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平成22年9月24日発行
発行人 南丘喜八郎
編集人 坪内隆彦
発行所 株式会社K&Kプレス
TEL 03(5211)0096
FAX03(5211)0097
(転載承諾済)
菅政権続投でも余命は六ヵ月だ 元参議院議員 平野貞夫
── 菅代表の続投が決まった。今回の小沢氏の敗因はどこにあったのか。
平野 小沢氏が総理になることを恐れた勢力、すなわち、反小沢派、官僚、海外勢力、それらと結びついて既得権益を維持しようとする新聞・テレビを中心とするマスコミの決死の巻き返しに敗れたということだ。だが、これらを理解するためには、鳩山政権から菅政権への移行、そして代表選にいたるまでの混迷を詳しく知る必要がある。
── 民主党代表選に至るまで、菅サイド、小沢サイドともに、出馬するかしないかで二転三転があった。新聞・テレビも、8月30日の夕方に小沢氏が代表選出馬を中継で発表するまで、小沢氏不出馬と読んでいた。ここに至るまで、6月からの政変はいったい何だったのか。
平野 参議院選挙直前に鳩山・小沢が退陣したのは、本誌8月号でも指摘したように、小沢氏の発案だ。小沢氏は「政治とカネ」で反発を強める世論を前に、自らが退くことで菅首相による挙党一致体制が固まり、これによって参議院選挙で勝てると踏んでいた。問題は、鳩山内閣から菅内閣への移行の間に、決して政治空自を作らないことだった。北朝鮮情勢は緊迫していたし、ヨーロッパの経済も危機的だった。
5月28日午後三時過ぎには小沢は私に電話をしてきて、その時には鳩山首相を辞任させるハラを決めていた。私は内閣不信任を出させるようなスキを与えてはダメだ、瞬間的に、政治空自を作らずに移行しなければならないと答えた。
6月1日には輿石東参院会長、鳩山首相を雪隠詰めにし、翌2日に返事をもらう確約を取った。実際、2日の午前中までは、すべては順調だった。この午後に突然、反小沢サイドから首姓指名は8日に行ないたいと連絡があった。
この時に、挙党態勢は崩れ去ったと言って良い。菅サイドは、2日の鳩山辞任から8日目の首斑指名まで、政治空自を作ってしまった。彼らに国家意識がないのは明らかだ。国家を政治空自という危険にさらしてまで、彼らが何をやっていたかというと、小沢外しのクーデター計画なのだ。人事・政策が策定しないうちに政権を引き継げば、「挙党体制」として、彼らが望んでいた小沢排除が不可能になる。だから政治空白を作ってまで、時間稼ぎをしたのだ。
これによって国会会期もギリギリとなり、郵政改革法案も流れ、さらに野党から提出された首相問責決議案も議院運営委員会で握りつぶすという暴挙を行わざるを得なかった。また、小沢路線との違いを強調するためにマニフェストの見直し、消費税増税を掲げたが、それによって一人区の惨敗をもたらしたことは、記憶に新しい。
所詮、菅氏も仙石氏も、市民運動家出身と弁護士出身であり、議論というものが理屈で相手を言い負かせばいいものだと思っている。しかし、政治における議論とは、真摯に相手の言い分に耳を傾け、政策を摺りあわせていくことだ。理屈を振りかざし、議論に詰まると相手の古傷に手を突っ込むような下品さでは、到底、野党からの信頼など得られないことは明らかだった。ねじれ国会において野党の信頼がなければ、政権は遅かれ早かれ必ず崩壊する。
問題は、長く持っても来年三月までと見られていた菅政権が自滅するまで待つか、それとも代表選で首相を交代させるかだった。
小沢が本格的に、代表選出馬の意向を示したのは、8月19日の軽井沢で行われた鳩山勉強会のころだ。このころ、円高株安は危険水域に達し、経済は待ったなしの状況だった。米国のドル安政策は日本の経済危機を目前のものとしていた。
また、参院選挙惨敗直後から、官邸周辺から検察へ小沢をなんとしても起訴しろとの指示が出たとの怪情報もあった。真偽は定かではないが、官邸周辺が小沢排除に懸命であったことは事実だろう。
8月25日には「小沢塾」が開かれたが、このころにはハラはおおよそ固まっていた。この勉強会で小沢氏は出馬について触れなかったと報道されているが、それは正しくない。マスコミも前にした講演で小沢氏は「人づくりが大事だ」と語ったが、これは、仙石氏ら反小沢派への宣戦布告だった。
私の政治の師・前尾繁三郎(衆院議長)は「政治家である前に人間であれ」と語っており、小沢氏もこの言葉の重みをよく理解している。「人づくり」に言及したのは、仙石氏らが政治家以前に人間としてダメだ、ということを意味している。彼らではダメだから、小沢一郎本人がもう一度最初から、次代を担う政治家を育てようという決意表明だ。
だが、小沢氏にとっては昨年8月30日の「政権交代」の意義を成就することも大事だった。できることなら、民主党を割ったりせず、挙党態勢で党を立て直したいという意向もまだ残っていた。だから鳩山前首相の仲介により、仙石が外れれば、「トロイカ+1」で挙党体制を組もうという方向になった。これは8月30日だ。しかし、その夜、前原や野田ら反小沢派が徹底抗戦をし、菅首相を突き上げた。菅は思想・哲学なき軽挙妄動の風見鶏で、首相の座にしがみついていられさえすればいいという権力志向だけの人間だ。自分の支持基盤から突き上げられたことで、仙石外しも断念する。
また、仙石氏も密かに野中広務氏と会い、小沢排除のノウハウの教えを受けていた。まさに私が「仙石氏は民主党の『野中広務』だ」と喝破したとおりだった。さらに仙石氏は米国側とも密会を重ねていた。要するに、仙石氏は小沢排除のために、旧自民党化、対米従属への傾斜を強める、政権交代の理念の「逆コース」を歩んでいたわけだ。
ここに至って、小沢氏も自らが代表選に挑む覚悟を固めた。
今回の代表選とは、反小沢派が小沢を排除しようという選挙だったのだ。
マスコミが小沢を恐れた理由
── 民主党代表選は、未曾有の泥仕合となった。特に投票直前に出所不明のスキャンダル写真が某テレビ局から週刊誌へ流されるなど、露骨な小沢氏への攻撃は目に余るものがあった。
平野 官邸・官僚・メディアを巻き込んでのスキャンダル合戦となったが、これにもう一枚、海外の勢力が絡んでいるとみて間違いない。これら四つの勢力に取って、小沢一郎という政治家は、手に負えない存在なのだ。
とりわけ、官邸、官僚と海外勢カには不適切な関係が結ばれている。たとえば、サブプライムローンで焦げ付いた不良債権を、日本が外貨準備金を取り崩して買わせられている可能性が高いと私は見ている。菅氏が財務大臣に就任してすぐに変心したのには、こうした恐るべき秘密を官僚たちから打ち明けられたからではないのか。そうだった場合、消費税を上げることでドル崩壊に備えようという官僚の理屈を飲み込んでしまうのも無理はない。ドルが崩壊すれば相対的に日本円、日本国債も上昇し、その利率も高くなり、財政赤字を圧迫することになる。その事態に対処するには消費増税しかないという官僚の発想だ。だが、まさにそうした官僚主導政治こそ小沢氏が打破しようとしている政治そのものだ。それを官僚たちは恐れたのだ。
また、メディアにとっても小沢氏は恐るべきものだった。それは、記者クラブの開放などというレベルのものではない。
小沢氏が進めようとしたのは、新聞社がテレビ局を所有するというクロスオーナーシップの禁止と、安すぎる電波料金の改定だ。これは、テレビ局、新聞の両者の根幹を揺るがす問題提起なのだ。
新聞がテレビ局を所有し、新聞とテレビが同調した報道スタンスを取ることは、世界的に見ても健全ではない。そこに報道の自立、独立は担保されていない。民主主義先進国のようにクロスオーナーシップは廃止すべきだ。電波は国民の財産なのだから、それを利用して儲けているテレビ局には、それ相応の料金を支払ってもらうべきだ。そして、閉鎖的な記者クラブは潰し、会見に来たい人は誰でも参加できるよう開放すべきだ。
これに肝を潰したのが、とりわけ毎日、産経を始めとする経営状態の悪い新聞=テレビメディアだ。彼らは必死になって世論操作をし、恣意的な「世論調査」で菅支持が80%という情報操作を行った。これによって、揺れ動いている国会議員たちにゆさぶりをかけたわけだ。
今回、党員・サポーター票は菅氏が249ポイント、小沢氏が51ポイントで菅氏の圧勝のように見えるが、300選挙区で多数を取った陣営がその区の1ポイントを取るという選挙制度のため、実態が見えにくくなっている。投票数で見ると菅代表が137,998票、小沢前幹事長が90,194票で約4万票差、3対2の比率となっている。マスコミの報道通り8対2どころではなく、かなり措抗していたのだ。
マスコミによる世論調査の嘘も、限界に来ている。かといってネットの世論がそのまま信頼できるかというとそうでもない。ネットには冗談半分で投票する人もいるし、テレビしか見ていない人がテレビの報道に左右されるのと同じように、ネットで政治に関心を持つ比較的真面目な人々の意見が世論全体を代表しているとも言えない。
ここで一つ参考になるのは、Yahoo!によるアンケート調査のように、同一投票を制限したアンケートで、しかも総数が三十万票近くある調査だ。ここでは菅・小沢両氏の支持はほぼ拮抗する結果が出ており、実際の獲得票数に近い。
新聞などが行う世論調査の母集団は千人から二千人程度であるのに対し、母集団が数十万票という単位であれば、比較的正確に世論動向が見えるし、電話回答で回答を誘導されることもない。無論、まだまだ技術的問題はあるだろうが、今回の結果は、一般報道の「菅圧勝」よりも、はるかに現実の結果に近い数字が出ていたと言える。
今後、確実に世論調査そのもののあり方が問われることになるだろう。
議会制民主を守った代表選出馬
── 小沢氏には「政治とカネ」のレッテルが貼られ、最初から不利な戦いを強いられた。
平野 検察審査会で「起訴相当」となる可能性がある人間が、代表選に出てはならないという議論があり、実際、岡田克也外務大臣もそう発言したが、むしろ、この検察審査会の問題こそ小沢氏を代表選出馬に決意させたのだ。それは、議会制民主主義を守るということだ。
本来、政治と検察は緊張関係にあるものだ。検察には強大な権限が与えられている一方、政治家には不逮捕特権も認められているのは、検察が介入することによって政治が歪められてはいけないからだ。今回の検察審査会の問題は、検察が公判維持不可能と判断し、諦めたような、受理してはいけないような案件を受理してしまったことにある。このような申立人も不明なような案件で、「検察審査会の審査待ちだから出馬せず」という前例を作ってしまっては、議会制民主主義が根元から崩れることになる。政治的暗殺がいつでも可能な社会になってしまう。司法の暴走を誰も止められなくなる。 憲法75条条項を利用して、検察審査会が起訴相当と議決した場合でも、訴追を逃れるのではないかと悪意ある質問もなされたが、小沢氏は明確に「その場合はきちんと正面から受ける」と明言した。これによって、検察審査会が議会制民主主義を破壊する芽は絶たれたのだから、やはりこの出馬は正しかったと言える。小沢氏は議会民主政治に正しい先例を作ったのだ。
── 検察による捜査そのものが、無理に無理を重ねたものだった。
平野 かつて「巨悪は眠らせない」と言った伊藤栄樹検事総長は、私の友人に「捕まえるやつのリストはもう決まっている」とも言った。そのリストには小沢も入っていた。
昔から、検察は官僚の意向に従わない人間は捕まえるという性格なのだ。
小沢氏は金の処理については、田中・竹下・金丸ではなく、父親の佐重喜氏から学んでおり、厳正に法に適った処理をしている。土地購入が悪いことのように報道されているが、土地購入は頂いた政治献金を効率よく運用し、政治に用いるということで政治資金規正法でも認められているものだ。
自由党、保守党分裂の折には党の助成金を保守党に分配しなかったとの非難がなされているが、それは実は私の責任だ。
小沢氏は「保守党にも分けてやれ」と言ったのを、私が制止したのだ。だが、これのおかげで民主党は政権交代できたのだから、民主党内からとやかく言われるものではない。
── 小沢氏の掲げた政策を「バラマキだ」「財源がない」と批判する声もあった。
平野 まず、バラマキという批判はあたらない。子ども手当満額支給にしても、農家戸別支援にしても、それらは社会のセーフティネットだ。安心して子育てできる社会、国家の食糧を供給する農家が安心して農業に取り組める社会でなければ、とても安定など望めない。
財源については、無利子国債によって1500兆円にのはる民間資産を活用することが可能だ。また、この未曾有の円高を活用して、レアメタル、レアアース、さらには知的資産を買い漁っておくことが、日本経済の安定にもつながる。
これは私の発案だが、さらに民間にも活用されることなく眠っている埋蔵金がある。坂本龍馬のように心眼で見れば、そういった新たな財源も見えてくる。
要するに、知恵を出せばいくらでも財源はあるのだ。無利子国債を「金持ち優遇だ」と批判する声もあるが、金持ちには別のところで大いに負担してもらえばよいだけだ。
官僚や守旧派の連中は、いまだに「経済成長」だと言っている。しかし、産業構造そのものが変化し情報化社会となった現代は、右肩上がりの成長の時代ではない。人間もどんどん成長する時期もあるが、やがて成長も止まり、成熟の時代を迎える。同じように、経済も成長ではなく、成熟の時代なのだ。それは、欲望を野放しにする時代から、共生社会への転換が迫られているということなのだ。 だが、民主党はこうした小沢氏路線を捨ててしまった。それが今回の代表選の最も大事な点だ。
日本は未曾有の混乱を迎える
── 今後、小沢氏および小沢グループはどう動くのか。
平野 小沢氏は軽々に党を割るという意志はない。挙党一致体制で政権交代の理念を実現するということが、勝敗にかかわりなく小沢氏が目指していたものだ。
これまで見てきたように、今回の選挙は反小沢派が束になって、必死に小沢氏を排除しようとした選挙だった。それは、竹下以来の経世会・守旧派であり、対米従属派であり、検察・官僚主導政治であり、それらと複雑に絡みついて利権を維持してきた大手マスコミたちとの闘いだった。
結果として、守旧派勢力、対米従属、マスコミ主導の政治が今後も続くことになる。そして一方で、彼らは小沢氏の政治生命を絶ちに来るだろう。なぜなら、どんなに頑張っても菅政権はもっても、来年の三月までだからだ。ねじれ国会のうえ、党内には小沢派という「党内野党」も抱えている。
菅・仙石という徳もなければ功もない人間たちでこの難局を乗り切るのは不可能だし、左翼出身らしく、彼らは彼らの内部ですぐに内ゲバを起こすだろう。
繰り返すが、小沢氏が目指したのは昨年の政権交代の理念を実現することだ。小沢氏はその実現のために、決して諦めることはない、ということは覚えておく必要がある。
菅首相の続投が決定したとたん、円高が進み1ドル82円台と海外市場は、最悪の事態となった。これからの日本経済は未曾有の混乱となろう。数年前、菅氏本人と小沢氏から言われ、菅氏の政治アドバイザーをやっていた私は、不十分なアドバイスで国民に迷惑をかけていることに責任を感じている。
同時に、菅首相を続投させた人たちの責任も大きい。
平野貞夫(ひらの・さだお)
1935年生まれ。法政大学大学院修士課程修了。園田直副議長秘書、前尾繁三郎議長秘書などを経て、92年に参議院議員初当選。自由民主党、新生党、新進党、自由党などを経て、2003年民主党に合流。04年に政界引退。著書は『平成政治20年史』『国会崩壊』など多数。
月刊日本編集部ブログ
http://gekkan-nippon.at.webry.info/theme/f8d87a0196.html
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