http://www.asyura2.com/10/senkyo96/msg/384.html
Tweet |
vol.1 はこちらをご覧ください。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1216
田原:村木厚子さんの裁判では、弘中(惇一郎)弁護士を中心とした弁護団の非常に適切な弁護があったと郷原さんは指摘しています。そこを聞きたい。適切な弁護って、例えばどういうことですか。
郷原:やっぱり、まず村木さんに「自白」をさせなかったことです。これはなかなか簡単なことじゃないんですよ。
田原:逮捕・勾留期間は164日間に及んでいます。
郷原:そこです。それは弁護団が適切に弁護して、村木さんにちゃんと、どういう供述をしたらどうなると、この裁判というのはこうなるんだ、ということをちゃんと理解させて、そして村木さんをちゃんと励まして、接見で。
そういう努力があったから村木さんが「自白」しなかったんです。嘘でも自白をしてしまうんですよ。それはもう今までにもいろんな冤罪事件がありました。
田原:足利事件がいい例で、足利事件の菅家(利和)さんは、幼稚園の女の子を殺したという罪で17年入っちゃうんだけど、捕まってその日のうちに自白させられちゃうんですね。
郷原:まあ、ああいう事件とまたちょっと違うんですけどね。というのは、ああいう事件っていうのは、そういう非常に性格的に弱い人などが心理的に追い込まれて自白をするわけです。でも、自白をしたからといって釈放されるわけでもなんでもないんですよ。自分にプラスになることは何一つないんですよ。菅家さん、17年もその身柄を拘束されたわけですから。
田原:なるほど。
郷原:しかし特捜検察の事件の場合は、ずっと「事実はない。無罪だ」って言い続けたら、間違いなく、村木さんもそうですけども、拘留は延びるわけですよ。簡単に事実を認めたら、場合によっては20日で出して貰えるかも知れない。
しかもそれだけじゃない。検察の捜査が、どんどん、どんどん、いろんなところに及んでいって、家族、知人、親類縁者もいろんな迷惑を受ける。そして場合によっては、企業の人であれば、会社がひょっとすると潰れるんじゃないかと思うところまで追い詰められる。
そういういろんな不利益が生じるぐらいだったら、嘘でもいいからもう認めてしまおう、ということで自白をする可能性があるんですよ。
田原:私はリクルート事件を相当調べてまして、江副(浩正)さんとも会いました。江副さんが逮捕された。で、「おまえの会社、潰してやるぞ。今の社長もパクる、専務もパクる、全部パクると。必ず潰してやる」ということで責められて、で、「土下座せよ」とかね、「壁に向かって立ってろ」とかね、もうほとんど拷問ですね。そういう中で吐いちゃうんですね。
郷原:だから、特捜事件のほうが、放っておけばたいてい嘘でも自白してしまうということになりかねないんですね。
田原:2年でも3年でも、一生でもおまえ留めとくぞ、と。
郷原:それをさせないようにした、そういう嘘の自白に追い込まれないようにした、今回の弘中弁護士を中心とする弁護団っていのは、非常によく弁護した。しかも検察のストーリーのおかしさを、一つ一つ客観的に潰していったわけですね。
それで完全に表に出てしまったわけです、検察がつくったストーリーはまったく事実と違うということを。裁判所もそのリアリティのなさ、これは嘘だという事実に向き合わざるを得なくなった。そういういろんなことが積み重なっているわけですね。
田原:なるほど。
■今回の事件で検察は反省をするのか
郷原:今回の事件では無罪判決がでました。でも、その前提となってる特捜検察の捜査のやり方、取り調べの仕方、調書の取り方、調書を取るまでの過程でメモは全然残さない、取っていても捨てる、そして主任検事の了承を得ないと調書を取らない、そういうやり方自体は、今まで特捜検察が、ずぅっとやってきた方法ですよ。
それがたまたま今回は他の要因でまったく嘘だということが分かってしまったから、裁判所に、こんなやり方をしてたら信用できない、「特に信用すべき状況がない」といって調書が採用されなかったんです。そこが違うだけなんです。
今までの特捜検察と、今回は違うことをやってきたわけではまったくない。同じなんです、まったく。今回の事件から本当に特捜検察全体が、検察全体が、反省しないといけないと思うんですよ。
田原:反省しないでしょ。
郷原:そこですね、問題は。
田原:別の話を聞きます。村木さんの無罪判決の直前に、鈴木宗男さんの最高裁棄却で収監が決まった。無罪判決が出る直前にこれをやったのは、検察かなんかの思惑があるんじゃないかと、こう言われてますが、このへんどうですか。
郷原:ここは非常に難しい問題ですね。なかなかこうだとは言い切れないですね。
田原:証拠がないですからね。
郷原:ええ。最高裁の判決、決定というのは、それに至るまでの審理は、まったく何が行われているか分からないんですよ。
田原:そうなんですか。
郷原:2年も3年もずっと放っておかれて、いきなり上告棄却っていうのが出る場合もあれば、弁論再開っていうことで見直される場合もある。それまでのプロセスって、まったく分からないんですよ。
ですから、1ヵ月前に決定が出ても今月出ても、理由はまったく分からないです。ですから、たまたま今回9月7日に上告棄却の決定が出たことが、何故なのかということを説明をする義務はないんですよ、最高裁の場合には。
そういう意味では、たまたま今日でした、たまたま一生懸命やってきたらこの時期になりましたと言われたら、絶対にそれはおかしいとは言えないんです。しかし、でも私もやはりどうしても疑問が残るのは、基本的には最高裁の審理がどうなっているか分からないし最高裁の側の勝手なんだけども、でもなぜ9月7日であって、例えば(民主党代表選翌日の)9月15日じゃないのか。
田原:そうなんですよ。
郷原:それはどうしても、みんな疑問に思いますよね。ここまで来たら、もうちょっと後でもいいんじゃないか。村木判決の後でも、民主党代表選の後でも、いいんじゃないかと。
田原:でも村木判決の後だと、これで検察の権威とか信用はまったく落ちるわけだから、その後に最高裁が棄却、収監っていっても、嘘だろうっていう話になりますね。
郷原:そういうことを気にしたんじゃないかと疑われるというのも、分かる気がします。
■メディアが騒げば事件のハードルが下がる
田原:僕は鈴木宗男さんの事件は、鈴木さんと何度も話をしているんですが、あれも問題ありです。
もともと鈴木さんが逮捕されるその原因は北方領土なんですよね、ムネオハウス、ディーゼルとか。だから佐藤優さんも逮捕されるんですよ。ところがまったく関係ないヤマリンで、僕が鈴木さんから聞いた範囲では、つまり、鈴木さんは貰ったことは認めてるんですね、彼の額は400万かな、これは違反にならないという認識です。
この問題のいちばんのポイントは、ヤマリンのほうは時効なんですよ。それで、鈴木さんのほうは時効じゃない。で、ヤマリンを脅かして脅かして脅かして、事件にしたんじゃないかと。鈴木さんはそう言ってるんですが、どうですか。
郷原:鈴木宗男さんの事件というのも、世の中が「鈴木宗男、けしからん」と言って、総バッシング状態になる中で、まさに世論に押される形で特捜検察が捜査を進めていった。
田原:『疑惑の総合商社』というんだからね。
郷原:いろいろ調べるんですけども、おそらく全部悉く潰れていくわけですよ。全然言われるような刑事事件じゃない。何か悪いっていうことが出てこない。
当初検察が考えてたような、本当に政治家をやるとすれば、国会議員をやるとしたらこのくらいの事件じゃないといけないだろうと思ってた、その想定されてたレベルの事件は悉くなくなってしまって出てこない。そこで、じゃ、残念ながらうまくいきませんでした、止めましたっていうわけにはいかないわけですよ。そうしたら、これまた検察が金丸事件でペンキをぶつけられたように、メチャメチャに・・・。
田原:村木さん以上になっちゃうと。
郷原:だから何とかして着地点を見つけなくてはいけない。必ずそういうときはハードルが下がるわけです。普通であればこれくらいのハードルを越えないと、特捜検察としては自信を持って事件に着手できない。そういう本当に苦しい状況に追い込まれると、最後はハードルが下がるんですよ。
田原:どんどん下げてくるわけね。
郷原:ハードルが下がった状態で、普通なら贈収賄ということで、収賄ということで立件したりはしないような表のお金、しかも贈賄は時効、という事件に無理無理着手したというようなハードルの下げ方だったんじゃないか。これは西松建設事件とも似てるわけですね。
田原:似てますね。
郷原:これも出口を求めてさ迷った末に、普通じゃやらないようなレベルのものをやった。
田原:今、鈴木さんの問題が出たんで聞きたい。鈴木さんを逮捕して潰すために佐藤さんが逮捕される。佐藤さんは学生たちをイスラエルへ連れて行ったと。その金を外務省の上のほうの了解を得ないで勝手にやったっていうんで逮捕された。
ところが佐藤さんは、もちろん課長、部長、局長、事務次官まで全部了解を得ている。そしたら、そのあるはずの書類がなくなったと、外務省の上のほうが言ったと。それで、佐藤さんだけが逮捕される。なんなの、これは。
郷原:そうしないと事件にならなかったということでしょうね。
田原:外務省の課長から上がね、全部了解しておいて、「知りませんでした」って言うんでしょ。
郷原:そういう形でストーリーが描かれたということでしょうね。
田原:検察っていうのは正義の、つまり社会正義っていうのを表現しているんだと僕ら思ってるんですが、全然違うんですね。
郷原:そもそも今の世の中に、終戦後のドサクサとか日本の社会がもっともっと混乱していた時代のように、そういう社会の中で巨悪とか巨利を貪る大悪人の商人とか、そういう水戸黄門のドラマの越後屋のストーリーに出てくるような典型的な犯罪者っていうのが、そういるかいないか分からないし、かなり少なくなっていると思います。
いるとしても、そういうとんでもない悪人を見つけ出す能力が検察にあるのかっていうことなんですよ。そうなると、そこら辺に当たり前に行われている社会、経済、政治の世界の中から、何か世の中の風ですね、こいつが悪いんじゃないかってマスコミが叩く、あるいは一部のマスコミが「こいつは悪党にできるぞ」と言って情報を持ち込む。
そういったものに乗って、事件を何とかしてストーリーを組み立てる。それがうまくいくと、あたかもとんでもない犯罪者ストーリーのように仕立て上げられてしまう。
結局は、この何十年か特捜検察がやってきた表の社会における捕物帖っていうのは、そういものだったんじゃないかっていう気がするんですね。
■証言を翻そうとした証人
田原:さっき仰った小沢さんの事件で聞きたいんですが、西松建設は結局何も出てこなかった。それで今度は世田谷の深沢の土地の売買問題ですね、あの時に小沢さんは個人が持っている4億円、これを陸山会に貸す形で土地を買って、で、後に銀行で借りて返すんですが、この4億円はなんだっていうことに検察は目を向ける。
で、怪しいと。そこで、実は水谷建設の元会長が大久保(隆規)さんと石川(知裕)さんに5000万円ずつを渡したと。こういう金が入っているに違いないと思ってね。なんでこんなに安直に思っちゃったんですかね。
郷原:それしかなかったんじゃないですか。
田原:実は私の番組に郷原さんと宗像(紀夫弁護士・元東京地検特捜部長)さんに来ていただいた。僕なんかよく知らなかったんだけど、実は水谷建設の会長っていうのは嘘つきなんですよと、そんなことを郷原さんが仰った。
郷原:宗像さんがいちばんよく知っているはずです。
田原:宗像さんが主任弁護人をやってる福島県の県知事の佐藤栄佐久さんの事件で、これも佐藤栄佐久さんの弟さんの土地を水谷建設が通常の価格よりも高く買った、これが賄賂になった、ということで逮捕された。そしたら何とそれを証言していたはずの水谷建設の元会長が、あとから否定したんですか。
郷原:そういう彼の供述に基づいて、佐藤栄佐久さんは一審で有罪判決を受けたわけです。
田原:収賄になるわけですね。
郷原:ええ、収賄で。額は削られましたけど、一審で有罪判決を受けた。その後になって水谷建設の元会長が、そういう贈賄供述はデタラメだった、嘘をついたんだと、自分が少しでも早く出たい、場合によっては執行猶予にでもしてもらいたいと思って嘘をついただということを告白をしてきたんだと。
田原:どこで言ったんですか、それを。
郷原:宗像弁護士のところに言ってきたそうです。
田原:宗像さんに言ってきた。
郷原:言ってきたというので、それに基づいて弁護団が控訴審でもう一回水谷元会長を証人に呼んでくれという請求をしたんだけども、裁判所が認めなかったらしいですよ。
田原:呼ばなかったのか。
郷原:そもそも宗像弁護士自身が彼に直接会ったかどうかも分かりませんけどね。そういう申し出をしてきたっていうことは公判の中で出てるらしいんですよ。でも本当にそれをきちんと確かめて、本当に水谷元会長の自分は嘘ついたということを供述として固めたかどうか、そこはまで分かりません。
田原:で、あの時に番組の中で郷原さんが「水谷建設の会長っていうのは嘘をつく癖がある。それをいちばんよく知っているのは宗像さん、あなたでしょう」って言ったら、宗像さん絶句しましたね。で、「あれはあれ、これはこれ」だと。
郷原:「あれは検察が作り上げた事件だけども、これはこれ、あれはあれなんだ」と。「この事件の水谷証言は本当なんだ」「これは検察が固めているんだ」というふうに言いましたよね。
田原:大久保さんや石川さんたちを検察は逮捕した。で、拘留した。だけど結局は出なくて、何と小沢さんは不起訴になっちゃった。不起訴になったということは、少なくともこの事件で小沢さんはシロなんですね。
郷原:検察はクロという認定はできなかったということです。
田原:僕の想像では、石川さんは国会議員だけどまだ若いし、検察が逮捕すれば落とせると思ったんじゃないかな。
郷原:そう思ったんでしょうね。ですから、今回の村木事件の村木さんと同じですよ。それを踏み台にして、その次にという・・・。
田原:そう。村木さんも女性だし、キャリアだから光の照る道しか歩いてないから、こんなの落とすの訳ないと思ったんでしょうね。
郷原:そうでしょうね。
田原:石川さんも落ちなかった。なんで落ちなかったんですかね。僕も落ちると思ってた。
郷原:これもやはり、昔ながらの検察OB、ヤメ検の弁護士だけが付いていたらどうなったか分からないですね。ここにはやはり石川さんを、絶対に嘘は認めてはいかん、絶対真実を貫くべきだということを、強く毎日毎日励まし続けた弁護士が付いていた、それが大きかったんでしょうね
田原:なるほど。それは村木さんの場合も。
郷原:村木さんの場合は、弘中さんがずっと支え続けたんですね、絶対頑張り通すべきだということを。
以降 vol.3 へ。(近日公開予定)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1269
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK96掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。