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菅首相の再選 『日々通信 いまを生きる』 第303号 2010年9月24日 発行者 伊豆利彦
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>>日々通信 いまを生きる 第303号 2010年9月24日<<
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菅首相の再選
民主党の代表選挙は菅氏が再選されて決着した。わたしは小沢氏の勝利を期待していくらか過熱気味だったので、菅氏に決まったときはちょっと拍子抜けを感じた。政党代表選挙でこんな思いをしたのは初めてのことだ。これまでわたしは、自民や民主はどちらが勝っても、誰が代表になっても同じことだと思って、ほとんど無関心だった。それが今度は違った。小沢氏なら、戦後65年の自民支配を覆し、新しい時代を開くことができるのではないかという思ったのだが、虚しい期待に終わった。
菅氏の勝利は、菅氏に対する積極的支持によるよりは、あまり短期でコロコロと総理が変わるのはよくないという消極的な支持によるという。それよりも小沢のような金まみれの汚れた人物が総理になるべきでないという圧倒的な国民「世論」の結果だと思われる。
小沢という政治家は仏頂面の暗い人相で「悪」のイメージが焼きついている。「政治と金」の問題についても、一年半にわたり三度も強制捜査を受けたが起訴するに足る証拠は見つからなかったことを強調するばかりで、自分の言葉で無罪を訴えることはしなかった。
小沢氏と同様の疑惑を掛けられた日本の政治家は多数あるが、小沢氏のように強制捜査を受けることはなかった。小沢氏はそれを身の潔白の証拠とするが、世間一般は捜査を受けるだけで犯罪者あつかいする。たとえ起訴されても有罪の判決が出なければ犯罪者あつかいしてはならないという原則は日本では無視される。自民党の谷垣総裁は、小沢氏を有罪ではないにしても限りなく黒に近いグレーだと主張した。世間一般もこれと同様なのだろう。
小沢氏は企業から多額の政治献金を集めた。これまで自民党の有力政治家の誰もがが行ってきた手法で、ここに現在の政治の腐敗、政官財癒着の根源がある。この廃止は緊急の課題だが、現在は合法とされている。このため、検察の小沢氏追及は世論の支持を得たが有罪にできず、秘書の記帳の違法を取り上げて政治資金規制法違反で起訴するにとどまった。小沢氏の嫌疑は小沢氏が帳簿の不正記入を指示したか否かだけなのだ。
これまで一般に認められてきた手法を小沢氏に限って認めないというのは法の公平に反することになる。さらに小沢氏は田中氏や金丸氏などが有罪となって政界を追われた経過を熟知していて、帳簿を徹底的にクリアにしていたため、何度強制捜査を受けても違反を発見されることはなかった。つまり、現行法上小沢氏はまったく無罪なのだ。
しかし、法律上は無罪でも、嫌疑をかけられるだけで政治的には打撃を受け、政治生命を奪われることはある。小沢氏を狙い撃ちし、政治生命を奪おうとする異常なまでに執拗な検察の攻撃の理由は何か。そして、マスコミはなぜこの理不尽な検察を問題にしなかったのか。むしろ、マスコミは検察のリークを大々的に報道して、小沢氏は金まみれの金権政治家であり、悪の権化だとする固定観念、反小沢の世論を作り上げた。
鳩山氏には別の「金」の問題があり、普天間問題での失敗ということもあって、鳩山・小沢コンビの鳩山内閣の支持率は急降下し、到底、参議院選挙をたたかうことはできなかった。鳩山・小沢辞任の後、党代表となり首相となって参議院選挙をたたかった菅氏は、反鳩山・小沢をただ一つの金看板にして、普天間問題はアメリカとの合意を尊重し、辺野古移転を進めると述べて、戦後65年、自民党以来の対米従属の継続を明らかにした。この反小沢宣言が奏功して、世論調査の支持率が急上昇し、菅氏を有頂天にした。この時の菅氏の緩みっぱなしの表情は醜いとさえ思われた。
支持率上昇に有頂天の菅氏は、政権の安定を求めて官僚との癒着を深め、歴代自民党内閣も慎重だった法人税減税と消費税増税を目指すと発言した。普天間問題といい、消費税増税といい、明らかに民主党の基本方針、政権を獲得したときのマニフェストに背反するものだった。このような逸脱の結果は参議院選挙の思いもかけぬ惨敗だった。菅氏はこの責任を負うて辞任すべきだったが、党内には菅氏の責任を追及するエネルギーも乏しく、あまり頻繁に総理がかわることへの反対もあって、九月の全国代表者会議を待つことになった。
参議院選挙に大敗した菅首相はひどく弱気になって小沢前幹事長の助けを求めるような素振りもあったが、マスコミが作り上げた反小沢の世論に支えられ、ひたすら「政治と金」を追及し、反小沢・鳩山一本槍でたたかった。菅内閣が成立してまだ三カ月しか経っていない。コロコロ首相が変わるべきではないという意見も意外に支持されて、世論調査では圧倒的な支持率となった。朝日などの大新聞も「政治と金」の問題を強調して、今にも起訴されるかもしれない小沢が総理になるべきでないと小沢反対の論陣を張った。世論調査でもこの問題を繰り返し、露骨な誘導を行った。
もはや、普天間問題も消費税問題も忘れられ、小沢支持の議員は誰々、菅支持は誰々と数え上げ、政策はそっちのけで勝敗の予想に明け暮れるありさまだった。キョロキョロ周囲を見回して、「世論」の動向に迎合して去就をきめる議員も多かった。しかし、マスコミや世論の逆風にもかかわらず、小沢支持議員が多数だったことは意外だった。新聞や地上波テレビでは露骨な反小沢コールが氾濫したが、ネット上では圧倒的に小沢支持が強かった。
小沢氏は口が重く、自己弁明もしなければ、自己の政策をアピールすることもなく、黙々と裏方の仕事に励み、着々と議員拡大の努力をつづけてきた。それが仏頂面の人相とあいまって、暗く不気味な印象を与え、闇の実力者などと呼ばれもした。しかし、いよいよ候補者となって菅氏と同じ演壇に立って演説することになると、口の重さは迫力ある弁論となり、実行力の証しとなって、マスコミや「世論」に媚びる口先男の菅氏の軽薄なおしゃべりを圧倒した。
小沢氏には、若手のホープとして閣僚や幹事長となり、離党後は脱官僚、自民打倒のために、あらゆる苦難に耐え、一筋にたたかって来た経歴の重みがあり、聴衆を魅する迫力があった。これこそ自民党を倒して政見奪取を実現した民主党の真のリーダーだと思われた。マスメディアはこの小沢氏を伝えず、依然として金と数の力だけの古いタイプの金権政治家だという暗いイメージに固執した。しかし、大阪や札幌の立会演説会では割れるような拍手で迎えられ、期せずしてオザワ、オザワの小沢コールが沸き起こった。演説中もしばしば拍手がおこり、熱気に沸いた。マスメディアはこれを小沢によって動員されたサクラに過ぎないと評したが、しかし、この熱気は本物だと思われた。
国民のくらしが第一で、そのためには、官僚的な財政の辻褄あわせでなく、危機の経済を救うための大胆な財政投入が必要だと小沢氏は主張した。アメリカに依存していればいい時代は過ぎた。新しい時代は中国を中心とするアジアの時代で、新しい経済戦略が必要だと主張し、官僚依存でキョロキョロとマスコミの顔色をうかがい、あれこれ主張を変える菅首相のヘラヘラ演説を圧倒した。
小沢氏はまた辺野古問題についても、現地住民の声を尊重し、この要求をバックに改めて米国と話し合いを進めたいと述べた。それはもとより困難ではあるが、困難を避けるばかりならいつまでもアメリカの言いなりになるしかないのだ。県民や国民を犠牲にしてアメリカの言いなりになってきたのが、これまでの自民党=官僚体制の政治だった。政治主導とはお座なりの口先政治に過ぎないのではない。それは日本の未来をかけた生死のたたかいなのだ。これが生涯を反自民、反官僚、対米自立志向の政治にかけてきた政治家の命懸けの主張だった。
このような小沢政治は、検察や官僚によって流される情報をそれぞれの記者クラブを通じて受け取り、何の苦労もなしにほとんど各社共通の記事を書き、もっともらしいが当たり障りのない論説を書いて高給をもらう大新聞社のサラリーマン記者たちにとっては脅威であるにちがいなかった。今のマスコミには志がない。マスコミ各社は大企業になり、営業第一になって、政官財の連合体と密接に結びついている。現体制に依存して、経営の安定を維持している。
この本質的保守性は進歩的言論期間を標榜する新聞社の場合も同様で、検察のリークをありがたがり、嫌疑をかけられ、強制捜査を受けたり、起訴されたりした政治家は犯罪者として排除する。検察や官僚、権力政党を口先で批判することはあっても、これと会社の存続をかけてたたかうということは決してないのだ。
小沢氏ははたして本当に政官財の結合体とたたかう革命的政治家なのか。いま、日本に必要なのはそのような政治家であり、言論機関なのだが、小沢氏にはこれまで既成の政党政治家にはないものが感じられた。小沢氏が検察やマスメディアから執拗な攻撃を受けたのはそのためだ。代表選挙によってわたしは眼を見開かれ、これまでにない熱心さで選挙の行方を見守った。結果は無残な敗北で、結果が出てみれば、なるほどこれが当然の結果なのだと思われた。これが日本の現実なのだと思われた。
菅氏を勝利させた民主党員、マスコミ各社、メディアで毒にも薬にもならぬおしゃべりをする評論家諸氏は、この結果にきちんと責任があることを自覚する必要がある。彼らの言説は結局身過ぎ世すぎで、その時々限りの発言に過ぎず、自己の発言に責任を負おうとはしなかった。このメディアの力が国民を支配し、それが日本を動かしたのだ。戦争中のことを考えても、世論調査をすれば、天皇や軍部に対する支持率はほとんど100%に近かったと思う。この「世論」を背景に検挙投獄され、抹殺された。この現実は明治以来変わっていないと思う。
日本が民主主義だというのは錯覚であり、誤解である。日本を支配するアメリカと政官財の結合、これと警察権力、マスメディアはいかにむすびついているかを探り、日本の権力構造を明らかにすることが必要だ。いま改めて夏目漱石の「私の個人主義」について考え、その生涯のたたかいを明らかにしたい。
今年は大変な猛暑がつづいたが、ようやく秋らしくなるようだ。わたしも去年にくらべればいくらか体調もいいようだ。考えることも、書くことも歯がゆいほどたどたどしいが、八十何年かの生涯の経験を総括する仕事を続けたい。みなさんからのはげましの言葉がわたしを力づけてくれる。これからもよろしくお願いいたします。
掲示板から
10956.Re: 菅改造内閣支持64% 共同通信世論調査
名前:伊豆利彦 日付:09月19日(日) 09時50分
菅首相は前原氏を外相に任命した。前原氏は親米的で軍事的傾向が強く、対中強硬派である。普天間問題があり、釣魚島問題がある。中国では反日感情が高揚し、沖縄県民の新基地建設に反対する動きは県知事選挙を目指して高揚している。この時に日本国民の「世論」は菅内閣支持を高めた。日本は一体どこへ行こうとするのか。
10897.Re: 民主党代表選 「普天間問題」が争点に急浮上
名前:伊豆利彦 日付:08月21日(土) 17時02分
小沢といえば悪党のイメージが焼きついていて、政治とカネの問題ばかりが論じられ、小沢が何を主張しているかについては語られることがない。いまは派閥の論理で数合わせに熱中し、誰が勝つかの予想に我を忘れる時ではない。
10939.Re: 統一地方選 5市議選あす告示
名前:伊豆利彦 日付:09月11日(土) 16時29分
日米同盟というが、県民、日本側の意向はは無視され、ひたすらアメリカの利益が押しつけられるだけではないか。戦後65年、安保改定50年、日本の政権が交代したいま、この日米関係を変えなければ、いつまでこの理不尽の関係がつづくことになるか分らない。民主党政府はこのことを自覚して、日米関係の「深化」を実現してほしい。市議選、県知事選で示される県民の意志を無視することは許されない。
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-09-11_10090/
10941.Re: 統一地方選 5市議選あす投開票
名前:伊豆利彦転載 日付:09月11日(土) 17時04分
県民はもう5年前の過ちを繰り返さないと思う。振興策が見せびらかされるが、基地が集中している沖縄は日本で一番貧しい県であり続けている。アメリカが撤退したフィリピンのスウビック基地は経済特区として発展している。苦難の歴史に対する補償は何よりもまずまともにアメリカと交渉して、普天間基地の移転ではなく撤退を実現し、その上で本格的な振興策を実行することだ。中国や東南アジアに突き出た位置は沖縄に大きな繁栄をもたらすに違いない。
10945.新しい明日への期待
名前:伊豆利彦 日付:09月13日(月) 08時20分
民主党が民主主義の政党なら、現地住民の意志を無視することはできない。米軍基地の受け入れに反対する他県の住民は沖縄県民の意志を無視することは許されない。沖縄の統一地方選が新しい自立した民主日本の未来を開くものになることをことを願う。
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