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尖閣列島問題で、民主党の松原仁衆院議員たちが「自衛隊を尖閣に常駐を」などと言うなど、威勢のいい事を言う御仁が少なくない。こんなこと実現できるのか一寸考えたら分かるはずである。現在の状況なら、自衛隊が上陸の動きを見せたら必ず中国海軍も出動するだろう。中国海軍が阻止行動を見せたら尻尾を巻いて逃げるのだろうか、それとも一戦交えてでも強行上陸をするのだろうか。
中国海軍が積極的な阻止行動を取らずに首尾よく上陸を果たせたとしても、その後に中国は漁船船長逮捕事件で見せた経済はじめ多くの分野で報復行動に出ることを覚悟しなければならない。経済分野だけでも広い分野で報復行動に出たら、どうなるのだろう。中国は日本にとって米国を抜いて最大の貿易相手国である。日中の経済関係が断絶状態になったら中国の一定のダメージはあるだろうが、日本のダメージは破滅的になる恐れがある。
対中強固行動の結果、中国の経済的な報復を招き、日本中倒産企業が続出し、失業者が街に溢れる事態も想定してそのような経済的苦難を受け入れる覚悟を国民に求めてから「中国に断固とした態度を取れ」と言わなければならない。スローガン的に言えば「欲しがりません、勝つまでは」である。
日米の絆を強くして、とか米国の支援を当てにすることはできない。前原外務大臣はクリントン国務長官が「尖閣列島は日米安保が適用される」と『明言』したと言っているが、前原−クリントン会談の後のクローリー国務次官補の記者会見における説明ではそのよう説明していない。「クリントン長官の反応は、地域の安定にとって日中の関係は非常に重要なので、対話を奨励し、この問題が早期に解決されることを望むというものだった。」というもので、暗に早く船長を釈放せよと迫っているようでもある。確かにクローリー次官補は質問に答える形で、クリントンの言葉ではなくブリーフィング資料に言及して「我々は尖閣列島は日本が実効支配していると信じているので、日米安保条約でカバーされている。」と述べているが、続けて「我々は尖閣列島の主権がどちらか一方のものであるとの立場をとっていないこともまた強調する。」と述べて、尖閣列島の主権問題については『中立』の立場を明確にしている。いくら前原大臣が「尖閣列島に領土問題は存在しない」といっても米国は明確に否定しているのである。
『明言』についても前原大臣が言っているだけで疑問である。(偽メール事件はじめこの人の言うことは全く信用できない)ロイターが前原大臣の言葉として流している英文ニュースの『明言』の部分は『acknowledge』であり、『明言』比べて意味が弱く、政治的な配慮が加わらなければこのような単語を使うことはないだろう。穿った見方をすると、日本大使館などが公式な翻訳テキストとして流して日本向けと他国向けを使い分けている可能性がある。実際には前原大臣が「・・・日米安保が適用される」と日本側の見解を述べて反応として“I see.”程度は言ったのかも知れない。もし、クリントンの言葉で述べたのであればクローリー次官補は紹介するはずである。
軍事的にも、経済的にも立場が弱いから中国の言うことに従えと言っているのではない。中国側や世界中から認められる原理原則に沿って行動することが日本の利益を守る道である。歴史的に見て尖閣列島は日本の領土であるが、沖縄返還に伴って米国の施政権下から日本に返還され日本が実効支配を続けている。米国は日本の実効支配は認めるが主権がどこにあるかについては『中立』である。中国もここに主権を主張し、日中国交回復に際して領有権問題については『棚上げ』することで文書化されていないかもしれないが共通理解になって来た。実務的には日本が実効支配をし、中国は領有権の主張を保留して日本の実効支配を尊重してきた。海上保安庁は台湾や香港の領海侵犯には厳しく対処してきたが、中国漁船の領海侵犯には追跡して領海外に追い返すだけという対処をしてきた。7人の中国人活動家の尖閣島上陸に際しても、強制送還して日本の法律による処罰による主権問題に発展するのを避けた。
今回は閣議で『領土問題は存在しない』と決定し、船長を逮捕して、拘置期限を延長して起訴手続きに入る動きを見せ、尖閣列島の中国漁船員の行為について主権を行使する動きを見せたのである。これは新しい動きであり、それまでの中国側の主権主張にも配慮した立場から『逮捕』、『日本の法律による処罰』という『領土問題は存在しない』と言う立場、つまり中国の立場が無視される状態への変更であり、力で中国の主権主張を封じ込める動きを見せたのである。
第二次大戦後、先進国や大国間で力で領土問題を解決した例はない。軍事占領という方法でなくても力で現状の変更をせまる方法は成功しない。力で解決する方法を選択したら、相手も同じ方法でくることを覚悟しなければならない。現に、尖閣を力による解決を試みたとたん、油田開発を強行し、いままでの交渉の経緯を無にしてしまう恐れが生じている。
日中国交回復の過程を通じて、『日本の実効支配』、『中国の領有権の主張』はいわば暗黙の部分も含めて両国の了解事項であって、この了解により日本が実効支配を続けてこられたのである。日本が歴史的に正しいと主張すれば自動的に実効支配できるものではないし、軍事力の優越で実効支配を続けてこれたわけでもない。暗黙の部分も含めて了解事項を誠実に守り、相手方にもそれを要求することが日本の国益を守る一番の方法である。
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