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中国漁船衝突事件を契機に、沖縄・尖閣諸島沖が緊迫の度を増している。中国が尖閣諸島や東シナ海のガス田開発地域周辺に、漁業監視船2隻のほか海洋調査船10隻以上を集結させているのだ。これに対して、日本側は活動中止を求めると同時に、海上保安庁が巡視船6隻を派遣して領海内に入らないよう警戒。一触即発のにらみ合いが続いている。こうした中、「弱腰外交」との批判が渦巻く菅直人首相(63)は場当たり的に、10月4、5両日にブリュッセルでのアジア欧州会議(ASEM)首脳会議に出席。現地で日中首脳会談開催を模索するが、先は見通せていない。
「中国の漁業監視船2隻が24日夕から尖閣周辺を徘徊している」
仙谷由人官房長官は27日の記者会見で、7日の漁船衝突事件後、尖閣諸島付近で中国監視船が“出没”していることを明らかにした。
監視船は「漁政201」と「漁政203」。仙谷氏や海上保安庁によると、事件後の10日未明に尖閣周辺海域で確認され、一時は姿を消したが、24日夕から再び現れ、27日午前の時点でも、尖閣周辺の日本領海(12カイリ、約22キロ)の外側に隣接する「接続水域」(領海の外側約22キロ)で活動している。
この動きに対し、海上保安庁は巡視船6隻を派遣して領海内への侵入を警戒、政府も首相官邸の情報収集態勢を強化するなど、ピリピリムードが一気に高まった。防衛省も後方で、P3C哨戒機による監視を強めているが、ある幹部は「不測の事態もあり得る」と漏らす。
中国の監視船派遣は、「中国人船長逮捕」という事態を受け、尖閣周辺の自国の漁船保護というのが表向きの理由だ。中国漁船が再び、尖閣諸島沖で海保の巡視船に排除される事態になれば、監視船が対抗措置をとる可能性がある。中国各紙の電子版では「日本が船長逮捕の謝罪と賠償を拒否する以上、当然だ」とする見方が多い。
ただ、監視船が日本領海に侵入した場合でも、海保の対抗措置はスピーカーで退去を呼びかける程度しかないのが現実。国連海洋法条約では、明白な中国政府の船である漁業監視船は在外公館内と同様に国内法令の適用外で、「漁船と違い、手も足もでない」という。
それだけに、監視船派遣の狙いについて、「実際は尖閣諸島の領有権を内外に行動で示すのが狙い」(政府関係者)との見方が強い。
さらに、監視船2隻以外にも、尖閣諸島や東シナ海のガス田開発地域周辺に、中国の海洋調査船10隻以上が集結していることも判明した。
これは海洋権益を奪う際に中国が行なってきた常とう手段だ。漁船出没の次に、海洋調査船が登場、最後は軍艦が姿を現す−。こうして圧力をじわじわと高めて領土や海洋権益を事実上、既成事実化していく手法は中国のお家芸なのだ。
実際、フィリピンなど周辺国と領有権を争う南沙(スプラトリー)諸島の海域で1990年代、中国漁船が急増。フィリピン側による漁船の拿捕が相次いだが、これに対抗して中国は調査船や海軍艦艇を派遣し、実効支配を進めた経緯がある。2009年には軍艦を改造した監視船を南沙諸島に投入したこともある。
■日増しに高まる弱腰外交批判
こうした強硬姿勢を崩さない中国に対し、菅首相は当初、欠席予定だったアジア欧州会議(ASEM)首脳会議に出席する方針を固めた。この会議には中国の温家宝首相も出席する予定で、現地での日中首脳会談開催による打開を模索する。
首相の予定変更は、党内外から吹き荒れる「弱腰外交」批判を払拭するためだが、尖閣諸島の緊張関係が続く中、政府高官は27日、「日中ハイレベルの協議ができる状況ではない」と述べ、現時点では実現は難しいとの見方を示した。
別の政府関係者は、「中国側は船長逮捕の謝罪や賠償を求めているし、フジタと現地法人の日本人社員4人の拘束、さらにレアアースの対日輸出禁止など何枚も外交カードを持っている」としたうえで、こう解説する。
「日本側は中国人船長の釈放カードを切っただけで、中国からすれば、まだまだ譲歩を引き出せるとの思惑がある。そう簡単にハイレベル協議で関係修復に進むとは思えない。長期化は避けられない」
国会日程を変更してまで首脳会談に出かける以上、尖閣諸島事件解決に向けた成果がなければ、「間抜け」批判が吹き荒れるのは必至。野党の国対幹部からも「現地で首脳会談を申し込んだが、断られたではみっともない」とクギを刺されている。
一方で、「弱腰外交」批判も日増しに高まる。党外はもちろん、“身内”からも公然と厳しい声が相次いでいるのだ。
長島昭久前防衛政務官ら有志40人が27日、首相官邸を訪れ、仙谷氏に建白書を提出。建白書は今回の事態を「日清戦争後の三国干渉に匹敵する国難で痛恨の極みだ」としたうえで、「検察が独断で判断したと信じている国民はほとんどおらず、『検察の判断』と繰り返すことは責任転嫁との批判は免れない」と指摘した。
また、松原仁衆院議員ら有志議員約70人も27日、那覇地検が日中関係への考慮を理由に船長を釈放したことについて、「検察の権限を大きく逸脱した極めて遺憾な判断」との声明を発表。同日夕に国会内で開かれた民主党の法務・国土交通・外務の合同部会でも「日中関係への考慮」を理由に船長が釈放された事態に異論が続出し、政府側は「検察の判断」を繰り返すだけにとどまった。
脱小沢路線で支持率が再び上昇した菅首相だが、早くも崖っぷちだ。
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20100928/plt1009281603002-n1.htm
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