。実際、菅氏の謝罪を受けた東京HIV訴訟(薬害エイズ事件)原告、川田龍平氏(現・みんなの党副幹事長)は「菅大臣が謝罪したとき、皆が泣いて喜んでいたけれど、自分は全然うれしいとは感じなかった。だって、何を謝っているのかわからなかったから」と述べていた。
現在では、「郡司ファイル」とは、厚生省内において日常的に使用する事のないメモなどを、当時の厚生省生物製剤課長・郡司篤晃氏がまとめたファイルであり、彼の個人的見解が書かれていたにすぎず、菅氏の言うような重要な証拠でも何でもなかったことが明らかになっている。
薬害エイズ事件は櫻井よしこの捏造だ
── 何故そのような世論が形成されたのか。
山崎 それは、櫻井よしこ氏の責任が大きい。櫻井氏は当時、『NNNきょうの出来事』のキャスターだった。彼女が外出中の安部氏を執拗に追い回し、それにより怒った安部氏がマイクを振り払った時の映像が、番組では何度も何度も放映された。これにより、薬害エイズ事件について詳しく知らない視聴者は、安部英=悪人≠ニいうイメージを植え付けられてしまった。
このイメージ操作には、小林よしのり氏も一役買っている。
彼もまた『ゴーマニズム宣言』において、安部氏を醜悪な似顔絵で描き、徹底的に中傷していた。 これは、仮想敵≠創り上げて扇情的にバッシング報道を繰り返すという、劣化した論壇・ジャーナリズムによく見られる傾向だ。鈴木宗男氏の逮捕された事件や、小沢一郎氏の政治とカネ≠フ問題においても同様である。こうした単純な言論方法が、横井氏や小林氏の常套手段である。最近彼らは保守論壇において、対外的には中国や北朝鮮を、対内的には日教組や在日朝鮮人を仮想敵≠ニしてバッシングを繰り返している。
── 2001年3月28日、業務上過失致死罪に問われていた安部氏に対して、東京地裁は無罪判決を言い渡している。
山崎 安部氏の無罪判決はあまりにも当然の結果だった。
実際、櫻井氏は当時の自らの言論が誤っていたことに気付いている節がある。というのも、彼女の実質的デビュー作である『エイズ犯罪血友病患者の悲劇』(中央公論社、1994年)は、厳密な意味で絶版かどうかは分からないが、版元でも「在庫無し」「重版予定無し」という状態だ。もちろん、何処からも「復刊」「復刻」されていない。何故か。そこに書かれていることの多くが間違いだったことが判明しているからだ。
詳しくはエイズ裁判の弁護士だった弘中惇一郎・武藤春光編著の『安部英医師「薬害エイズ」事件の真実──誤った責任追及の構図』(現代人文社)を参照していただきたい。櫻井氏の言論が如何に偏向していたか、詳細に記述されている。
しかし、菅氏はそのことを知らないらしい。それ故、所信表明演説や民主党代表選においても、薬害エイズ事件を自らが解決したかのように自慢話の一つにしているのであろう。
先述の『大臣』にも、都合のいいことしか書いていない。増補版に安部氏が無罪になったことは小さく書いてあるが、説明はない。
自慢話の捏造がばれたら困るからだろうか。
管直人はボピユリストだ!
山崎 菅氏は人気を得るためだけではなく、物事を有耶無邪にするためにもパフォーマンスを行っている。それは、腸管出血性大腸菌0157により発生した食中毒への対応において為された。食中毒が多発した当時、厚生大臣だった菅氏は、原因食材の断定に至っていないのにも拘らず、カイワレ大根が0157の感染源であるかのような誤解を招く会見を行った。これにより多くのカイワレ農家が破産し、農家の中には自殺する方もいた。そして、それに対して菅氏がとった対応が、マスメディアの前でカイワレ大根を食べてみせるというものだった。これをパフォーマンスと言わずして何と言うか。
実際この問題に関しては、厚生省の発表で出荷が激減したとして、「日本かいわれ協会」らが国に損害賠償を求めて訴訟を起こし、国が敗訴している。
民主党が小泉郵政選挙で敗れた時、菅氏は日本社会のポピュリズムを嘆き、「一億線白痴」と国民を罵倒した。しかし、彼が政治家として名を馳せたその手法は、まさにポピュリズムそのものであったのだ。
地方を切り捨てる菅政権
山崎 白熱した民主党代表選挙においても、菅氏はパフォーマンスを繰り返した。最初は小沢一郎氏の主張する政策に批判的であったにも拘らず、小沢氏の政策が聴衆に人気があるとわかると、小沢氏の政策を真似始める。最後には、小沢氏とほとんど同じ主張をするという始末だ。最後の演説では、小沢氏のキイワードを横取りして、「私にも夢があります」と言っていた。しかし、いくら小沢氏の口真似をしたところで、その生き方、つまり姿、形まで真似ることはできない。本居宣長の言うように、「意は似せ易く、姿は似せがたし」だからだ。
菅氏は「一に雇用、二に雇用、三に雇用」などと言い、現在学生などの志望する雇用先に偏りがあるため、この偏りを是正すべく、福祉や環境の分野における雇用促進を主張していた。しかし、この発想は、仕事と金がない人間はとりあえず福祉か環境の仕事に就け、というものだ。
人間には職業選択の自由というものがある。全ての人間が生活のためだけに仕事をしているわけではない。給料や儲けが少なくとも、自分の選んだ仕事に喜びと誇りを感じている人も大勢いる。とりあえず金を稼げればいいという発想は、小泉・竹中コンビの進めた新自由主義政策と何ら変わらない。
それに対して、小沢氏の主張は旧来のバラマキ政策にすぎないと非難された。しかし、日本経済を引っ張っている東京の労働者の大半は地方出身者である。彼らが一人前の労働者として自立できるよう教育投資をしてきたのは、地方なのだ。
東京都はその税収の多さを誇り横柄な態度を取っているが、彼らは地方が投資してきた労働者によってもたらされる成果の上前をはねているにすぎない。地方の成果は地方に還元すべきだ。それはバラマキでも何でもない。こうした循環は、政治家が率先して為さねばならないことなのだ。
恩師・市川房枝をも利用する
── 市民運動家といえば、国家権力に屈しないというイメージがあったが。
山崎 私は左翼市民運動家というものを信用していない。彼らが時期を見計らって転向し、上手く立ち回って権力や利権に接近していく様を、若い頃から嫌というほど見てきたからだ。
その典型的なものが、市民運動家時代の菅氏の振舞いだ。
彼は、最近も代々木にある市川房枝記念館に出かけて、政治的師匠・市川房枝と弟子・管直人という美談作りに勤しんでいた。しかし、市川房枝は菅氏のことを、本当に弟子だと思い借用していたのだろうか。例えば、『私の国会報告』(市川房枝記念会出版部)において、市川房枝は菅氏を次のように批判している。
《菅氏は1976年12月5日の衆議院選挙の際、東京都第7区から無所属候補として立候補した。このときは立候補をしてから私の応援を求めて来た。そのとき推薦応援はしなかったが、50万円のカンパと秘書(市川氏の)らが手伝えるように配慮し、「自力で闘いなさい」といった。ところが選挙が始まると、私の名前をいたる所で使い、私の選挙の際カンパをくれた人たちの名簿を持っていたらしく、その人達にカンパや選挙運動への協力を要請強要したらしく、私が主張し、実践してきた理想選挙と大分異なっていた。》
反論のできない亡くなった方を利用して、自らの人気取りのためのパフォーマンスを行う。もはや政治家以前の問題だ。
転向を繰り返す管直人
山崎 菅氏は市民運動家から、米国と官僚の手先へと転向した。菅氏にとって市民運動家という出自は、都合の良い時に利用する仮面に過ぎない。実際、沖縄普天間基地問題ではその仮面をかなぐり捨てて、国民や住民の意思を無視したまま、自ら進んで米国の「奴隷」と成り果てた。また、脱官僚を訴えながらも、その実質は官僚の掌の上で踊らされていると言えよう。いや、官僚と共闘していると言った方が良いかもしれない。財政危機を克服するために消費税率を10%に引き上げる、日米同盟を維持するために米海兵隊普天間飛行場の辺野古への移設を強行する、全ては官僚のシナリオである。
── 何故、左翼は転向を繰り返すのか。
山崎 左翼が簡単に転向し、あるいは教条主義に陥るのは、例えば田舎に住む父親や母親、兄弟姉妹に象徴される日本的な下層大衆というものの存在を軽視し、無視または軽蔑しているからだ。文藝批評家の吉本隆明氏は『転向論』(講談社)において、戦後に頻発した転向の原因について、「日本的転向の外的条件のうち、権力の強制、圧迫というものが、とびぬけて大きな要因であったとは、考えない。むしろ、大衆からの孤立(感)が最大の条件であったとするのが、わたしの転向論のアクシスである。」と述べている。逆に右翼・保守派と言われるような人たちが、なかなか転向しないのは、そういう田舎に住む下層大衆と共にあるからだ、と言うことが出来よう。
とはいえ、戦前における本物の左翼や、連合赤軍に代表される急進的な左翼が転向することはあまりなかった。彼らはむしろ、菅氏のように権力の間を上手く泳ぐ人間を嫌悪していた。また、たとえ転向したとしても、そこには大いなる葛藤があったのだ。それ故、例えばソ連が崩壊した時に、自ら筆を折り、二度と言論界に足を踏み入れることのなかった共産主義者もいた。たとえ考え方が違っても、ここまで筋を通すことができる人間に対しては、私はシンパシーを抱いている。
ところが菅氏には、そうした葛藤など全くない。責任や給拝を持たない彼の言動は、現在のような思想が劣化した時代を象徴している。テレビやマスコミの報道を見て、なんとなく¥ャ沢氏が悪人であると感じたり、なんとなく′沁@が正義の味方であると感じたりする。全ての物事は雰囲気に流され、一体どこに向かっているのかわからない。まさに、菅氏の振舞いそのものだ。管直人という政治家を生んだのは、こうした時代の空気だと言えよう。
菅氏は市民連動家という仮面を振り回し、あたかも一般市民の気持ちがわかる政治家のようなパフォーマンスを行っている。しかし、所詮それは仮面に過ぎない。彼は自らの権力の邪魔になるようであれば、下層大衆であれ何であれ、平気で切り捨てる。そして、そこに良心の呵責など微塵も感じない。
思想や哲学のない政治家ほど恐ろしいものはない。一歩間違えれば、彼は仙谷氏等を使って、警察権力や検察権力と手を組み、秘密警察国家的な独裁国家を形成するだろう。それ故、私は菅氏が政治家である限り、徹底的に批判を続けていくつもりだ。 43頁
月刊日本編集部ブログ
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