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「何のための領海警備だ」―。尖閣諸島周辺の日本の領海内で海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突した事件で、那覇地検が25日、公務執行妨害の疑いで逮捕されていた船長を処分保留で釈放したことを受け、同諸島を行政区域に含む石垣市では漁業者を中心に不安と反発が広がっている。市は国へ警備態勢の強化などを要請し、市議会も近く抗議決議案を可決する見通し。船長を送検した海保関係者は釈放を粛々と受け止めるが、国境を守る現場の保安官の歯がゆさを指摘する声も出た。(八重山支局・又吉嘉例、社会部・平島夏実)
■市長が「遺憾」
「よくない前例にならないよう、法治、主権国家として毅然(きぜん)とした態度で臨んでいただきたい」。中山義隆市長は同日、市庁舎で会見し、国に対する遺憾の意を表明した。「私たちがこの地域に住んでいることで領土や領海が守られ、排他的経済水域を通って本土へ燃料や食料が運ばれている。(国境地域が)国民の生活を守っている、という意識を持ってほしい」と訴えた。
船長釈放に際し、石垣空港周辺で抗議行動を展開した仲間均市議は「既成事実を与えた」と批判。28日開会の市議会本会議で、釈放に対する国への抗議決議案を提出するとし、「市議選もあって本会議が開かれなかったが、与党多数もあり、可決される」とした。
■あきれる漁師
漁業者にも国への不信感が渦巻く。マグロ漁船の乗員男性(26)は「最初から逮捕しなければ良かったという話だ」とあきれる。領海内で台湾や中国の漁船を見る事も多いとし、「外国船のはえ縄の道具が潮の流れでこちらにからまるのはどの漁師も経験していて、漁の支障になっている。政府はウミンチュの事を考えているのか」と顔をしかめた。
別の漁船の乗員男性(49)は「こんな当たり前に中国の主張が通ったら、どこでも漁ができなくなる」と懸念。「今後、外国船が領海内で、わが物顔で漁をし始めたらどうするのか。国は安心して操業できる漁場をはっきりさせてもらわないと困る」と求めた。
■「やる気そぐ」
一方、海保関係者は「(処分保留での釈放は)検察が取るパターンの一つにすぎず、想定内といえば想定内」と語り、「職員に動揺はなかった」と主張する。
ただ、石垣海上保安部に所属していた元保安官の男性(68)は「現場の保安官は『尖閣は日本の領土。自分たちが守らなくて誰が守る』という使命感を持って命を懸けている。悔しい思いをしているはずだし、領海警備の必要性について疑問を抱かせ、現場のやる気をそぐ判断だ」と憤った。
[ことば]
中国漁船衝突事件 尖閣諸島近くの日本領海内で7日、中国漁船が海上保安庁の巡視船と接触、その後、別の巡視船と衝突して逃走した。海上保安庁は公務執行妨害の疑いで漁船の中国人船長を逮捕。中国側は丹羽宇一郎駐中国大使を休日の未明に呼び出すなど繰り返し船長の即時釈放を要求、対抗措置として日中間の閣僚級以上の交流停止などを表明した。
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-09-26_10554/
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