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2010-10-01
■凛の会郵政不正事件-検察の良心、塚部貴子前特捜検事を守れ
この腐りきった大阪特捜部の中でひとりの良心ある検事がいたという話だ。
「週間新潮2010,10,7号」で改めて経緯が報告されているが、大阪特捜部の幹部たちが前田の故意の改竄を知らなかったとしらを切り通せないことだけははっきりしている。
これまで明らかになっている情報と「週間新潮」に沿って事実経過を追うと、佐賀元特捜副部長も大坪前特捜部長も「操作による改竄」などではなく、公判担当をしていた検事たちから前田が明らかに意図的に操作したものであることが報告されていた。
最初に把握したのは、大阪地検刑事部から村木取り調べに応援に入った國井弘樹検事だった。
初公判後、國井検事が前田にFDの日付が問題になっていると伝えると、前田は「FDに時限爆弾を仕掛けた。日付を変えた。」と打ち明けたそうである。
この時点で、前田は國井検事の事務官が作成した捜査報告書が、法定に提出されていたことを知らなかった。お粗末な話である。
これが証拠開示されていなければ、村木厚子さんが日付が変わっていたことを発見できず、前田の謀略が証拠されて、村木さんは明らかに有罪となっていただろう。危機一髪である。
また以前書いたが、この事件が政治家と高級官僚が被告だという特殊な条件のゆえにかろうじて冤罪を防止できた。一般の書類を視ることに慣れていない人はこうはいかなかっただろう。村木さんだから発見できたといえる。
そして1月末に、國井検事と同公判担当の塚部貴子公判検事と公判部主任検事の三人が、佐賀元明特捜部副部長(当時)と大坪弘道特捜部長(当時)ふたりに前田の証拠改竄の不正を内部告発した。
さらにこの件は大阪高検上層部に伝わっていたはずなのに、前田の処分は一向に行われず、対応策もでてこない。そこで怒りが頂点に達した二人の検事周辺がマスコミにリークした。
朝日新聞が独自にFDを入手してシステムセキュリティ会社に検証依頼、結果改竄が裏付けられたとして、9月21日朝刊スクープとなった。
前田の強引な筋読みに沿った自白強要捜査は沢山指弾されているのでここでは控えるが、興味を引くのはこの勇気あるふたりの告発検事についてである。
國井検事は、キムタク風ロン毛で検事には珍しいタイプ。前田とはソリが合わなかったとか、過去さいたま地検熊谷支部で暴力団絡みの事件を担当、そのとき組長からの依頼を取り計らい銃刀法違反事件の捏造未遂で新聞沙汰になった事実がある、とも書かれている。
なお今回の事件でも、前田に劣らぬトンデモ検事の正体を晒している。
というのは、凛の会幹部河野克巳氏の取り調べに際して、「調書にサインしてくれれば逮捕しない」といいながら、河野氏が不承不承サインに応じると、逮捕した。
こういうデタラメ捜査をする体質が身についているようだ。従って前田の告発それ自体は評価しても同じ穴の狢として、正義の人にカウントすることはためらわれる。
塚部貴子公判検事については、独身美人検事で通っており、"潔癖症"と言われるほど凝り固まった性格で、仕事もバリバリこなすタイプとのこと。
この郵政不正事件でももともと特捜部だった。関係者の聴取をしていたのだが、前田と捜査方針を巡って対立し、公判部へ飛ばされた、と報じられている。
「週間新潮」はいかにも三流ゴシップ誌らしく、従ってふたりが人間関係のもつれで前田を"刺した"と断定しているが、少なからぬ背景はあったとしても、これだけ重大な不正をそれだけで説明するのは不適当だろう。
やはり、この事件捜査以前から、前田の捜査手法が同僚たちの感覚からは異常なものに写っていたことの帰結であって、その異常性を育んでいた特捜部への部内からの感覚的な異議申し立てだったということだろう。
また別のところからの情報では、不正を上層部に上げたにも拘わらずなんの沙汰もなかった事実、またそれに対して塚部貴子検事が再三追及し、沙汰がないなら不正を発表して検事を辞めるとまで腹を括って詰め寄っていたとのことだ。
塚部検事にとっては相手が悪かった。責任者の大坪前特捜部長こそ隠蔽体質と正義潰しの張本人だからだ。検察局6億円裏金内部告発の大阪高検三井環前公安部長を、TV収録に向かう直前に微罪逮捕、強制的口封じの指揮をとった本人なのだ。
佐賀前副部長と大坪前部長は、未だに「誤操作によるものとしか認識していなかった」と言い逃れをしているようだが、この問題を巡り公判担当関係者の間ではそうとうギクシャクした関係になっていたことがうかがえる。
誤操作などでないことは検察内部では早くから解っていたはずだ。
だからこそ、朝日のスクープ当日に、検察自身の検証もないままに即日の前田逮捕に踏み切れたのではないのか。
現在高検検事正まで事情聴取されて、必死に保身の自己弁明をしているが、こうした経緯はこの告発の三人の検事に訊けばすぐ判る筈である。ここにも彼らの隠蔽体質が如実に現れている。
なにしろ大阪地検特捜部は、裏金問題の内部告発をした三井環元検事を微罪強制逮捕し、組織的な口封じをした破廉恥な過去をもっている。
従って心配なのは、この腐敗組織のなかで、孤軍奮闘した塚部検事の不利益である。
彼女はすでに公判部へ前田の意向が反映したか、佐賀か大坪か、違法捜査と不正隠蔽体質が身についたラインから疎まれて公判部へ飛ばされた。
彼女が検事を志した気持ちがホームページ(http://www.moj.go.jp/keiji1/kanbou_kenji_02_02_05_index.html)に書かれているが、それからすれば公判部は決して満足できるところではないのではないか。三流企業じゃあるまい、エリート集団の検察局で不正を内部告発した正義のひとが不利益をこうむったままでいいはずがない。速めにまた特捜部へ戻すべきではないか。但し特捜部が解体されず残っていればの話だが。
なお今回もやりきれないなと思ったのは、官僚が内部で自浄作用がきかない折に、しかるべき捜査機関がなく、マスコミにリークするしかないという点である。
今回狙い通り、朝日の敏腕記者が担当して、最高検と密通できたから成功したが、これが無能な記者で検察の下僕のような記者だったら、最高検に恩を売って検察の意向に沿ってもみ消しただろう。
洩れてくるところでは、スクープの記者は元「下野新聞」というローカル紙にいて、妥協せぬ徹底取材で定評のある記者だったらしい。最近朝日に引き抜かれたかして朝日に移籍している。こういう良質な記者であったことが幸いした。
マスコミ頼みは諸刃の刃なのである。絶えずリスクが付きまとう。それを考えると、心ある官僚の内部告発を政治的に利用されないで調査できる弁護士が構成するような第三者機関が必要なように思う。
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